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バンドマンに恋煩い【5】

iyamori(スナック)

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⚠️注意⚠️【バンドマンに恋煩い4】からの続きです。先に【バンドマンに恋煩い1、2、3、4】(長くてスミマセン)を読んでからこちらを読んでいただけませんかと思います。よろしくお願いします🙇‍♀️

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7月。
横浜市内のいつもヒマなスナックの店内。

夜も23:00は少し過ぎたあたりでママが、「ごめんなさいね〜」と閉店をトールちゃんとガヤ2人に告げていた。

yamoは結局、今夜この後のアフターも、明日の朝食でもランチでも良いよ何か今後に繋げる何かのアクションが起こせずに、ただ「お客様お帰りよ〜」とママに言われてバックヤードから急いで出た。
既に階段を下っているトールちゃんと目が合ったけれど、「ピーチさんによろしく言ってください」と、爽やかににこやかに手を振られて去られてしまった。じゃ!!と。

アリガトウゴザイマシタと手を振った。力無く振った。

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閉店の少し前。

ミスチルのトゥモロウネバーノウズは2回断られた。
シーソーゲームでもいいよ。
西へ東へは?
あ!じゃあ米津玄師のレモンは?

トールちゃんは無言で目も合わさずにただ首を横に振る。

ホント多分この人根は真面目なんだろうな〜と、yamoはニヤニヤしながらその横顔を眺めていた。この場にマッチしたきちんと歌える曲を選択中。

好きなの歌えばいいんじゃん?
木更津のラーメン屋さんで、トールちゃんのお友達が確かトールちゃんがジュリーを歌うと女達がみんな惚れちゃうって言ってたよ(笑)。yamoにはしきりにチューブ好き?って聞いてたよ?チューブも上手なんでしょ?

え?俺が?チューブ好きか?って聞いたの?

笑笑 そうだよ。
チュウウ〜ってキスする口で、ウブ好き?って聞いてくるから、ドキドキさせられてさ〜(笑)それも可笑しくて可笑しくてさ。笑ったな〜。でもまあ覚えていないならもういいよそこは。笑笑

なんでもいいから好きなの歌いなさいよと言うyamoに、クククっと軽く笑みを浮かべつつ周りを見ろよと言う。トールちゃん的にはチューブって雰囲気ではないし、ジュリーなんて論外な空気感らしい。

周り?ぷぷぷ。へえええ〜〜。デジャブ〜〜。理解不能〜。

周りって、ベロベロに酔っ払って上機嫌のガヤ2人と、気の無い拍手に終始してつまんなそうにしているママ?確かにガヤ2人は若いからね。ジュリーは古いか。

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以前、yamoがここのこのスナックで働きだした本当に最初の頃。4月の話し。

yamoが、自分がこんなにポンコツだと思ったことが無いくらいポンコツだと思っていた頃。

焼酎のグラスとウィスキーのグラスが違うと怒られ、水割りの作り方が違うと怒られ、お湯割りのお湯が先だ焼酎が先だで怒られる。不機嫌になっていくお客さん。マドラーの回し方に怒られ、灰皿を替えるタイミングが分からず怒られ、おしぼりを渡すタイミング、乾き物のゴミ、結露したグラス、カラオケ機器の操作手順、お客さんと話す時の相槌にウンウンはダメだと怒られた。でもお客さんの正面に座らされて、さあ話せと圧がかかる。これは苦しかった。
更には歌いたくないカラオケを歌えと言われる。
NOは絶対ダメ。
下手なので、、は理由にはならないと知ったこの時点で、なぜyamoはこのバイトを辞めなかったのだろうか。

謎。魔が差していた。(今思えば完全に導かれていたんだけどね👍)イヤ、ただただ生活の為です 笑
(事有るごとに愚痴を聞いて、ママとマスター対策の話しをしてくれたピーチさんの存在は大きかった。ありがとうございます)

その時に、ママとマスターに言われて理解に1番苦慮した文言が、「お客さんの気持ちになれば分かる」「お客さんの気持ちになって、してほしい事をしてあげる」だった。

、、、なつかしいな。

yamoはまだまだですな。
ちょっとやっぱりよくわかんない 笑


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星屑のステージは?チェッカーズ。

いいね👍
良かった。かましちゃいなさい🎶🎵

♪♫🎶何を歌っても上手いな〜と思って拍手喝采した。
ホントに最高!!
フミヤなんかより全然カッコいい〜〜トールちゃ〜〜ん🎶🎵って感じ 笑笑

その後も桑田佳祐と桜井和寿の奇跡の地球(ホシ)をガヤ達と楽しそうに歌っていた。
もうガヤ2人はロレツもおかしいことになっていたので、歌そのものはほぼトールちゃんが歌い切っていたけど、それはそれで実に楽しそうだった。

そこへ、ママに「もうそろそろ閉める準備して」と、声をかけられて一気に現実に引き戻される。23:00を回ろうとしていた。

ハイ。

奇跡のホシを歌い終わったトールちゃんに、スツールから立ち上がってねえと顔を寄せられる。

yamoはカウンターの内側から、立ち上がっているトールちゃんに耳を寄せる。
ん?良い笑顔だ。


ねえ、おれ、きょうきてよかった




(ダメだ。思い出すとまた苦しい)

yamoの耳元に、改めてわざわざ「来て良かった」と言った。ハッキリとした発声で、キチンとyamoに聞こえるようにと、意識して言っているように感じた。自意識過剰だろうか。興奮しているようだった。

返す返すも、なぜこの瞬間に、ホントに〜?わあ〜アリガトウ嬉しい〜良かったよ〜というお礼と感想の言葉と一緒に、ねえこの後もう一件行かない?少し待っててもらわなきゃならないけど、、、と、言えなかったのかと思う。
トールちゃんが泊まる予定のホテルのバーでも有ればそこでも良かったじゃないか。
「行くから待っててくれ」と。
後で分かったが、そこのスナックの3件先にはパブも有った。ここでも良かったなと思っていた。後で。翌日。はあああ〜〜、、ため息。
夜遅くまでやってる店がとにかくyamoには思いつかなかった。

なんならyamoんちで飲む?ということも実際考えていたけれど、それはハードルがだいぶ高いでしょ。唐突すぎるでしょ。それを、ただ「来て良かった」と言ってくれただけのバンドマンに、どう?ねえ、この後うち来てもう少し飲まない(yamoは飲まないけど)って、それはどう考えてもyamoががっついててスマートじゃないでしょ。

とにかくね、、yamoはそういうの全然経験が無くて分からないの。
で、がっついてるって思われるのはイヤなの。一貫してシラフだしね。これが1番の問題かもなとも思う。飲んで酔いたい人は、飲まない人と付き合ってもつまらないでしょ。根本的な相性の問題。

結果ね、
会計を済ませてもらって、アリガトウゴザイマシタって言って帰らせちゃったのよ。

てか、もうママがどんどん「ハイハイ閉店閉店〜」という空気感だった。
それに逆らって、ねえねえねえ〜〜待って待って〜っとは、どうしても憚られた。

yamoがバックヤードで洗い物をしていて、ママから「お客様お帰りよ〜」って声がかかって慌てて出てった時には、既にトールちゃんは階段を下っていた。



完全にチャンスを逸した。

yamoは飲み屋でバイトはしてたって、お客さんの気持ちが1番分からなくて苦慮している。で、しかも、yamoは飲み会は基本的に一次会で帰っちゃう人。全員を残して1人で、じゃ!と言って帰っちゃう人なの。自分は飲まないから、トールちゃんがもっと飲みたいはずだ!もっと歌いたいはずだ!という発想も無かった。そもそもトールちゃんはyamoだけのために来たわけじゃない。メッセンジャーでピーチさんに誘われて、yamoの誕生日会だ飲もうぜ!ってなって、いいですね👍行きます!になった。ただ単にサプライズ的なやつが好きなのだろうなとも思う。そこに一役関われるのは嫌いじゃない役回りなのだろうと思う。基本的にパリピ感は元々好きなんでしょ。でもね、最初の取っ掛かりはピーチさんが早い段階で動いたこと。アイツの名前名前名前??なんていったっけ〜〜?なんてfacebookで検索して探したのがきっかけ。気に入った人とは(男性女性問わず)、すぐ次に繋げようとする。それはピーチさんの生活習慣のようなもので、極自然にそれをやれちゃう人なの。そのピーチさんに横浜で飲むぞ!言われてハイ!って請け負ったのはトールちゃん。たまたまyamoは、誰にも内緒でトールちゃんに木更津の夜から熱を上げていただけ。この段階ではトールちゃんは勿論、ピーチさんだってyamoの恋心なんて想像もしていない。2人とも木更津の夜のことはほぼほぼ全部忘れていたし。


でも、
運命の輪は重たい圧を込めて回り出した。
大宇宙のすごい大きな力で、絶対動かないと思っていた重い石が無理矢理動いて回されだす。
ずずずずずっと音が聞こえる気さえする。

***

「yamoのスナック行くよ!土曜日ね。」
「OK🙆‍♀️です。ホントに来たらすごいですね。ピーチさんもスミマセンありがとうございます。嬉しいです」

facebookでトールだ!と、ピーチさんが見つけて、居た居た!見つけた!という知らせから1日ないし2日の間に話しはまとまった。

途中、yamoがトールちゃんにお熱だということは、割と早い段階でピーチさんにはバレた。言葉の端端で疑われ、「おや?yamoはなに?結構好きなの?」という展開になっていた。なんだかんだでyamoは正直者なのだ。顔にも出やすい。色々。

とは言え、トールちゃんの朝食時の塩対応で終わった感があるとも説明した。

「ええ?でもさ〜簡単にOKしたよ。アイツも楽しかったのかな〜また一緒に飲みたいって思ってた〜?横浜だよ〜?」笑
「どうですかね〜?横浜がどれくらい遠いとか理解してないとか?笑
でも誘われて乗り気だったってことは決してピーチさんもyamoのことも嫌いじゃないってことですよね?」
「わかんな〜〜い。嫌いだったらどうとでも言って断るでしょ。そもそもメッセンジャーで折り返しの電話はしてこないでしょ。しかも夜中だよ」

で、ピーチさんは、そこからyamoとトールちゃんをくっつけたいでっかいキューピッドとして俄然張り切り出した。張り切り出してくれた?

で、yamoはyamoのバイト先に(横浜)までトールちゃんが来るとも期待していなかった。ウソ。期待はしていた。本当に来たら本当に本当にすご〜〜いと思っていた。でもどっか深いところで「無い無い」と思うようにしていたというのも否めない。

そしたら本当に来たのだ。

横浜で飲むぞ!の前々日に肝心のピーチさんがキャンセルしてきたのに。だ。

「ゴメン!高齢の母がコロナで救急搬送」ということだった。
ピーチさんは湯河原の人なので、そりゃ横浜で飲んでる場合じゃない事態だ。
とは言え、じゃあトールちゃんもキャンセルかな?と思いきや、1人でも来た。

「来たよ〜」と、扇子をパタつかせて、来た。

トールちゃんは真面目だし誠実な人なのかな。約束は守る人なんだろうな。
と、yamoは思っていた。

***

店の片付けを終えて、「今日はyamoちゃんも疲れたでしょ?新規様ばっかりで大変だったわね。お疲れお疲れ」と、言うママにタクシーでyamoは自宅に送ってもらった。
もう既に24:00になろうかという時間。

帰宅後、居ても立ってもいられずトールちゃんのLINEにメッセージを送ってみる。
『もう寝ちゃった?』

すぐに返信が来た。

『ホテルの喫煙コーナーで一服してます。寝ます。おやすみなさい💤』


冷たい、、と感じていた。
完全にシャッターを閉められてしまったという印象を持った。

この時のトールちゃんの心情を誰か想像出来る人が居るならyamoに教えてほしい。

『明日は?すぐに帰りたい?スカイツリーとか見に行かない?』

『人が多いでしょ?夏休みでしょ』

『ですよね。スミマセン。おやすみなさい。ありがとうございました』


でっっかいキューピッドのピーチさんに、お母様具合どうですか?と聞きつつも、この旨を報告してみる。

『笑笑 スカイツリー??ありえない』
『なんで次の場所用意しておかなかったのよーー、千葉から来てるんだよ?お礼とか考えないの?もらうばっかり?店のお客さんが欲しかったの?』
『木更津でもさ〜確かあんたが解散させてるんだよね?酔っ払ってみんなでどこかでもう少しもう少しって盛り上がっていたところをさ?信じられない。あんたこれで2度下手をこいてるんだよ。トールに』

辛辣。ぐっさぐっさとソードが刺さってyamoのメンタルはボロボロになった。


お礼か。
お礼な。

お礼?

確かにお礼という感覚は欠落していた。
千葉から来ている、、か。確かにな。


『yamoは自分のことクレオパトラか楊貴妃だとでも思ってんでしょ。私を誘ってごらん的なさ〜感じあるんでしょう?』


断じてそんなことは思っていないし、そう思えていたなら、一気に体重を減らすほど煩ったりしない。もっと簡単にどうでも良くなっている。イヤ、わからんが。クレオパトラになったことが無いので。

スカイツリーはバカだとyamoも分かっていた。
でもスカイツリーがバカでも、男の方にも気が有れば、「笑 スカイツリーは無いけどどっかでコーヒーでも飲む?」という展開になるだろうとyamoは思っていた。
でもそうはならなかった。故に、トールちゃんはyamoに気が無いのだ。

とは言え、お礼という概念も無かった。

完全にがっついたままに見える状況だ。

ピーチさんから、「とにかくそのまま千葉に帰らせるな!」(ピーチさんはピーチさんなりに一生懸命)という指令を受けて、なるほどお礼はしなきゃいけないのかもしれないと、『昨夜はありがとうございました。帰ってしまう前にランチでもコーヒーだけでもいかがですか?ご馳走させてください』と送ってみる。

『いえ、気にしないでください。大丈夫です』

『迷惑ですか?』

『ピーチさんが居る時にまた飲みましょう』


***

ちーーん


おわた。

完全に終わった。



***


いかがだったでしょうか。

yamoは、この夏のラオンズゲートがオープンしている時期とお盆の時期に、まさに大宇宙とあの世から色々と試されていて、お金のこと、両親のこと、姉とのこと、ルーツについての感情に右往左往させられていました。

きつかったですね〜。

感情で右往左往というのはお金というか仕事ですね。占いの仕事をもっともっとやりたくて今すごく頑張っている最中で、でも中々そう簡単ではなくて、そこに父が亡くなって相続の問題が出てきまして、忘れていた過去の想いや確執が意識上に上がってくるんですね。例えばそこに集中するしかない状態で、固執して執着して姉や義母とやり合ってたらきっとyamoはまた頑なに塞いで真っ暗闇に堕ちていただろうな〜〜。

お酒を飲んで酔ってしまえるなら酔いたいと強く思いました。

陽気に笑って笑って笑って全部忘れてしまえるなら本当にそうなりたい。

スナックなんかで働くようになったのも、Liveイベントに行くようになったのも、ピーチさんやトールちゃんの登場も私にとっては大宇宙からの魔法。全部繋がっている。

アブラカダブラ〜〜チチンプイプイ🎶🎵
yamoちゃんはしゃいでしまいなさ〜〜い🎵
暗い所からは出てきて、もっとワクワクしなさい。ドキドキしなさい💓ふふふ

あの時期はyamoにはその魔法が必要だったんだと思う。
一心不乱に誰かに心と頭を盗られていないと、きっと良くないことを考えていたんじゃないかな〜と思ったりする。

本当に誰でも良い。
yamoに魔法をかけてyamoをこの時期の悪い執着から目を逸らすことをしてくれた誰か。ありがとうございます♪

本当に楽しかった。
終わっちゃったけどね。楽しかったよ本当に。

でも忘れちゃうには惜しい出来事だったので、ここに『明明(あかあか)』と記しておくこととします。

***終わり***



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