キャッシュレス社会と現在の自分(前編)

 私は今日常的にほとんど現金を使っていない。小銭を使う場面といえば唯一、会社のコーヒーの自動販売機ぐらいである。
こと現代においてキャッシュレスはかなり進みつつある。あれだけ現金主義と言われていた日本ですら、2020年には29%の人が何らかのキャッシュレス決済を使用して支払いを行なっているわけである。これはひとえに決済サービスや決済インフラの充実、銀行やクレジットカード会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)化によるものが大きい。

私とキャッシュレス

 私がキャッシュレスという概念を知り始めたのは今から10年以上前のことである。当時小学校5年生か6年生だったころの私は叔父に連れられてスーパーに行った。その際、叔父が紙幣や硬貨を一切使わずにクレジットカード一枚を店員に渡すだけで支払いを終えていた。これには私も驚いた。
それ以前からクレジットカードの存在は知っていた。しかし、後払いであるため決済額が大きくなることで日常使いにはあまり適さず、家電製品などの高額な決済のみに使用するものだという考えがそれまでの私にはあった。現に私の親はその当時は現金派で、クレジットカードも使用していたが前述の通り高額決済などに限っていた。

 日常使いにクレジットカードを使うという選択肢が生まれたのがこの頃であったが、一人で店に入って支払いなどをすべて行なえるようになりはじめたのもこの頃であった。しかし、私は細かい計算を行うのが苦手であった。お釣りなどがどうしても多くなってしまうのである。これでは日常的に買い物をするのはかなり億劫になってしまった。
時は過ぎ高校1年になった頃、私の使用する携帯キャリアがSoftBankからauに変わった。その際に家に届いたのがau WALLET プリペイドカード(現:au Pay プリペイドカード)である。auでは加入回線につき1枚、au WALLET プリペイドカードが発行される。これはMastercardの国際ブランドがついたプリペイドカードであり、事前に金額をチャージしておくことでクレジットカードと同じ仕組みで決済を行なうことが可能であるというカードである。当時未成年であった私は、クレジットカードを作るという選択肢はなかったが、このカードを使えばほぼ完全キャッシュレスが実現できるのではないかと考えた。

キャッシュレスとプリペイドカード

 ただ、問題なのはチャージである。Suicaなどであれば鉄道会社の券売機でチャージすることが可能であるが、 当時のau WALLETプリペイドカードはチャージ方法がauショップ店頭窓口、auショップ内のセルフチャージ機(これも使い始めた当時は存在しなかった)、クレジットカードからのチャージ、auかんたん決済、auポイントからのチャージと選択肢が少なかった。auショップ店頭窓口は一度試してみたが、au WALLETのチャージのためにわざわざauショップまで赴き、窓口の店員に声をかけるのはあまりに可用性に欠けていた。また、auショップのセルフチャージ機も途中から導入されたが、auショップもそう数があるわけではない。当時携帯料金を自分で支払っていたわけではなかったため、auかんたん決済でのチャージは論外[1]である。しかしauユーザーであったため、料金を支払っていればauポイントは付与されていた。当時のチャージのメインはauポイントからのチャージが多かったと思う。[2]

 所持している人であればわかると思うが、au WALLETプリペイドカードの裏にはWebMoneyのロゴが表示されている。これは当時プリペイドカードで電子マネーサービスを行なっていたWebMoneyのサービスと一部共通しているという意味である。また当時はWebMoneyプリペイドカードの残高をスマホで管理する「WebMoneyカードホルダー」というアプリが存在し、買い切り型のWebMoneyカードから別のカードに残高を引き継ぐことができた。
この仕組みを利用することで、買い切り型WebMoneyカードをコンビニ等で購入し、WebMoneyカードホルダーでau WALLETプリペイドカードに残高を引き継ぐことで、複雑ではあるがau WALLETへのチャージが実現できたのである。この方法で数回ほどチャージを行なった。[3]

 主にau WALLETプリペイドカードを使っていたのは東京へ行ったとき[4]スタバでコーヒーやフラペチーノの注文するときや、CoCo壱番屋でカレーを食べるとき[5]などである。ただそれも完全キャッシュレスというわけにはいかなかった。

大学生とキャッシュレス

 次に転機が訪れたのは大学生になってからである。大学は東京であったため電車に乗って東京に行く機会が圧倒的に増えた。キャンパス内に大学生協の購買や学食があったため、食事もそれで済ませることが多くなった。
そこで問題になるのはキャッシュレスである。大学の購買も学食もキャッシュレスに対応していなかった。またもここで現金を使わざるを得なかった。しかし、は購買ではiDが使える可能性があるという噂が当時学内で聞かれていた。そこでau WALLETプリペイドカードのようなプリペイドカードでiDが使えるプリペイドカードを探していた。

 そこで「dカードプリペイド」というカードが浮上した。docomoが発行する「dカード」のプリペイド版で、iDにも対応していた。そこでそのカードにチャージし、キャッシュレス決済を実現することを考えた。
結論から言えばそれは不可能だった。大学の購買はiDには対応しているが、大学生協のクレジットカード以外は断っているということだった。[6]またdカードプリペイドもチャージが困難であった。当時はチャージ方法がローソン店頭でのチャージとクレジットカードのみであった。[7]

 このような迷走を続けていたことはクレジットカードやプリペイドカードの仕組みや他にどのようなサービスがあるのかを知るきっかけになった。
そうこうしているうちに私の母親は日常の決済がほぼおサイフケータイになっていた。もともとはJALカードをメインのクレジットカードにしていたが、JMBWAONのマイル還元率からコンビニなどではWAON、また日常的に行くイトーヨーカドーではnanacoを使用するようになった。[8]日常の買い物等はすべてキャッシュレスで済むようになっていた。[9]

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