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★ (Blackstar)

今日、1月10日はデヴィッド・ボウイの命日。

早いもので彼がこの世を去って丸6年ということになる。

2016年以降、正月明けのこの時期は彼の誕生日(一昨日の1月8日)と命日が立て続けにやって来るのだが、やはりまだ今は彼の死を悼む気持ちの方が上回ってしまう。

そして、その6年前にリリースされた『★』の衝撃は今聴いても何ら薄れることはない。このアルバム全編を貫く(かつてない)異様なテンションは一体、何なのだろう。

立ちはだかる困難や逆境を表現で乗り越えよう、一矢報いようとするのがアーティスト、デヴィッド・ボウイである。

以前にも書いたことだが、人生最大の苦境といっていい「死」の危機に直面し、そこから「生」へと向かおうとする時、ボウイはキャリア中最も大胆かつ革新的な傑作(『ロウ』、『★』)を生み出している事実は驚嘆に値する。

その遺作となった『★』(Blackstar)のアルバム/表題曲タイトルについては、以前ネット等でエルヴィス・プレスリーの未発表曲 ”Black Star”からの影響が指摘されたことがあった。(The New York Times 2016年1月14日、ロッキング・オン 2021年1月号の記事より)

エルヴィスの"Black Star"は、彼が出演した1960年の西部劇映画『燃える平原児(原題 ”Flaming Star”)』サントラ表題曲の初期ヴァージョンで、当時は発表されなかったようだが、ボウイは少年時代のアイドルで、誕生日も同じエルヴィスのこの曲をやはり意識していたのではないかと思う。

その歌詞の内容は、人は誰しも肩越しに持っている”ブラックスター”を見た時、己の死期を悟る…といった、ドキッとさせられるものだが、私がこの曲を知った際、真っ先に連想したある随筆の一部分がある。


「死は前よりしも来たらず。かねて後ろに迫れり。」
                   (『徒然草』 第百五十五段より) 

※2022年8月11日 一部表現を修正




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