メディアの話152 メタバースとバイオフィリアと場所と

「ほとんどの民族は、水辺にあって樹林草原が見おろせる突出部を好んで住みかとする。そのような高みには権力を持ち裕福な者の住居や墓、寺院、議事堂、民族の栄光を記念する碑がよく立っているものだ」

(生命の多様性 EOウィルソン)

「人間は、住む場所を自由に選べるときはいつでも、近くに川や湖、海などが見え、木々が点在する開けた場所に好んで住む」

(バイオフィリア EOウィルソン)

アフリカの大地溝帯の台地の縁のサバンナで進化した、150人で暮らす狩猟採集の類人猿の「本性」は、30万年前からずっと一緒である。

なぜこの場所が好きかというと「天気が悪くても大雨が降っても流されない安定した住まい」と「源流部の綺麗な水」と「たくさんの植物の実がごちそうになる」のと「流域の水辺に獲物が集まってくる」のと、「湿地をせきとめれば田圃や農地になる」のと、「下流部の沼地や干潟は楽して魚介類が手に入る」のと、「その先の海や川を使えば、他の地域と交流ができる」から、である。いいとこだらけ、である。

メタバースがどんどん発達して「大脳皮質」でこなせる仕事の大半が、VR空間に移っちゃう(間違いなく移る)と、以上の条件を満たした「場所」が唯一無二の希少価値となり、争奪戦となる、というのが『国道16号線』でも記した、私の一応仮説であり、予言である。

たとえば、世界でいちばん金を持っているひとが経営している、アマゾンのこの本社のデザインが、どんなにお金を持っていても人間の本性は狩猟採集の時代から、まったく変わっていないことを示している。

湾岸の高層マンションは、水辺を見下ろす半島のてっぺんの景色を買っている、と思えばいい。

アメリカの大金持ちの邸宅は、このイーロンマスクのおうちの数々がそうであるように、一回も泳がないプールがたいていしつらえてある。泳ぎたいのじゃなく、おそらく「水辺のある景色」を本能が欲しているからである。イーロンマスクは、プレハブレンタルに暮らしを変えるらしいけど、ポイントはどこに住むか、のほうだと思う。

https://www.businessinsider.jp/post-246370

東京近郊でいうと、房総半島や三浦半島、伊豆半島の小流域地形は、さらに人気が高くなる。利根川や霞ヶ浦の江戸崎あたりも人気が高くなるはずである。

メタバースの裏ですすむのは、「じゃ、リアルなわたしはどこに住むの?」である。

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