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映画 『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』 覚え書き

今春、日本でも劇場公開された映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』。 デヴィッド・ボウイ財団公認、ブレット・モーゲン監督・脚本・編集によるこのボウイ映画については、ずっと書き出せずにいたのだが、やはり今年中に書いておこうと思う。 生前ボウイが保管していたアーカイヴ映像と楽曲、(本人による)語り/インタビュー音声のみならず、彼がインスパイアされた映画・絵画といった他者アートも交えてコラージュした本映画は、監督曰く「デヴィッドのアートに対する考え方を反映したも

    • 追悼 ジェフ・ベック (特別篇)

      今年に入ってからというものの、音楽ファンには悲しい知らせが続いているが、 1月中旬に飛び込んできたジェフ・ベック突然の訃報には、本当に打ちのめされてしまった。 それから3ヶ月以上たった今も、そのショックを引きずっている。 奇しくもベックが死去した1月10日は、デヴィッド・ボウイ7回目の命日だった(ベックの盟友、ロッド・スチュワートの誕生日でもあるそうだ)のだが、現在公開中の映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』では、1973年7月3日のロンドン、ハマース

      • 追悼 ジェフ・ベック ①

        昨年リリースされたジェフ・ベックとジョニー・デップの共作アルバム『18』 のジャケットには、18歳の頃のふたりの姿が描かれている。 このカバー・イラストはジェフ・ベックの奥方サンドラによるものだが、 オフィシャル・バイオでのベック曰く「ジョニーと俺が一緒にプレイし始めたとき、俺たちの中にあった若々しさに満ちたスピリットとクリエイティヴィティに火がついたんだ。まるで18歳の頃に戻ったみたいだなってよく冗談を言い合っていたから、そのままそれをアルバム・タイトルにすることにしたの

        • 怒りをこめてふり返れ (特別篇)

          ” 「私が誰かわかっているね」と彼が言った” との歌い出しで始まるデヴィッド・ボウイ、1979年の楽曲 ”怒りをこめてふり返れ” (原題 "Look Back In Anger")は、冒頭に登場する天使と歌の「語り手」である主人公との対話 ”らしき”内容の歌詞となっている。 これについては、すでに海外の考察サイトや田中純さんの著書『デヴィッド・ボウイ 無を歌った男』でも指摘されているように、かつての ”世界を売った男” (1971年)の登場人物と関連のあるドッペルゲンガー

        映画 『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』 覚え書き

          Did you play at maximum volume?

          海外では先週から劇場公開が始まったデヴィッド・ボウイの公式ドキュメンタリー映画、"Moonage Daydream"(ブレット・モーゲン 脚本、監督)。 なぜか日本での公開は来年3月とのことだが(国内のIMAX上映館数が確保できなかったとでもいうのか)ここは気を取り直して、同時にストリーミング配信が開始された今作のサウンドトラック盤を聴いている。 長さ2時間以上、CD2枚組(日本では11月18日発売)のサントラ盤は、ボウイの主要曲を収めながらも一部ユニークな選曲がなされて

          Did you play at maximum volume?

          God only knows (what I'd be without you)

          先日、映画『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』を観た。 ブライアン・ウィルソンという、とてつもなく巨大な才能を持つアーティストの今に密着、その素顔を伝えるこのドキュメンタリー作品には、長年彼が抱えてきた深い孤独と悲しみ、そしてその先にある喜びがしっかり映し出されていた。 60年代のビーチ・ボーイズでの成功、その後の長い"失われた歳月”を経て、ソロとして奇跡の復活を果たすその波乱に満ちた半生は、改めてここでもクローズ・アップされるが、今年80才になった現在も精力的にツアー

          God only knows (what I'd be without you)

          Toll The Bell ①

          先日開催されたレコード・ストア・デイ2022では、毎年恒例となった感のあるデヴィッド・ボウイのニューリリースがふたつあった。 特に自分が注目していたのは、昨年リリースされた90年代ボックスの特別編的な『Brilliant Adventure EP』で、アルバム『アウトサイド』(1995年)期の初出レア音源が4曲収録されている。 (もうひとつは前出ボックスでオフィシャル初登場、今年1月に拡張版として単独リリースされた2001年の未発表作『TOY』の関連音源を収録した『TOY

          Toll The Bell ①

          ★ (Blackstar)

          今日、1月10日はデヴィッド・ボウイの命日。 早いもので彼がこの世を去って丸6年ということになる。 2016年以降、正月明けのこの時期は彼の誕生日(一昨日の1月8日)と命日が立て続けにやって来るのだが、やはりまだ今は彼の死を悼む気持ちの方が上回ってしまう。 そして、その6年前にリリースされた『★』の衝撃は今聴いても何ら薄れることはない。このアルバム全編を貫く(かつてない)異様なテンションは一体、何なのだろう。 立ちはだかる困難や逆境を表現で乗り越えよう、一矢報いようと

          ★ (Blackstar)

          90年代のデヴィッド・ボウイ

          先日、ボックス・セット『ブリリアント・アドヴェンチャー 1992-2001』が日本でもリリースされたデヴィッド・ボウイ。 自分はまだ入手していないが、ティン・マシーンでの活動を経て、ソロ・アーティストとして再始動~復調していく90年代ボウイを振り返るにあたり、このボックスは格好のアイテムとなりそうだ。 この時代のアルバムはどれもリアルタイムで接しているが、当時の評価を思い返すと、ソロ復帰作『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』(1993年)やベーシックなソングライティングに

          90年代のデヴィッド・ボウイ

          The Stars (Are Out Tonight)

          キース・リチャーズ(㊗78才)と同じく、本日が誕生日のブラッド・ピット(こちらは58才)は以前から好きなハリウッド俳優だが、近年映画プロデューサーとしても活躍する彼の演技は年々、円熟味を増していると思う。 個人的には、『セヴン』(1995年/ボウイも同年曲”ハーツ・フィルシー・レッスン”を提供)などのデヴィッド・フィンチャー監督とタッグを組んだ作品が特に好きだが、近作では2019年に相次いで日本公開された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タラン

          The Stars (Are Out Tonight)

          怒りをこめてふり返れ(ライヴ篇)

          デヴィッド・ボウイの "Look Back In Anger"(1979年曲) のステージ初披露は、発表から4年後の1983年だった。 そのシリアス・ムーンライト・ツアーでの演奏は当時の大ヒット・アルバム『レッツ・ダンス』のサウンドに合わせたホーン編曲がなされていたが、ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスとのダンス作品用にリメイクされた1988年の新ヴァージョンを挟み、ボウイが次にこの曲を取り上げたのが、彼がシーン前線に本格復帰した1995年のアウトサイド・ツアーである。

          怒りをこめてふり返れ(ライヴ篇)

          怒りをこめてふり返れ 1979/2017

          デヴィッド・ボウイ、アルバム『ロジャー』(1979年)収録の ”Look Back In Anger” は、3分間の長さながら雄大なスケールを感じさせるナンバーで、カルロス・アロマー(ギター)による中盤のソロ・パートや、デニス・デイヴィス(ドラムス)が鳴らすライド・シンバルのベルがこの曲に疾走感をもたらしている。 ボウイが最高のリズム・セクションを有していたこの時期、そのデイヴィス、アロマー、ジョージ・マーレイ(ベース)からなる ”DAMトリオ” の強靭なブラック・ミュージ

          怒りをこめてふり返れ 1979/2017

          怒りをこめてふり返れ 1988 ③

          デヴィッド・ボウイが1988年に新録音した“Look Back In Anger” は、同年7月のラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスとのパフォーマンス(ダンス)用にアレンジ/拡張された7分の長尺ヴァージョンとなっており、導入部と後半部にそれぞれ2分強の新たなパートが加えられている。 この前半/後半のインスト・パートは、翌年ティン・マシーンのツアーで数回演奏される”Now” にも流用されるのだが、近年のインタビュー発言やレファレンスを見た限り、楽曲のリアレンジを手掛けたのはギ

          怒りをこめてふり返れ 1988 ③

          怒りをこめてふり返れ 1988 ②

          1988年7月1日、ロンドンのドミニオン・シアターにてカナダの舞踏団、ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスと共演したデヴィッド・ボウイは、この日のためにアレンジした”Look Back In Anger”の新ヴァージョンを披露。    
その後重要な音楽パートナーとなるギタリスト、リーヴス・ガブレルスとの初ステージでもあった。 そして、それから2か月後の9月10日、このコラボレーションはニューヨークで再演。今回はそのニューヨークでのパフォーマンス について(演奏面を中心に)書

          怒りをこめてふり返れ 1988 ②

          怒りをこめてふり返れ 1988 ①

          日本では来月下旬にリリースされるデヴィッド・ボウイのボックス『ブリリアント・アドヴェンチャー 1992‐2001』は、彼のアーカイヴ・ボックス・シリーズの90年代編にあたる。 この時代のボウイにとって重要な存在だったのが、ティン・マシーン期からの右腕だったギタリストのリーヴス・ガブレルスで、本ボックス収録の『アウトサイド』(1995年)『アースリング』(1997年)『アワーズ』(1999年)に全面参加、後2作では共同プロデュースも務めている。 そのボウイとガブレルスの初コ

          怒りをこめてふり返れ 1988 ①

          D・ボウイ、”過程を見せない”美学とは?

          デヴィッド・ボウイがこの世を去ったのは2016年の1月10日。 あれから5年以上経った今もボウイに関する話題には事欠かず、彼の名を冠した作品のニューリリースは活発に行われ、他にも出版物をはじめとする各アイテムの発売、(過去出演作の再上映を含む)関連映画の公開も続いているようだ。 その中から今回は先月、京都国際映画祭2021で再見した写真家・鋤田正義さんのドキュメンタリー映画『SUKITA』(2018年作品)のある一部分を引用する形で書いてみたい。 (長年ボウイを撮り続け

          D・ボウイ、”過程を見せない”美学とは?