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un homme à la hauteur 背の高い男

フランス映画「un homme à la hauteur」を見た。日本語の「大人の恋の測り方」というタイトルがイマイチなので、原題のこちらで書く。136cmの小柄な男性と、金髪スタイル抜群美女のラブストーリー。ラブストーリーに括っていいのかな。わからない。

ラブ以外の部分が一番考えさせる作品だった。だから、日本語のタイトルはほんっとうに違うと思う。
「un homme à la hauteur」は「背の高い男」という意味らしい。スマートで良いタイトルだなあ。

この作品、ひたすらルッキズムについて皮肉り倒している。オープニングは主人公の金髪スタイル抜群美女が町を歩いているだけ。でもそれだけで、絵になる。だから歩いているだけなんだけど、道行く男の人があまりの美しさにチラ見したり振り返ったり。
人の視線はこんなに正直に物を言うのだなという、シンプルな事実を伝えている。

ひょんな事から136cmの小柄な男と出会う。136cm の小柄な男は、素晴らしい仕事をしてお金を稼ぎ、身長を馬鹿にされても怒りを伝えつつその場を嫌な空気にしない。女の人への気遣いも、デートプランも完璧。みんなこの男を好きになると思う。

金髪スタイル抜群美女と136cmの小柄な男は付き合い始めるものの、周囲の人の視線は無視できない。女はその針のような視線に怒りつつも、自分の中にも確かに差別意識がある事に気づく。

歩いているだけであんなに注目され、その視線は全く気にしていなかったのに、なんで悪意や偏見にはどうしようもなく気づいてしまうのだろう。

その視線にずっとさらされてきた136cmの小柄な男は、「自分の欠点が隠しようもないだけだ」と言う。

誰にだって、隠したくて弱くて嫌な部分はある。そういうものを、人に見られないように工夫して生きている。

この男の、一番隠したい部分は絶対に絶対に隠せない。何度絶望した事だろう。それでも出来るだけ何でもないように、自分に劣等感を持たないように、堂々と生きている。

「あなたの心の中に差別はある。」と、劇中である人が言う。自分の心の中の隠された嫌な部分にどう向き合うか。
誰かを愛してしまったら、そこに直面しなければ愛し続ける事が出来ないならば、一体どうしたら良いのだろう。

金髪スタイル抜群美女は、あっと驚くやり方で自分の想いを伝える。少し予定とは違う、スットコドッコイな感じで終わるのだけど、美しさをかなぐり捨てて自分をさらけ出した彼女の、最後のほっとした表情は劇中のどんな顔より可愛かった。


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