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価値循環の描き出しと具現化ということについて:マザーハウス12周年記念トークイベント

今日は、マザーハウス12周年記念トークイベントに行ってきました。〈お客様総会〉って呼ばれてる催しです。

結論から言うと、やはりおもしろかった。つねに何か新しいこと、あるいは先に進もうとすることをやっておられるからなんだろうなと、あらためて実感しました。

副社長の山崎大祐さんが紹介されたソーシャルアクションや、バングラデシュ、ネパール、インドネシアそれぞれのカントリー・マネージャーさんたちの実感対談、さらに社長かつデザイナー(←これは、必ず自己紹介でおっしゃられてます)の山口絵里子さんの挨拶&この1年での活動報告などなど、2時間があっという間に過ぎていきました。

なかでも興味深かったのは、山口さんから報告のあったコルカタの手紡ぎの綿を使った新製品(シャツ)の紹介。もちろん、新製品の紹介だけに終わるはずはなく、むしろその企画や製造に到った経緯・展開がまことにリアルに実感的に紹介されました。こればっかりはご本人が語られるのを聞かないと、実感も何も湧いてこないので、機会のある方はまたぜひ何かの折に聴いていただきたいと思います。

そのなかで、あらためて強く感じたことをいくつか。

(1)その商品が生まれて(アイデアとして出てくる段階)から、顧客がそれを使っているシーンまで一貫して描き出し、それをかたちにするという点にこだわる。

(2)現地に残されていて優れている、しかし何らかの事情で衰退しつつある技術(を具現化できる職人さん=作り手)を、単なる保護ではなく、使い手=顧客が価値を認めて対価を支払ってくれるプロダクトとしてカタチにする。

(3)販売まで一貫して担うことで、使い手=顧客の生の声を、作り手たる職人さんに伝え、それをプロダクトに反映させる。

(4)この流れ / 循環を成就させるためのしくみとプロセスを(試行錯誤も含めて)ていねいに磨き上げていく。

以上の点は、私が聴いていて整理したことなので、あくまでも私の見解です。ただ、この理解が的外れでなければ、こういった価値の流れのデザインの緻密さこそが、マザーハウスという企業の強みなのだろうと思います。しかも、そこにはさまざまな試行錯誤も含まれていて、それを軸がぶれないように意識しながら方向づけしてきたところに、最大の特徴があるのではないかな、と。

今回の報告のなかで、「作り手と使い手の双方が主人公」という趣旨の発言がありました。これ、当然のように聞こえながら、実際にそれを貫くとなると、まことに大変なことであろうと思うのです。それを12年にわたって続けてきておられるというのは、並大抵のことではない。

あらためて、すごいなぁと痛感した催しでした。

そのあと、梅田蔦屋書店のマザーハウスのお店で商品を眺めながら、スタッフの方とお話を。そのなかで、「山口さんは、フィールドワークの鬼」(←もちろん、超絶すごいという意味で)というフレーズが出てきて、「あ、なるほど」と思い到るところがありました。きっと、山口さんてエスノグラフィカル・アントレプレナーなんでしょうね。だからこそ、一貫した流れを描き出すことができるんだろうな、と。それを支える山崎さんやマネージャーさんたち、店舗スタッフさんたち、言うまでもないことながら、各国の職人さんや工場で働いている人たち、それぞれが自らの役割を発揮してのことであるのは、もちろんですが。

マザーハウスも干支でいえば一回りしたわけですが(というて、私が知るようになったのはここ2〜3年のことですから、それ以前のことはわかりません)、何か年々歳々エンジンの能力と出力が上がっていってるように見えます。

これからも楽しみに、この企業のことを見続けたいなと思います。

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