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Worlds23 LOL日本代表DFMとその周辺についての諸々

ということで10/11に初戦を迎えるLOLの世界大会Worlds。まあ今年のDFMは色々とありましたが、その騒動の諸々については他の皆さまに任せるとして、ここでは例年通りあくまでゲームの周辺について、Worldsプレイインから参加する日本代表を取り巻く事情、当たる相手、本戦出場の可能性などを見ていきたい。敬称略。あと上の写真、どう見てもapaMENコーチにしか見えへんのやけど撮ってる時間なかったんやろな。

形式

かつては「プレイイン地域」「マイナーリージョン」と呼ばれる地域が色々あり参加がありましたが、ここ数年で統廃合が進み、プレイインに参加するマイナー地域は「日本」、「ラテンアメリカ」、「ブラジル」のたった3つに。まさかロシアもトルコも落ちて日本が残るなんてSeason7の時期から考えるといまだに信じられませんが。なんせ2018で一つ勝ち上がるまで、日本は「世界最下位地域」という世界の共通認識だったわけで。

今回日本が参加するプレイイン(本戦の前)、具体的な形式としましては、「アジア環太平洋(実質台湾)リーグ第一シード」、「アジア環太平洋リーグ第二シード」「ベトナムリーグ第一シード」、そして今年はWorlds開催前日に行われる新しい枠「EU第四シード」と「NA第四シード」の直接勝ったほう、とい4チームがPool1、そして「日本リーグ第一シード」、「ブラジルリーグ第一シード」、「ラテンアメリカリーグ第一シード」、そして「ベトナムリーグ第二シード」がPool2として、Pool1とPool2が当たるトーナメントを行い。8チームのうち2チームが本戦出場となるわけです。

このレギュレーション、厳しくなったようにみえてマイナー地域の日本やブラジルにとっては「あまりかわらない」部類と言ってもいいでしょう。去年までは「12チームのうち4チーム」という状況で、数字的には脈ありに見えますが、結局実力が7倍くらい差のある中国韓国の第四シードが混ざってくるため、去年までも実際には「中韓は確定、10チームのうち2枠を実質NAEUのどちらからもぎ取る必要がある」といった状況だったわけで。そう考えると今回もほぼ変わりません。「順当に行けば欧州/米国の第四シードとベトナム第一シードが抜けるはずの2枠」をプレイイン地域がもぎ取れるか、という争いと見ていいでしょう。

組み合わせも出ていて上の通り。形式は上のトーナメントではダブルイリミネーションのBO5、そして決定戦ではBO5となっている。例えばブランケットAを例にとると、LLLの1回戦はGAM戦になる。これで勝った方が右に進んでRound2、負けると下のルーザーズに行く。その下、PSGとR7も同様。仮にLLLとPSGが勝ったとすると、Round2の上の枠、ウイナーズ決勝でLLLとPSGが戦うことになる。そして勝った方がブランケットAウイナーズ抜けの権利獲得となる。これが上の写真で言うところのQualifiersの「Seed#A1」に当たる。仮にLLLが勝ったとすると、#A1にLLLが入る。じゃあA2は、というと先ほどのルーザーーズ、今回の例で言う1回戦で負けたGAMとR7が1敗同士で戦い、勝ったほうが下の右、ルーザーズ決勝に進める。負けたら敗退。例えばGAMが勝ったとすると右下の空欄にGAMが入る、そしてその相手はウイナーズ決勝でLLLに負けたPSGが落ちてきて、1敗同士のルーザーズ決勝戦となるわけで、それに勝った方が#A2に入る、という形で。

同様にBも行い、Aのウイナーズ(#A1)とBのルーザーズ(#B2)、Aのルーザーズ(#A2)とBのウイナーズ(#B1)がBO5で戦い、勝った2つのチームが本戦行き、となる。言葉で書くとものすごくわかりづらいが、試合が進んでいけば分かると思うのでとにかく「BO3で2回負けたらアウト」と思っておくと簡単だと思います。

初戦の相手CFO(台湾第2シード)

DFMの初戦の4択、そのなかで正直一番やりやすいしワンチャンありそうなのがこの台湾第2シードで、そこを引けたのはラッキー寄りと言ってもいいでしょう。実力的な部分はもちろん、スクリムで当たってるのか例年、実力的には上と見なされている台湾の第2シードとは相性がいいというのがあります。

22Worlds 台湾第2シード Beyond Gaming 勝利
21Worlds 台湾第2シード Beyond Gaming 勝利

と2年連続で台湾の第2シードと当たり、相手が格上のはずなのですが勝利しています。今回のCFOはリーグ5位ながら下剋上で勝ち上がり、プレーオフでBeyond Gamingを3-2で下しての参戦、昨年までと実力的には拮抗している、同程度と言ってもいいでしょう。面子は以下の通り。

TOP:Rest(Worlds19,22出場/23台湾代表)
JNG:Gemini(Worlds17,2019,22出場)
MID:JimieN
ADC:Shunn(Worlds22出場)
SUP:ShiauC

注目は上半身、TOP/JGのベテラン勢になるだろうか。勝ち上がってきたプレーオフではダメージ比率でTOPが24.6%とTOPにしては非常に高い比率となっている。TOPにYutaponを置いたDFMのプレーオフでのYutaponTOPのダメージ比率が22.6%なので、このTOP偏重っぷりがわかりやすいだろう。プレーオフではカサンテの次にランブル/グウェインといったAPチャンプを使ってきており、このTOPがチームに幅を持たせていると考えてもよさそうだ。また、5戦までもつれたプレーオフ決勝、PSG相手に2本取った時には、台湾を代表するMIDのMapleに有利をつけてキャリーしており、そのキャリー力も侮れない。

DFMとのマッチアップと考えると、MIDのフィジカル勝負ならAriaは十分勝負できる相手に見える。過去Worldsで当たってきた相手のヤバさを考えれば十分試合を作る力はあるだろうという信頼がある。今回のDFM、自分の読みではTOPがapaMENでBOTがYutaponと踏んでいる。DFMの「大駒」であるYutaponを、より試合に多く関与するポジションに置くべき、と考えるならば、リーグとは違いBOTにYutaponのほうが良いだろう。そうなるとマッチアップ的な不安は2つ。急なプロ復帰となったapaMENが台湾代表Restにどこまで耐えられるか、という点。そして約半年コンビ解消していたYutapon、それも直前の代表戦ではEntyと組んでいただけに、コンビネーションにいささかの不安がある、といったところの2点になる。

希望的観測を言えば、TOPは耐えられると思っている。俺が「apa信」であるというのを抜きにしても、元々apaMENの特徴として「元MID経験による変則メタへの対応の強さ」と「体の強いチャンプを使った押し引きの強さ」があると思っている。実際引退となったシーズンでもチームが低迷する中でTOPのCS勝率は春53%、夏に至っては70パーセントを超えており、TOPの個としてのスタッツは勝率5割のチームながらEviに迫る指標もあったほどだ。ご存じの通りスタッツは勝っているチームのほうが高く出るもので、中位で71%というのは異常値といってもいい。だから翌22年、LJLのチームがドコも取らなかった時「ヘイLJL下位のクソお友達優先癒着チーム編成やってるチームどもは降格がねえからって勝つ気もプロ名乗るプライドもねえのかい?」とブチ切れ記事を書いたのだが。

ともあれ、これと決めたときの的場が怖いのと同様に、耐えると決めたときのapaMENなら大崩れはしないだろう、というある程度の期待がある。実際元DFMのTOPであったEvi氏も、この夏SGの動画に出て、SGの補強ポイントとして「apaMEN、cogcogの獲得」を薦めており、もしかしたら今回の獲得もEviに相談くらいはあったのかもしれない、

 やっぱEviさんは「見る目」あるんだよなぁ。
凡夫どもは21年の俺とEviさんが同意見なのを
十二分に踏まえて噛みしめてからコメントしてくれよな!

BOTもYutaponをどう使うかで迷いがあったらアレかと思っていたが、ソロキューを見るとほぼADCで固めており、勝率57%で駆け上がっていて好調に仕上がっていそう。まあただMHしか見ていないがベトナム相手に日本代表がボコされていて、BOTはなんとか抗ったものの数字を見るとLeviのウーコンに暴れまくられて試合壊されたっぽいので仕方ないにせよ、そこからの復調を祈る、的な。

という感じでド好意的に見てDFMはなんとかいける、という判断で応援したいと思う。ただ、まあ急造チームなのは間違いないので過度な期待は今年に限ってはしないでおくべきではある、と思うところで。

次に当たるかも ⁠Team Whales (ベトナム第2シード)

DFMとTW、お互いが勝ち勝ち、or負け負けで当たることになるのがこのベトナム第2シード。ベトナムといえばLevi率いるGAMが有名で、あのチームがTierを押し上げているのは間違いない、一方第2シードはそこまで世界大会でうまくいっていない、というのが実情ではある。

一方、そのベトナム第2と日本の差は、先のアジア大会でボコされたようにそれなりの差があるのも事実だ。実際22MSIにおいて、GAMが諸般の都合で出られず泣く泣く第2シードのSaigon Buffaloが出てきたとき、直接対決するDFMは、さすがにGAMよりは当たりやすいといった風に見えたものの、実際は直接対決0-2で敗戦、SGは勝ち進み、台湾第一シードのPSG、EU第一シードのG2から一本取るなど爪痕を残している。

つまりDFMの過去の数少ない直接代決で見ると、TWは正直な話、相当相性が悪いと言える。負けた試合も1試合目はBOTの主導権をナミルシアンで握られ、ドラゴンペースを握られ、絶対に渡せないエルダーに臨んだところで相手JGのバックドア、2試合目は超高速でキル交換がなされるベトナム特有の「ベトナムの風」とも言われるハイペースに巻き込まれ、序盤Stealにキルが集まったが、ご存じの通りStealはキャリー型ジャングルではないためそのキルが完全には活かせず、徐々に相手にペースを握られ最後の集団戦で相手カイサが爆発して終わる、という流れだった。そしてその2試合、おそらくタクトを振るっていたのはLeviに次ぐベトナムジャングラー、BeanJになる。その BeanJが夏に移籍し、国際経験のないチームを移籍後即世界に持ってきたのがこのチームTeam Whalesになる。

TOP:Sparda
JNG:BeanJ(MSI22、Worlds22出場)
MID:Glory(23ベトナム代表)
ADC:Artemis(23ベトナム代表)
SUP:Bie(23ベトナム代表/23ベトナムAll Pro Team )

こう見ると世界大会経験こそ薄いが、つい先日のアジア大会の下半身がそのまま出てきていることも分かる。そしてこのベトナムは、日本をボコし、あの中国からも1本取っているわけで相当なポテンシャルと言えるだろう。

特徴のひとつはBeanJ、ベトナムらしからぬ、Leviと違ったコントロール型のJGと言ってもいいだろう。勝ち上がってきたプレーオフでもダメージ比率は12.3%であり、ピックもヴァイセジュアニレルとタンクが並び、味変でノクターンがあるくらいで他はタンクジャングルが並ぶ。一方KPはチーム内で高く、BeanJを中心に動いており、その点ではStealと似たタイプにも見える。ただ、もちろんキャリーも出来るし、MSIでもやられているようにバックドアの判断力や視野も広いため、とにかくBeanJの試合にさせないことが一つポイントと言えるだろうが、こういったあいまいな目標というのは往々にして難しいわけで、単に潰すだけでなく、視界でハメる、常に位置を把握できるようにしないと危険なプレイヤーだろう。

もう一つのポイントはBOTレーン、Artemisはプレーオフを通じてCS勝率30%とレーンが特別に強いわけではないが、後半の集団戦で存在感を出してくるタイプと見ていいだろう。決勝でGAM相手に1本取った時は、4000G負けていて、なおかつGAMからエンゲージしてきて自軍MIDが溶けて4vs5での開戦だったが相手の追撃をアフェで躱しつつ終わってみればクアドラキルで大逆転をしており爆発力は十分。連携面もチーム、代表と通じて培ってきており侮れないといったところ。

実際に当たってみたときのことを考えると、さすがにEviさんがいた22でも苦しかったという状態で、今回即席感のあるDFMは相当苦しいと言ってもいいだろう。過去の対戦を見るに、受け身に回ると相当苦しそうなので、序盤から特にドラゴン周りで有利を取って、中盤以降選択権をDFM側が持てるようにしたいところ、逆に相手にそれを握られてしまうと、視野が広く試合をコントロールできるJGと後半の爆発力に定評のあるBOT、相当苦しいだけに序盤からリードを広げてうまいこと逃げ切れる形に期待したい。

当たるかも ⁠Team BDS (EU第4シード)

ここからはまずNAEUの直接対決の上で当たるかも、なので当たらない可能性もあるので多少端折って。まずはEU第4シードのBDS。昨年はEUでも下位争い、今年は最初のシーズンで勝ち越し片鱗を見せると春には爆発、リーグ優勝をいきなり果たし、その後春のプレーオフでも決勝2-3とあわやEU代表でMSI出場まであった。しかし夏は調子を崩し、夏プレーオフ出場を賭けた一戦ではEviもいたTHに負けて出場を逃す。その後春の貯金でなんとかシーズンファイナルに出場しギリギリで第4シードを獲得、といったところ。とはいえ最終的には上り調子だったFnaticに2-3と競りかける程度には復調しており爆発してもおかしくない。

TOP:Adam(Worlds21出場/23春EU 2nd All Pro Team)
JNG:Sheo(23春EU 2nd All Pro Team)
MID:nuc(23春EU 3rd All Pro Team)
ADC:Crownie(23春EU All Pro Team )
SUP:Labrov(23春EU 3rd All Pro Team)

我々日本のファン的にはあのEviをゴリゴリに押し込んでいたAdamに注目してしまうが、チーム的に言えばAdamで崩すのはオプション的な形で、ダメージ比率などを見るとコントロール型のJGが試合を作り、ADCのCrownieが試合を決めるスタイル。スタッツを見ていると、波はあるが基本的にレーンから強く、G2相手にも有利を築けるくらいには強さがある。その分かMIDのレーンは若干弱みがありそうでそこを突かれるかどうかといった部分もあるだろう。

日本と当たるとなるとやはりAdamが厄介。Eviに好相性を見せており恐らく得意な印象はあるだろう、そこにEviと格付けしてあるapaMEN、それもブランク明け、となるとかなり強気にゴリゴリ来られると思われるので苦しさはありそう。EUの試合を見る限りMIDのハンドスキル勝負ならAriaに分がありそうなので、もし当たるとしたらAriaが早々にぶっ壊してくれるのを期待したいところ。

当たるかも ⁠Golden Guardians (NA第4シード)

NAでも中位下位が定位置だったのがこのGG、だが年々調子を上げ、今期は苦労人のGori、そして世界請負人にして大ベテランのHuhiを獲得することでチームが安定、春リーグは勝率5割ながらプレーオフでブレイクしMSIに出場。プレイインでは中国以外には格の違いを見せつけ突破するも本戦ではまたも中国と当たり敗戦、落ちた先のNA対決でもC9に敗れる。夏もリーグ2位と好調を維持するも、プレーオフで苦しみなんとか4枠目に滑り込んだ、という流れになる。世界ではあまり見ないチームだが、ベテランがいたり日本にいい意味で、そして悪い意味で馴染みのある選手もいたりして既視感がある人は多いかもしれない。

TOP:Licorice(Worlds18,19/MSI23出場/23夏NA All Pro Team&MIP)
JNG:River (Worlds20,21/MSI21,23出場/23夏NA 2nd All Pro Team)
MID:Gori (MSI23出場/23春NA All Pro Team/夏NA 2nd All Pro Team)
ADC:Stixxay(Worlds16/MSI16,23出場/23夏NA 2nd All Pro Team)
SUP:huhi (Worlds16,21,22/MSI16,23出場/23春NA 3rd All Pro Team/23夏NA All Pro Team)

まず日本のオールドファンの目を引くのが日本のトラウマ、TOPリサンドラで試合をひっくり返したあの「リコリス」がいることだろう。今年の夏は完全に復調しておりNAのNA All Pro Team(野球で言うベストナイン)に選ばれている。JGのRiverは日本で、まだ補強する気があった頃のV3で活躍したジャングラー。その後世界を転々としつつ活躍している。BOTの2人は超オールドファンには懐かしい、NA栄光期、16MSIにおいてあのT1より上、リーグ2位で抜けて決勝進出、T1に負けたものの2位になったCLGでBOTをしていたStixxayと、当時MIDだったHuhiの2人になる。ちなみに決勝で負けたT1の当時JGは日本のBlank。もし今回出ていれば16から7年ぶりの再会という熱いシナリオもあったのだが…。MIDのGoriは魔境T1のサブMIDとして、以来NSで頭角を現し、FPP、PSGとビッグチームに参加するも世界には一歩届かずでたどり着いたNAで大ブレイクの苦労型MIDとなる。

チームのダメージ傾向としては結構言わずもがな感があるがTOPからもダメージが出るタイプの構成となっている。Riverもご存じの通りコントロール型ながらもキャリーが狙えるタイプで、このTOPJGの臨機応変感はひとつ強みと言えるだろう。MIDのGoriは安心と信頼のT1ブランドでレーンから強くダメージも出せる。BOTレーンはベテランらしく試合を若々しくぶっ壊すタイプではないものの安定して仕事をこなす、といった感じか。

NAとEU、近年の傾向的にはEUのほうが上と見なされているが、このリーグ中位レベルならそこまで差がないのでは、と個人的には踏んでいる。馴染みの選手が多いという贔屓目もあるだろうが。どちらにせよTOPに特色があるチームで試合も面白そうだが、DFMと当たるとなると両方厳しい。特にapaMENは実戦復帰数戦でAdamやLicoriceという欧米のなかでもハードで癖のある相手と当たるわけでなかなか苦しそうだ。願うのならば当たらずに突破するのを期待したい。

まとめ

今季のDFMは諸般の都合により相当キツいことが予想されるが、相手を見るに全く目無し、というほどの格差はないものと思われる。カギは一つ復帰になるapaMENなのだが、Bootcampを見ると韓国のソロで復帰直後ながらMaster100LP越えで勝率も5割を超えている。もちろんサブであり、夏にリーグに出ていたMilanのほうが良いのでは、という声もあるかもしれないが、Milanのソロキューは同じMasterで執筆段階で11LP、実際の数字の話として、復帰直後というデバフありきのapaMENのほうがそれでもソロキューで上にいるのが実情だ。あれ、これなら夏からapaMENでもよかったのでは……。そもそも……以下略。

ともあれこれでapaMENがソロでBalls状態、D2スタックしていたらYutaponをADCで使えなかったかもしれないわけで、出来ればYutaponはTOPよりも試合を左右する割合の大きいADCで使いたいと考えれば、「いやソロで上でしたから」という起用上の大義名分が得られている段階でapaMENは一つ既に期待に答えていると言えるだろう。

https://www.trackingthepros.com/bootcamp

Balls:元C9のトップレーナー、Season5Worlds開始前、KRでのソロキューでD2スタックしてしまいその調子を心配されたり批判されたりミームになったりしていた。そして始まった本戦、ライバルEUの雄Fnatic相手に3000G負けた状態からの集団戦でダリウスによるペンタキルで試合をひっくり返し勝利。C9は1週目を3-0と勢いも結果も最高の状態で抜け、2週目で1つでも勝てばベスト8は確実、といった雰囲気、なんならNA復権の声すらあった。なおC9の2週目は0勝3敗で通算3勝3敗、ベスト8に進めず大会を去った。

LOLに限らずよく言われる「ベテラン使うなら若手にチャンスを」論だが、個人的には「チャンスは自分で掴むべし」感のほうが様々なプロシーンを見ているとうまく行く感がある。apaMENにしても、LJLのベテランの多くは技術の根っこの部分をバリバリだった頃、人口も爆発的だった頃のNAソロキューで鍛え、NAで台頭してきての今がある。LJLのプロという旗印のもと、下駄を履いてKRチャレンジをさせてもらってる前の、プロなんてなくてあっても立場が不安定な頃からやっているという強みがある。自分は格ゲーシーンもよく見ているのだが、やはり格ゲー黄金期にかすっていたウメハラの凄味、強みというのはあのスト2ブームで人口が爆発していた頃にバチバチで勝ち抜いたフィジカルとメンタルの強さというのがあり、それは若かろうが年を取ろうがそうそう擦り減らないのでは、という話であって。

野球やサッカーでも「世代」というのがある。例えば「松坂世代」「マー君世代」というのが有名だが、諸々の都合でいい選手が集まった世代で甲子園まで上り詰めて切磋琢磨してきたなかでの上澄みはやはり平均値が高く、勝負強さ等を兼ね備えていてプロでも活躍したという話だ。もちろん切磋琢磨による平均レベルの向上、地のレベルが上がる訳でなく突出した「個」が出てくることがある。例えばサッカーの「釜本」、今で言えば野球の「大谷」だ。大谷が凄いのはもちろんだが、大谷の場合は身長からして日本人の上位0.00……といったレベルの生まれながらにしての超スーパーフィジカルギフテッドに努力の才能までついてきた特異点で、言ったら伏黒パパみたいな話で再現性がないレベルであり、あれならバスケでもサッカーでも成功しただろうよ、みたいな話でもあって。

再現性という話で分かりやすいのが中国バスケットボールだろう。2000年代中盤、ヤオミンという身長229センチの選手が登場してNBAを席巻した。怪我も多く、活躍シーズンはそこまで多くなかったが、今でもアジア最高のバスケットボールプレイヤーとして投票をすればダントツ1位間違いなしのスーパープレイヤーだ。だが、名将田岡茂一が言ったように、どんな監督でも身長は伸ばせないし229センチは練習で作れない。再現性がないのだ。ネクストヤオミンを目指して長年大バスケブームだった中国だったが、やはりというか当然ながらそこまで恵まれた選手はそうそう出てこない、直近のワールドカップで苦戦したように、「そこ」を目指すと苦しいし再現は不可と言ってもいい。だからこそ地のレベルを上げて切磋琢磨することによって平均レベルの向上、その中の上澄みで競い合うことが、再現性があり大事でないか、という話で。そういった「世代」としての強さは「個」でも崩れにくい、という感がある。

話がずれたので戻すが、要はNA100万人のソロキューのなかping150で上位に食い込んでいった奴らと、5歳違いで人口7万人のJPソロキューで台頭してきた奴ら、どっちが力あると思う?って話であって。そして肉体使うフィジカルスポーツでもないのに20代後半をベテラン扱いして20代前半を優遇するのは果たして正しいのか?それなんかデータあるんですか?20代前半がピークって、それKRの奴らが20代中盤で兵役で抜けるからデータないだけじゃないんですか?Khanだって25くらいでMSI2位Worlds2位で兵役行ったんですけどじゃあ続けてても27なら衰えてるってなるんですか?あの21シーズンの鬼神みたいなKhan見て22でダメになるなんて思えます?そういうことなんですよね?って話で。

あとは「苦労して自力で掴まないと歪みが」という部分もある。野球の話だが、中日に石川という選手がいる。中日という球団はかつて地元も地元、愛工大名電のイチローを4位まで見逃して取り損ねたトラウマがあり、地元選手に躍起になる節がある。またオーナー企業も中日新聞で、球団全体に地元贔屓感が強いというのがある。その悪いところがある意味結実したのが今年になる。ドラフト1位で獲得して4年目、活躍が期待される石川は、スタートダッシュに失敗した中日で「期待も込めて」と4番に抜擢され半固定状態になる。打率は2割5分を切るか切らないか、HRも数本といった状況で、これは「地元贔屓」がなければ普通4番にはとても据えられない成績といえる。そんななか起こったのが「怠慢走塁」になる。セカンドランナーでいる石川は、打者のレフトへの打球、長打を確信して助っ人外国人並にゆったりと走塁してホームへ向かう、確かにあの打球ならホーム送球はイチローでも無理筋だろう。だが阪神の外野手ノイジーはホームでなく突っ込んできたサードに向かって送球、ギリギリのタイミングながら刺すことに成功、まごうことなきノイジーのナイスプレー。だが本来石川がその送球、タッチプレイの前にホームを踏んでいれば1点だったのに、完全に足を緩めたおかげで0点になってしまった、という話だ。

もちろんノイジーのナイスプレーが第一だが、結局普通に走塁してればよかったのになぜ抜いたのか、という点でやはり「慢心」があったのでは、と思うところで。果たして1年目だったらこんな走塁をしたのかな、レギュラー争いで必死な中こんな走塁したのかな、と考えると「成績が悪くても四番に固定してくれる中日」という状況が産んだプレーなのでは、と見えてしまう。もちろん一生懸命やっても大成しないことがあるのがプロの世界だ、ただ一生懸命にプレイすることは誰かが見ている。ついてないミスやエラーだってある、でもそれだって観客は見ていてわかる。バカではないのだ。

中日、地元、期待の選手ということで似た状況で先日引退した堂上、その成績は決して当時の期待を超えたとは言い難いし、なんなら「育成失敗」といってもいい打撃成績だろう。でも引退の時に中日ファンの多くが彼の引退を惜しんだ、なぜか、地元だからか?それも多少はあるだろうが、答えは堂上のプレイに現れている。打撃は大成しなかったが、中日の伝統である「堅い守備」は同期の誰よりも体現できていた。プリンスなんて言われてたのに泥臭く体を張りダイブして打球を抑える姿、取ってからの送球へのモーションの早さ、そんなところも多くの中日ファンが記憶しているのだ。ファームから真面目に練習してきたであろうことが見て取れた。だからこそ、あれだけ愛された引退となったと言ってもいいだろう。「堂上はチャンスが少なかった」と評する意見も目にするし、それゆえの今なのかもしれないが。

いよいよ何書いてたか忘れて来たので強引に締めよう。今回DFMがapaMENを獲ったのは悪くないアイデアだと思う。復帰直後ということを考えればこのソロキュー成績でもずいぶんお釣りが来るのではないだろうか。そしてそれを考えると逆説的に「LJLで下位なのにapaMEN取らない理由って何?」となってくる。個人的には韓国の徴兵制度で頭打ちなのを無視して「20代中盤ピーク」とか「25歳限界」とか言ってる風潮は変だなと思うので、そういった意味でもapaMENの活躍に期待したいなと思っています。敬称略。


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