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ティム・インゴルド『ラインズ』(13)

彼の論述はぶらぶら歩きのように進み、立ち止まり、道草を食い、また進む。このプロセス自体が思考の実質であり、文の歩みを単なる「輸送」(すなわち出発点と到着点が決まっていてそのあいだを直線でむすぶ動き)にしない秘訣だ。ついで概念的語呂合わせとは、音と音の呼応を発想の飛躍のばねとする語呂合わせのように、思いもよらない事例のあいだに類似や並行関係を見出し、それに沿って論述を横すべりさせていく傾向をさす。

ティム・インゴルドの『ラインズ』の解説の一文である。こんなふうに書いていいんだとわくわくさせられた。的確に言語化している解説者の管啓次郎さんに感謝である。

そして、この本を要約し、分類し、わかりやすく提示することそのものが本意でない行為であろう。

私たちが住んでいる世界は、きちんと秩序づけられたシステムに収まりきらない豊かな線状性を示している。実のところ、世界はまさに人が押し付けようとするどんな分類からも常に身をくねらせるように逃れ、あらゆる方向へ緩やかに延びていくさまざまなラインなのだ。

ほんとにさわやかな気持ちになる一冊だ。

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