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国家の構造(政治学)

国家を構成する二要素

『国家』の三要件として主権・国民・領土の三要素が挙げられる事があるが、政治学的には、一般に国家は2つの要素から構成される。

1つ目は、『国民の人的結合』
地縁・血縁・歴史・その他で結びついた「国民の共同体」であり、俗にその国の「社会」と呼んでもいい。

2つ目は、『政治的権力の枠組み』
ようするに政府や地方行政機関、制度や法律の事である。
保守主義的には「国制」とも言う。

全ての国家はこの二つから構成されている一方、当然ながら、それぞれの国家ごとにその内容は異なっている。

例えば、フランス。

『現代フランス国民の人的結合』はケルト人等に人種的ルーツを持つオクシタニアなどフランス在地の民族集団に加え、その他の欧州にルーツを持つ集団や旧植民地からの移民などから構成されている。

『現代フランスの政治的権力の枠組み』は大統領を擁する共和制で、現代の第五共和制はド・ゴールの第四共和政に対する反省によって、議会よりも大統領の執行権が強く、強力な官僚機構も相まって行政力が強力なのが特徴である。

これらはフランスが歩んだ歴史によって現在の形になっているといえ、同じ構成の国家は地球上に二つと存在しない。


権力と強制力

「政治的権力の枠組み」は『強制力』を持つ。

「強制力」とは軍事権・警察権・行政権・徴税権などといった物理的・法的・経済的な一切を指す。

例えば、犯罪者や外敵により社会が北斗の拳のような世紀末状態では産業どころか生活もおぼつかない。

そのため、犯罪を定義し、犯罪者を捕まえ、犯罪を裁くといった秩序を維持する強制力が必要とされるわけである。

無秩序の中では幸福は築けない。
治安維持が最低限の福祉(夜警国家)とされるのは、このためである。

また橋を架ける・道路を作るといった公共事業、社会保障など制度の設立や改革・運用、国際条約を結ぶにも各種の強制力が発揮される事になる。

通貨発行や徴税によって経済


政治的権力の枠組みと国民

これら「強制力」は本来『社会の秩序を守り、国民をできるだけ幸福にするため』に存在する。

当然だが、「国民の人的結合」がなければ「政治的権力の枠組み」は存在しないのであり、逆ではない。

政府が強制力を持つ事からこちらが主であると誤解しやすいが、国民共同体が主で政府が従である。

「政治的権力の枠組み」の存在意義は国民の幸福を増進する事であり、物理的・技術的様々な限界はあるにせよ、少なくとも、それに寄与しようと努めねばならない。

でなければ、それは単なる暴政であり、政府は強制力の正当性を失い、無秩序に陥るであろう。


大体、まとめると以下の図のようになる。

余談

日本は当てはまらない?

これを見て、近代主義だとか社会契約論は自然に成立した日本国には関係ない・忠義がどうのこうの等と思った人がいるかもしれない。

しかし、古来の日本で国民が主とされて来たというのは、神武天皇が建国時に述べたと言う「八紘(あめのした)を掩(おお)ひて宇(いえ)にせむ」や仁徳天皇の「民のかまど」の話を見ても分かる通りである。

たまに一般国民を政府の家来か奴婢のように考える向きがあるが、封建制や共産主義ならともかく、近代民主政国家あるいは、民を大御宝とした天皇を中心とする古来の日本においてはナンセンスな話である。

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