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羽場宏光『新元素ニホンニウムはいかにして創られたか』東京化学同人

2015年12月30日(日本時間では12月31日)、113番目の元素発見の優先権が日本の理化学研究所森田グループに与えられました。森田グループが日本で初めて発見された元素であることから、日本(Nihon)の名を冠した元素名「nihonnium」、元素記号「Nh」を提案しました。

2016年6月8日、IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、日本の提案をウェブサイトで世界に発信し、同年11月28日、正式に承認しました。アジア初の新元素記号ニホニウムが誕生しました。

自然界にない人工元素発見の歴史は、最初、米国が独走しましたが、米ソ対立の時代を経て、最近は、ドイツが独走するなか、ロシアと米国は共同研究グループを結成し追従しています。ニホンニウムも、ドイツとロシア・米国連合との熾烈な競争のなか、ついにアジアの国で初めて優先権を獲得しました。

しかし、日本の科学者による新元素の探索は初めてではありませんでした。1908年、第一高等学校教授であった小川正孝(のちに東北帝国大学教授・大学長)が、原子量100の新元素「nipponnium(ニッポンニウム)」を提案しましたが、追試実験がうまくいかず周期表から消えてしまいました。

ニッポンニウムは、実は原子量185のレニウムでありました。このレニウムは、1925年、ドイツのウォーター・ノダック、イダ・タッケ、オットー・ベルグにより発見されています。

2016年には、113番のニホンニウムのほかに、115番のモスコビウム、117番のテネシン、118番のオガネソンが、ロシアと米国の共同研究であるオガネシアングループによる発見による命名として承認され、周期表の第7周期の元素が出そろいました。

現在、119番元素の探索が始まっているとのことですが、10年スパンの気の長い研究です。第8周期以降の超重元素の探索は、宇宙で発生する重たい元素の研究にもつながるもののようです。

また、ニホンニウムの性質についての研究も進められており、将来、有用な性質が明らかになれば、生活の役に立つかもしれないそうです。事実、人工元素のなかには、医療診断やがん治療に活かされているものがあるようです。

最近、日本で基礎研究が軽視されているという意見を聞きますが、すぐには役には立たなくても重要な研究があることを知りました。また、日本における化学の成果として誇らしくなりました。


















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