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何でもかんでもリッチブラックに含めないで、定義をちゃんと決めれば、いろいろスッキリするんじゃないかな、って話

いろんな(印刷会社も含めた)ページでいろんな説明されているコレですが、いろんなものが混ざりすぎててどうも気持ち悪い。いろんな。

ぼんやりしたものをはっきりさせるため、狭義のリッチブラックを心の中だけでも決めちゃえばいいんじゃないかなと思いました。これって、やり方の話ではなく言葉の定義の話なんだし、まぁ荒れることはないだろう……ってああ、ちなみに「定義」がそこかしこに多数あることは承知してます。

こういうのはいかが?

さて。こんな定義はどうでしょう。
リッチブラックとは、濃い黒、という色のこと…というよりも

K100%に「意図して」表情を付ける技法のこと

これでようやく、この色にする意味が出てくると思うんですよ。また、意図しないものやちょっとズレてるものを排除して、別の名前を付けられる。その方が、クリエイターらしくないかな?と思ってさ。

この定義で説明すると以下のようになります。

リッチブラックとは


墨ベタに表情を付ける技法なのだから、K(墨)は必ず100%であること。
足すCMYの%はお好みで。それこそ、どうしたいのか、の意図をもって設定する。

40/30/30とか、20/10/10でも十分黒いと思うけども(※1)

また、印刷版を使って効果を狙うデザイン技法なのだから、データだけでどうこうでなく、刷りまで目が行ってないといけないですよね。仕上がりを評価できる経験値も知識も必要、と。

定義から外そう。そうでないCMYK値のもの・RGBブラックや400%

CMYKで言うRGBブラックとは、元がRGB黒で、CMYK分解されて数値が割られたもの。画像の一番黒い所をCMYKにしたときになる数値。例えばこういうのです。

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これをリッチブラックと一緒にしてはいけないんじゃないかと思うんですよね。

CMYK合計400%の黒も同じ。あれは(オフセット以外で意図してやってるのでなければ)勘違いの産物。レジストレーションカラー(トンボ専用。CMYKそれぞれでベタの線でなきゃいけないでしょ)をうっかり指定しちゃったとか、リッチブラックと聞いて!でやっちゃったとかそういうのです。

こういうやつら、RGBブラック割れとか、4色ベタとかを、リッチブラックと呼ばないようにしませんか。

これらは、意図して設計したものじゃない、じゃないですか。ミスですよ、ミス。間違いでできたこの色をリッチブラックなんて呼んじゃったら、リッチブラックに失礼だ、と思います。

自動墨ノセ回避テクをリッチブラックというのも外そうよ

印刷会社のRIP(データを2400ppiくらいにラスタライズして、網点かける強めのPC。雑な説明なのは長くなるからなので許して)の設定で、K100%のオブジェクトをオーバープリント(ノセ)に変換してやることを自動墨ノセ、と言います。

Illustrator等でオーバープリントプレビューして、左のように見えてても、刷ったら右のように透けてた、なんてことがよくあります。

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オーバープリントのチェックに関わらず、対象のカラーはこうされます。印刷会社によって、また仕事内容によってこの処理をする、しないが変わります。なぁんでこういうことするのかと言うと、分版プレビューしたりオーバープリントのチェックをきっちりやってるデータなんてめったに入稿されないからです。とりあえずスミはノセとけば、版ズレしても大丈夫だから。 

※自分はやってるよ、って方は印刷会社が毎日どれだけの有象無象から大量のデータ受けて処理してるのかちょっと考えてあげてください。

K100以外は通常、強制ノセの対象にはなりません。なので、K99%にするか、K100+C1とかにすれば自動墨ノセされずにヌキのままになります。つまり、上の左のまま刷られる。

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この効果を狙って、CMY40とか乗せる…というのはなんか違う。

リッチブラックは結果的に自動墨ノセにならないけれど、結果であってさそれは。
K100に数パーセント乗せてもリッチにはならないでしょう?

このK99とかK100C1とかは自動墨ノセ回避のバッドノウハウであって、これがリッチブラック!とは…言えないよね。ね。

意図したものと、ミスを分けよう

「リッチブラック」なぁんて格好いい言葉は、意図して格好良くしたものにこそふさわしい。

ミスで似た感じになっちゃったものは別の表現を使いませんか?

現場からは以上です。


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※1)リッチブラックの技法は、上手い印刷があってこそ

カラーのオフセット印刷の刷り順は、K-C-M-Y、です。墨ノセ言っても乗せちゃいねぇんだ。それはそれとして、

上手い印刷なら、墨はそう薄くない

ってことも知っておきたいですね。

x25くらいのルーペで覗いてみて、ベタにしたはずなのに不規則に小さい穴が開いてたり、やけに濃淡(膜厚)にムラがあるなぁ、って刷りは下手な刷りです。そういうスミにいくらCMYを乗せても黒くならないばかりか、光沢を失ってどんどん惨めな黒になったりします。リッチブラックの合計値がやたら高い所は下手な所とばかり付き合ってるのではないか、ってのが持論(半分ネタだけど)。

リッチブラックは版を使った印刷の技法ですから、当然、印刷もちゃんとしたとこで、「これくらいでやればこうなる」が分かってる所とでないと仕上がりもつまんないよ、ってことですね。データだけで完結する話じゃない、ってことです。

リッチブラックにする意味は

リッチブラックにはリスクもあります。主に、版ズレ。「最近(いつ?)の印刷は精度が高いから」云々聞きますが、精度が高くて得するのは見当合わせ(CMYKの位置合わせ)の時間が短縮できるオペであって、結局はまだヒトが「精度」を担ってます。だからそこらの刷り物よく見れば結構な頻度でズレてるの発見できるはずですよ。特にYが。

あと普通のオフセット印刷では400%刷ったって紙がベコベコになったりはしません。0.4〜1.5㎛が4つ重なったって紙厚0.1mm(100㎛)をベコベコにできゃしません。インキのタックで無理矢理引っ張られて歪むことはあるけどTAC値関係無い。

そういったリスクを負ってでも使うべき技法なのかは、十分検討する必要があるかと思います。


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