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私的に【これだけは聴け!】という「VOCALOID:2021年の10曲」を選んでみました(解説付き)

画像は「エンヴィーベイビー/Kanaria」のサムネイル。イラストはLAMさん。

前書き・諸注意

私的にこれだけは聴いて欲しい!「VOCALOID:2021年の10曲」を選んでみました。今年の顔と言えるような曲を選んだつもりです。また、選んだ10曲はニコニコ動画のマイリストに保存しています、一番下にリンクを貼っておくので良ければ再生してみてください。
主に今年ヒットした曲を中心に選んでいますが、再生回数を多い順に上から選んだわけではなく、筆者が私的に「これは聴いて欲しい!」と言う曲を集めたリストなので「これがあってなんであれがないの?」と言うことがあるかもしれませんが、どうかご理解ください!
(*また、本記事ではVOCALOIDと呼ぶのが適切なのか議論のあるCeVIO AIの合成音声ソフトもVOCALOIDとして一括しています。)

それでは曲の紹介に行きたいと思います!

1:エンヴィーベイビー/Kanaria 

-楽曲情報-

投稿日時:2021年2月13日

再生時間:2分15秒

歌唱:GUMI

-楽曲紹介-
KINGで大ヒットを飛ばした新たなるスターボカロP、Kanariaが1st ALBUM「KING」発表後初めて投稿した楽曲です。また、MARETU氏によるRemix動画を除くと「KING」の次作でもあります。
楽曲面の話に移ると、やはりKanariaさんのイメージであるピアノが真っ先に目に入ります。しかしイントロをよく観察するとメロディをギターで弾いていたり、金管楽器系の音が入っていたりと「KING」とは一風変わったサウンド作りを意識しているであろうことがわかります。
サビはGumi Englishの強みを活かした「ディスディスラヴァベイビー」のネイティブ発音と日本語の詩とをミックスした構成になっており、さらに「愛してる」の際のリズムの刻みなど、四つ打ちを殆ど崩さなかった「KING」とは一風変わったグルーヴ感を演出しています。
リズムを崩すという要素は2番Aメロでも遺憾なく発揮されており、全体を通して自然と音に"ノれる"リズミカルな音楽となっています。

2:キュートなカノジョ/syudou

-楽曲情報-

投稿日時:2021年2月20日

再生時間:2分11秒

歌唱:CeVIO AI 可不

-楽曲紹介-
2019年の「ビターチョコデコレーション」のヒットから一気にスター街道を駆け上がり、2020年にはプロセカに「ジャクポットサッドガール」を書き下ろす、実力派若手歌い手Adoさんのデビュー曲「うっせぇわ」を書き下ろしそれが大ヒットを巻き起こすなど、今一番勢いのあるボカロP、syudouさんが公式依頼によって書き下ろした一曲です。今年のCeVIO AI 可不の大流行は年初に大ヒットしたこの曲のおかげ、と言っても過言では無いでしょう。

3:マーシャルマキシマイザー/柊マグネタイト

-楽曲情報-

投稿日時:2021年8月21日

再生時間:2分45秒

歌唱:CeVIO AI 可不

-楽曲紹介-
当Noteの過去記事でも扱った大型ルーキー、柊マグネタイトさんによる楽曲です。
この曲の最大の特徴は"今のボカロっぽさ"と"過去のボカロっぽさ"の融合です。
イントロは今流行りのリリースカットピアノのメロディ、コードから始まり、1番Bメロ部分にはラップミュージックに影響を受けた早口パート、そしてそのすぐ後の「食べてすぐ寝て…」のパートではあえて話し言葉風の調教を施すというスパイスを加えています。
そしてサビは一昔前のボカロを思わせるEDM的なシンセ使いとキック使い、そしてその裏には(賛辞として使います)最ッ高に今っぽい絶対現実で弾くことは出来ない上下するリリースカットピアノ。
正に、新旧のボカロの良いところを融合した様な四つ打ちミュージックとなっています。

4:ロウワー/ぬゆり


-楽曲情報-

投稿日時:2021年11月11日

再生時間:3分50秒

歌唱:flower

-楽曲紹介-
「フラジール」「フィクサー」「命ばっかり」等、ボカロエレクトロスウィングの文脈で多数のヒットソングを打ち出し、YouTube1億回再生を誇る"ずっと真夜中でいいのに"の「秒針を噛む」のアレンジにも参加している大人気ボカロPであるぬゆり氏がプロセカへ書き下ろした楽曲です。
本楽曲もそういったボカロエレクトロスウィングの文脈にある曲ですが、リズムはスウィングではなくストレートな四つ打ちで、テンポの早さやエレクトロニックベースの存在感などもあわせて同氏の過去曲、「プロトディスコ」に近いスタイリッシュな曲調に仕上がっています。

5:シネマ/Ayase


-楽曲情報-

投稿日時:2021年5月8日

再生時間:3分28秒

歌唱:初音ミク

-楽曲紹介-
言わずと知れた大ヒットグループ、「YOASOBI」のコンポーザーであるAyase氏がプロセカに書き下ろした楽曲です。Ayase氏はYOASOBIやソロ名義での活動も続けつつコンスタントにボカロPとしての活動も続けてくださっており、VOCALOIDシーンの1ファンとして、これ以上ないくらいの感謝の念があります。彼のようなJ-POPでも活躍するアーティストがVOCALOIDを手放させないでいてくれるというのがありがたいですね。
さて、楽曲面でのお話に移るとまず真っ先に聞こえてくるのはやはりピアノの音です。正にAyase!といったピアノであると同時にクラシック音楽におけるピアノの伴奏にも取れるような一連のフレーズがこの曲のコアとなっています。
リズムはあまり重々しくないキック、そしてクラップ。メロディはlo-fi的なシンセサイザー。それらが組み合わさり非常にお洒落な雰囲気の曲となっています。それでいて今までのAyaseやYOASOBIのお洒落さともまた違う、新生Ayaseとも言うべきサウンドに仕上がっています。

6:パメラ/バルーン


-楽曲情報-

投稿日時:2021年10月15日

再生時間:3分16秒

歌唱:flower

-楽曲紹介-
2016〜17年にかけて「シャルル」等のヒットソングを多数生み出し、その後"須田景凪"名義でシンガーソングライターとして活動していたバルーンさんが久々に投稿したVOCALOID楽曲です。去年12月の「刹那の渦」以来1年弱ぶり、須田景凪としての活動を始めてからバルーンとして投稿した楽曲としては2曲目にあたります。
バルーンさんと言えば(個人的には)VOCAROCKというジャンルの正統継承者の様なイメージが強く、ロックが根底にあるボカロPさんがややスタイルを変えつつ生き残っているのとは対照的に生音のギターであったりロックというジャンルを大事にしているミュージシャンな気がします。本楽曲はそのイメージの通り生音のギターが特徴的な正統派ロックミュージックでありながらリズムは四つ打ちの打ち込みドラムであり、聴いていて気持ち良い音に仕上がっています。

7:トンデモワンダーズ/sasakure:UK


-楽曲情報-

投稿日時:2021年6月19日

再生時間:3分16秒

歌唱:初音ミク&KAITO

-楽曲紹介-
VOCALOID黎明期から常に最前線でシーンに携わり、その幅広い音楽性で多くのボカロPに影響を与えてきたsasakure:UKさんがプロセカへ書き下ろした楽曲です。
先程も言及した通りsasakureさんは非常に音楽性が幅広い方で、ピアノジャズやギターロックなど、さまざまな音楽を発表していますが、やはり彼の楽曲といえば一躍VOCALOIDシーンの最前線に躍り出るきっかけとなったヒットソング「ハロー、プロネット。」などに象徴されるレトロな音色のシンセサイザーを使った"シンセポップ"や"チップチューン"でしょう。
今回の「トンデモワンダーズ」は初期のsasakureさんを思わせるシンセポップを土台にしつつも後ろで鳴っているピアノなど過去になかった組み合わせの音楽に仕上がっており、懐かしさを感じつつも新鮮さも感じられる軽快なポップスとなっています。
個人的には2009年ごろのsasakureさんの要素が強いこの曲が2021年のVOCALOIDシーンに受け入れられた、という事実が何より嬉しいです。

8:神っぽいな/ピノキオピー


-楽曲情報-

投稿日時:2021年9月17日

再生時間:3分24秒

歌唱:初音ミク

-楽曲紹介-
sasakureさん同様、2010年頃から長らくVOCALOIDシーンで活躍しているボカロP、ピノキオピーさんによる楽曲です。自分で絵も描いてらっしゃるボカロPさんで、ご自身で絵も曲も手掛けている作品としては今年3月の「リアルにぶっ飛ばす」以来約半年ぶりとなります。
初期の頃のピノキオピーさんはハイテンポでゴリゴリのギターロックを根幹としたいかにもVOCAROCK然とした曲を作る方でしたが、徐々に(個人的には2017年あたりから)音楽性が若干変わり始め、現在はロックを土台としつつも打ち込み部分も多いポップスに近い音楽を作っています。また、曲調の変化に伴って歌詞も風刺的な意味合いを持つものが多くなり、本楽曲「神っぽいな」はその文脈における楽曲として一種完成形とも呼べる独特の音楽に仕上がっています。

9:ヴァンパイア/DECO*27


-楽曲情報-

投稿日時:2021年3月9日

再生時間:3分00秒

歌唱:初音ミク

-楽曲紹介-
9曲目は、3月9日(ミクの日)投稿、今年のボカロシーンを語る上で決して避けては通れない大ヒット曲、「ヴァンパイア」です。歌ってみたが多数投稿され、横顔サムネのパロディも非常に流行しました。
作詞作曲はDECO*27。2016の「ゴーストルール」、2019の「乙女解剖」とシーンを牽引する様な大ヒットを何度も生み出してきた、言わずと知れたボカロ界最大のヒットメーカーです。
楽曲面で言及したいのは、やはりずば抜けたキャッチーさです。
歌詞の面では冒頭・サビで繰り返される「あたしヴァンパイア いいの?吸っちゃっていいの?」、「まだ絶対いけるよ」等の耳に残るフレーズであったり、「だれかとい"れば"」「それはたら"れば"」「離れてい"ても"」「感じてる"エモ"」といった小気味よい押韻が多用されている点が特徴的です。
音楽の面ではギターを土台としながらも、イントロでマリンバか木琴のような不思議な音のする音源をメロディに使ったり、一番Bメロでのクラップや裏から聞こえるサウンドエフェクト(ポヨン、ピキピィというやつ)であったりと、ギターの土台の元でかなり遊びを持った曲作りをしている、と言う点が印象的でした。
こういった詩・曲両方の遊びによって産まれたものこそ万人を惹きつけ離さない「ヴァンパイア」のキャッチーさなのでしょう。

10:フォニィ/ツミキ


-楽曲情報-

投稿日時:2021年6月5日

再生時間:3分08秒

歌唱:CeVIO AI 可不

-楽曲紹介-
トリを飾る10曲目は、ツミキさんの「フォニィ」です。
以前からリリースカットピアノとロックギター、シンセサイザーとを融合させた独創的なスタイルでコアなファンを多く獲得していたツミキさんがCeVIO AI 可不を用いて満を辞して投稿した一曲です。
冒頭はピアノオンリーの中で歌い出すところから始まりますが、「この世で造花より綺麗な花はないわ」という歌い出しからして非凡なオーラを醸し出しています。そしてジェントリーな歌パートが終わったと思えばすぐにEDM的な高音圧重低音が鳴り響き、訳もわからぬままピアノ・ベース・声ネタなどのウワモノで構成された2弾目のイントロとも呼ぶべき新たなパートへと突入します。
その後のAメロではピアノとキックのみの静寂、かと思えばAダッシュメロではグルーヴィーなシンセベースに空間を活かしたクラップを展開したりと「そう来るか!?」と常に思わされる様な物凄い音作りが展開されていきます。先のEDM的パートと併せて、正にツミキ節というか、ツミキさんにしか出来ない音楽が進行しています。
そして迎えたサビ。ボーカルの「かん…」が半拍早く無音な部分に収まり、その後に続く言葉の「たんな事もわからないわ!」でシンセサイザーによる猛烈なサビが展開されます。サビより半拍早くボーカルが入る曲は数あれど、ここまでハマっている曲はなかなかありません。
その強烈なサビとは打って変わって歌詞は「簡単なことも解らないわ」「あたしってなんだっけ」といった繊細で切なさを感じるもので、特にサビのラストの「フォニィ フォニィ フォニィ」の絶叫はまるで魂の叫びかのような気迫があります。個人的に詩ではなく叫びでここまで感情を動かされたのはVOCALOID(合成音声)を使用した楽曲では初めてでした。
2番Aメロでは808カウベルを使っていたりと、ツミキさんの前作「レゾンデイトル・カレイドスコープ」での時報の音を使っていたのを連想される遊びもあり、全く飽きずに気付けばラスサビまで到達しています。
そしてラスサビが終わり、ラストは冒頭に戻るピアノ伴奏のみの歌パート。「造花だけがだけが知っている秘密のフォニィ」の締めまで、あまりにも美しく、そして全く無駄の無い3分10秒が味わえます。


あとがき:2021年のボカロシーンを振り返って

ここまで長々と書いて来ましたが、いかがだったでしょうか。ここまでで本編は終わりです。ここからは今年のボカロシーンを振り返ってのあとがきを少し書こうかと思います。
まず今年のボカロ10選の歌唱VOCALOIDの割合ですが、【初音ミク:4曲・CeVIO AI 可不:3曲・flower:2曲・GUMI:1曲・KAITO:1曲】となりました。KAITOは初音ミクとのデュエットです。
やはり、こうして見ると今年のCeVIO AI 可不の勢いは凄まじかったですね。そのCeVIO AI 可不ブームの火付け役となったのは、3月のCeVIO AI 可不発売前に公式デモソングとして投稿されたSyudouの「キュートなカノジョ」の大ヒットによるものが大きいでしょう。2020年に「うっせぇわ(Ado)」の大ヒットによりJ-POPアーティストとしても実力を示したSyudouが自分の古畑であるボカロシーンへと戻って来てボカロPとしての代表作を出した、という格好です。この図式はYOASOBIとしてJ-POPで活躍しつつボカロシーンにも度々戻ってヒット作を出しているAyaseにも通じるものがあります。
また、10選のうちの3曲がプロセカへ向けて新規に書き下ろされた楽曲です。2021年のプロジェクトセカイはソーシャルゲーム部分に興味がないというボカロシーンの人間にも様々な話題を提供していたという印象です。本記事では触れていませんが、プロジェクトセカイが2021年のボカロシーンに与えた影響として「過去の名曲」の再視聴を促した事も挙げられます。新曲書き下ろしをメインとしつつもボカロ界隈全体の活性化が出来ていたのではないでしょうか。
総括して、2021年のVOCALOIDシーンは活性化の年だったのではないか、と思います。数年前の初音ミクに対するflowerと同様の新たなVOCALOIDの台頭、他界隈で実力を示したアーティストによるVOCALOID曲の投稿、プロジェクトセカイによる新曲書き下ろしと旧譜の再注目、他にもボカコレなど公式による新人発掘・クリエイター応援の場の提供と言った様々な活性化が2021年にはありました。
2022年のVOCALOIDシーンも明るい話題で包まれる事を祈ってこの記事を公開します。みなさん、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

ニコニコ動画マイリスト(外部リンク)




(Niconico)私選で「VOCALOID:2021年の10曲」 https://nico.ms/mylist/72279811?ref=nicoiphone_other


(NicoBox)私選で「VOCALOID:2021年の10曲」 https://www.nicobox.jp/share?mylist=72279811

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