メディアの話。飛行機とペットと。
たった1月前のニュースなのに、2月2週目にしてSNS上でもメディア上でもほとんど見かけなくなってしまった羽田における飛行機事故。
あの飛行機事故で、なぜかクローズアップされたのが飛行機に置き去りにされたペットの話だった。
かわいそうに。
と、同情する。
可哀想だと思うし、飼い主も辛いだろう。
当事者の感情に寄り添ってあげることはとっても重要だ。
ただし、それだけでいい。
その後の議論は実はいらないし、意味がなかった。
というのも、飛行機が炎上し、さらにペットを見捨てて逃げないといけないというリスクそのものが、天文学的に低い確率の話なので、予測する意味が、事実上ないからである。
ペットに関する事故で言うならば、ペットを飛行機に乗せて、その飛行機が炎上してペットが焼け死ぬ可能性よりも、自宅で飼っていたハムスターが逃げ出して目の前の道路で野良猫に食べられたり、一緒に散歩していた犬が自動車に轢かれちゃったり、家猫が逃げ出して行方不明になったり、ペットホテルで急変して死んだり、知り合いに預けたら逃げ出したりするリスクの方が(以上全ては私の親族及び直接の友人の実体験である)、確率的にはるかに高いはずである。
自宅も頭上に隕石が落ちてきたらその時ペットを置いて逃げ出すかどうか、という議論をする意味があまりないのと同じである。
だから、この「亡くなったペットがかわいそう」という感情の問題と、ペットを機内持ち込みできるようにしたらどうか、という提案と、機内持ち込みしても飛行機が炎上したらどうせ置いてかないといけないんじゃないのという指摘、の3つの話は、全てがずれている。
ペット機内持ち込みしたいというニーズがあり、エコノミーでは当然あり得ないので、ファーストやビジネスで、対価を払って載せるサービス。金になるんだったら別にやってもいい。
その話と、飛行機燃えたら見捨てないといけない、という議論は、結局分けないといけないんだけど、それはあまりに確率論的に低すぎる話である。
ペット可哀想派と、ペット見捨てないとダメ派両方が、想定しても意味がない低い確率の状況を、前提として、議論しちゃっている。
炎上したら、ペットを置いて逃げないといけないだろう。
その心配をする前に、普段からペットの予防接種や、リードをきちんとしておくとか、窓を開けっぱなしにしないって方が、はるかにペットを殺さないために重要である。
おそらくペットを実際に飼っている人(私もだ)は当然上記のことをわかっているはず。
わかってて燃やしているメディアと、わからないけど燃やして数字が稼げて喜んでいるメディアと。ま、この辺りがよろしくない。
そしてこの問題は、メディア論的課題でもある。
有名タレントが出てきて、テレビ番組や雑誌で取り上げて、ないはずの問題が、巨大化する。火のないところで「炎上」する。
マスメディアが愚かだと起きる、火種のない炎上問題。
議論すべきは、空港でああいう事故がゼロになるにはどうすればいいか、だけである。
その意味で、ペットかわいそう問題のニュース規模に比べ、事故で亡くなられた海保の方々へのいたわり言葉と報道が相対的にあまりに少なかった。
マスメディアが特定少数のSNS炎上ばかりをみて、事件そのものを何もみていない。そっちはもっと問題である。
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