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北奥のF''unkasai 私とアートのハネムーン

2023.01.13

夕方、富山駅を出発。かがやきに乗って大宮まで。東京方面に向かうのは、原美術館のエリザベス・ペイトン展に行った時以来だという事に気づく。原美術館。大好きだったな。

大宮ではやぶさに乗車。息子が好きなはやぶさは北海道まで向かうらしい。知らなかった。
夜の新幹線は、お酒とおつまみのにおい。

22時頃、八戸着。日本中どこにでもある東横イン泊。

2023.01.14

どきどきしてあまり寝られず。無事に十和田湖まで辿り着けるのでしょうか。レンタカー屋のお兄さんが、めちゃめちゃ優しく便宜をはかってくれた。ありがとうございました。

ナビが私に山道をゆけと言う。「冬季除雪しません」「12月1日より冬季閉鎖」の看板のある道ばかり案内する。ビビりまくり、盛大に迷いながらも奥入瀬渓流へ。

十和田湖から流れる唯一の川である奥入瀬川。富山の山は杉ばかりですが、この山は杉がほとんどない。原生林なのかな。雪が積もった山道は、本当に美しかった。

渓流沿いの道を1時間程進むと、湖が見えてきた。
そしてついにホテル十和田荘に到着。荷物を預け、北奥のF''unkasaiの拠点であるyamajuへテクテク歩く。yamajuは湖畔にある、長期滞在者向けのゲストハウスだ。

そこで行われた、島袋道浩さんと中山晃子さんのギャラリートークに参加させていただいた。

私は島袋道浩さんが大好き。ずっと憧れていた方が半径50m以内にいらっしゃるなんて、夢か現か幻か、という感じだったのですが、本当に、いる。すぐそこに。やば。

半分ぼおっとしながらも、お二人の作品のあるグリーンホテルへ向かった。

最初に拝見したのは、画家の中山晃子さんの作品。

ザラザラした、カラフルなモザイクのようなものが壁いっぱいに映し出されている。
それは、顕微鏡で覗いた湖の砂。拡大すると、こんなに色んな色があるんだな。

そこに、湖の水を加える。水の揺らぎとともに、シャーレの中の砂もたゆたう。
鑑賞者がマイクを渡され声を出すと、声の振動とともに砂と水が揺らぎ、壁いっぱいの画面も変化する。

中山晃子さんは春・夏と湖畔に滞在していたそうだ。
冬、鑑賞者である私が見た十和田湖は、色の無いモノトーンの世界。
この部屋のインスタレーションは、画家である中山さんが絵の具をしまい、十和田湖の砂と水で描き出した風景画のようだった。
小さな小さな砂つぶが、その時、確かにそこに居る人々の声で揺らぎ、春夏の色のある十和田湖を呼び起こす。
歌声も、ハミングも、想像上の風景として、いつまでも記憶に残るだろう。

それはもしかしたら、実際の風景よりも美しく、響きあっているのかもしれない。


グリーンホテルの3階、かつてスイートルームだった二部屋に、島袋道浩さんの作品はあった。足元から天井まで窓の、十和田湖が一望できる部屋。

「沖縄の土と十和田湖の土のハネムーン」というタイトル。島袋さんの作品の何が凄いって、タイトルだけで完璧に信頼できるという事。そして、実際に作品を鑑賞すると、想像していた何倍もの拡がりがある。いつだってそうなのだ。

ベッドの上に、二人。

人型に土が盛られている。左側が、島袋さんの住む沖縄の土。右側が、十和田湖の土。冬の間、氷点下の、誰も来ない静かな部屋で、新婚の二人は静かに愛を育んでいた。

春がきたら土から芽が出たり、虫が動き出したりするのかも。だけど、ハネムーンだから、新婚だから、二人っきりで幸せなんだろうな。
今ここにある幸せを、寒い部屋で寒天のように固めた、静かな静かな愛と狂気の作品だと、私は感じた。

お隣の部屋では、なんと、ベッドの上で2体の雪だるまが寝ていた。こちらは、十和田湖の雪で作られた、十和田湖出身者同士のハネムーンだ。

ここ数日の暖かさで、雪だるまは少し小さくなってしまったらしい。そう、雪だるまは、春になると消えてしまう。

沖縄と十和田湖の遠距離恋愛の末の結婚と、十和田湖と十和田湖の地元同士の結婚。
春に動き出すものと、春になったら消えてしまうもの。時間と共に変化し、だけど、今、確かにここにある何か。

雪だるまの溶けた水は、お隣の土に水やりされるらしい。溶けてしまっても、姿は消えても、無くならない愛もある。


鑑賞を終えyamajuへ帰ると、島袋さんが映像作品を見せてくださった。チベットの土を用いた「Our Land Our People」という作品にまつわるドキュメンタリー映画。壮大だった。

土。土地。

長い時間をかけて積み重なったもの。場所によって、色も、手触りも違う。日本に住む私たちの生活圏の中では、アスファルトで覆われ、見えなくなってしまっている、一番のその土地らしさであり、そのもの。

その場所でしか作ることの出来ない作品を、二人のアーティストが十和田湖で制作した。お二人とも、土にまつわる作品だったというのは、偶然だったと思うけれど。すごいなあ。

十和田湖でのアーティストインレジデンスの純度の高さと、アーティスト含む全ての関係者のみなさんの妥協のない探求の結果だと思います。湖の水のように、澄んでいて、トロッとしていて、優しい何かがそこにはあった。見に来て、本当に本当に良かった。

クタクタで、温泉も入らず、爆睡。

2023.01.15

朝起きたら、うっすら雪が積もっていた。憧れだったねぶたも津軽びいどろも、ホテルの中にあった。ありがとう。ホテル十和田荘。

次は、青森の美術館ツアーに、また来よう。yamajuで、4泊以上しよう。今回も、きっとこの次も、私とアートとのハネムーンだ。

十和田湖から流れる川の行き着く先が見たくて、八戸港まで向かった。昨夜、地元の方に教えていただいた、6かくコーヒーさんでテイクアウトしたコーヒーと共に。

港は吹雪で、八戸のカモメはデカかった。

予定より一本早い新幹線で、私の住む富山に帰る。忘れないうちに、新幹線内でこの文章を書く。アートとのハネムーンは、これから先、何度だってできる。また行くね、青森。大好き。

大好きな場所が、また一つ増えた。







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