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「万葉集」私撰秀歌 歌巻1・48

「ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ

柿本人麿」

●整理:

東の
野に陽炎の
立つ見えて

返り見すれば
月傾きぬ

●歌意:

 阿騎野に宿った翌朝のこと──。

 日の出前の東の空に、暁の光が見え、雪の降った野に照り映えている。振り返って見れば、西の空では月が落ちかけている。

●感想:

 空間的広がりを感じさせる歌。明け方の空気の清浄さと、その一瞬を捉えた切り取り方がよい。

 また、「かへり見すれば」とすることで、同時には見えない二つの事象を、レイヤーで重ね合わせたように見せる表現もよい。

 この表現は、「めぞん一刻」の、ラスト近くの告白に対する返事のシーンを思い出す。

 確か、この歌に関しては「白川静 漢字の世界観」(松岡 正剛)に言及があったと思う。最近の研究では、意味がだいぶ変わっている可能性がある。

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目次と序:
https://note.mu/yanai/n/n375976ce6891

参考文献:
岩波新書「万葉秀歌」上下巻(斎藤 茂吉)

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