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メディアの話その7。丸山古墳とメディア。

メディアの話を書き始めて、いちばんおおもとの疑問を書くのを忘れていた。

「メディア」の定義である。

ここからは、私個人の「感覚」で一度、「メディア」のイメージを定義してみる。おそらく人によって違うだろうけど、自分自身がどう定義しているかをまとめてみる。

まず、一般に「メディア」という場合、かつての4大メディアのことを指すことが多い。テレビ、新聞、雑誌、ラジオ。そんな気がする。インターネットが登場してからの、さまざまネットメディアも、同じ枠に入る。

ここでいう「メディア」の定義は、さまざまな情報を集め、加工、編集して「コンテンツ」にして、不特定多数、あるいは特定多数の視聴者、読者に「一方的」に届ける「事業体」ーーテレビ・ラジオ局や新聞社や出版社やネット事業者のこと、それから、具体的なパッケージーーテレビ番組だったり、ラジオ番組だったり、雑誌だったり、サイトだったり、の両方を指す場合が多い。

面白いのは、こういう定義で話すときの「メディア」には、同じ出版社が出す、書籍や漫画、あるいは映画会社がつくる映画なんかは、あまり含まれないような気がする。

つまりこの場合の「メディア」は、定期的に情報を消費者に一方的に流す事業体とそのパッケージを指す、ことのようだ。

一方、前回ちょっと触れた、私と小林弘人さんが出した書籍『インターネットが普及したら、僕たちが原始人に戻っちゃったわけ』では、小林さんが「だれでもメディア」という概念を出している。

インターネットというだれでも使える道具が出てきた瞬間、本来、巨大な装置とお金がないとできなかった、つまり4大メディアのようなスケールじゃないとできなかった、情報発信、他人にテキストや、音声や、画像や、映像を見せる、ってことが、ほとんど無料で、一個人がだれでもできるようになった。

そればかりじゃなく、そういう個人が発信した情報に対して、別の個人が意見を出したり、感想を述べたり、論争を挑むことができるようになった。特権的な道具だったマスメディア的な情報発信がだれでもできるようになったのがインターネット時代。つまり「だれでもメディア」の時代になった、という話である。

この場合の「メディア」の定義は、4大メディアなどが持っていた「機能」のことをさしている。つまり、さまざまな情報、音声や映像や画像やテキストを不特定多数の他人に情報発信できること。それを実行する主体が「メディア」だ、ということだ。インターネットの登場で、あらゆるひとや団体は、だれでも「メディア」になり得る、という話である。

この定義のポイントは、「自覚」しているかどうか、にかかわらず、だれもがメディアになってしまう、ということである。4大メディアで仕事をしているひとは、己の会社での仕事は「メディアの仕事」と認識しているはずだ。

でも、ツイッターで感想を書いたり、インスタで写真を投稿したり、フェイスブックに日記を書いているひとのなかで、「自分はメディアである」と認識しているひとは、たぶん特定少数じゃないか? でも、そういうひとのコンテンツが、当人の意識と関係なく、突然人気を集めたり、炎上したりする。つまり、「メディア」コンテンツとして不特定多数のひとに消費されることがある。

つまり、この2番目の定義によると、「メディア」とは、当人が意識しているしていないにかかわらず、「情報を発信している状態」のことを指す、わけである。だから「だれでもメディア」の時代なんだ、というわけだ。

と、ここまでは、メディアの中身は「情報」自体のことをさしていた。つまり、音声や、映像や、画像や、テキスト。アマゾンは、インターネット通販で、アマゾンが、さまざまな商品の情報を載せている。その情報の塊であるアマゾンのサイトは、ある種の「メディア」であり、個々の商品の情報は「メディアのコンテンツ」である。でも、アマゾンを通じて買った商品そのものをメディア、とは呼ばない、普通。

ところが、物質が「メディア」や「メディアコンテンツ」になることがある。青森県の三内丸山古墳。縄文時代最大の遺跡である。この遺跡は、縄文時代をいまに伝えるまさに「メディア」であり、「メディアコンテンツ」である。

ラスコー洞窟の絵は、よく最古のメディアと呼ばれる。「絵」だから、あれをメディア、というのは、だれでも腹に落ちる。当時から「メディア」として機能していたはずである。こんな動物がいたぞ。という具合に、情報を誰かに伝えていたわけだから。」

でも、土器だの石器だの遺跡だのは、ご飯を食べたり、獲物を切り裂いたり、住んだりするために使っていたわけである。おうちにある、茶碗や包丁やマンションの一室である。いま、この瞬間、こういうのをメディア、とは普通呼ばない。

でも、1万年のときを経ると、これら具体的なものが「メディア」になるわけだ。そのものが使われていた時代の本来の用途とは別に。

ネットのおしゃべり。テレビ。映画。土器。遺跡。

つづきます。

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