会話で補完されて完成に近づく報告スタイル
以前、多くの人に情報を伝えるための手段として、「注釈」を活用した東京防災アプリに感動した話を書き、似たようなコンテンツを気軽に作成できるツールが少ないことにも触れたのだけど、仕事やチームで利用するツールであれば多少ある。
Word、Googleドキュメント、Quip、Dropbox Paper、Box Notesあたりが有名なツールで、機能名も「注釈」ではなく「コメント」として提供されている(Box Notesは注釈)。いずれも投稿者が書いた文章の適当な箇所を選択して、選択した箇所に対してコメントができるようになっている。
コメント機能なので、文章を軸にしたコミュニケーションを支援するための機能だが、当然、投稿者もコメントを書けるため、うまく使うと東京防災のアプリっぽく表現することもできる。
参考までに、先日紹介した東京防災アプリの画面も。似ているのが分かると思う。
ちなみに、注釈やコメントを読む判断は読み手がすることなので、読む人の属性に応じて得られる情報の深さを選択できる点も東京防災アプリと近いと言えば近いか。
ただの注釈と異なるのは、投稿者による補足にしろ、文章の一部に関する議論にしろ、書くことによって足りない情報が補完されること。投稿者が公開した時点では不十分で役に立たない内容でも、本人による注釈や仲間とのコミュニケーションによって完成度の高いコンテンツに化けることがあって面白い。
これがうまく定着すると、コメントやコミュニケーションによって補完されることが、それを利用する人たちの前提になり、書くこと自体の敷居が下がる。すると、走り書きに近いようなメモや聞いた話を箇条書きにするだけのメモも共有する習慣がついたりする。書いてさえくれればコメントを書くことができるので、コメントを書いたり、それに応えたりする内にメモの情報量が増していき、チーム内や組織の動きが見えやすくなっていく。
たぶん。きっちりとした情報をまとめていくよりは敷居は低い。
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まあ、良いことばかりのようだが、Slack等のチャットツールが普及している中で、文章内でのコミュニケーションを促したり徹底したりするのはなかなか難しい。
また、どのツールも文中にコメントを書く機能としては十分なのだが、チャットツールのような軽快さが意識されておらず、文章を開くまでの時間も遅い。チャットの軽快さと文書作成の両立を明確に意識しているのはQuipくらいか(だからうちではQuipを利用している)。
ただまあ、LINEのおかげで誰でもチャットツールを使うようになり、それによってチャットツールだけのコミュニケーションで生じるストレスもみんな体感していると思う。
LINEグループで旅行やイベントの話をして、本題と雑談が入り混じってしまってストレスを感じたことのある人はきっと多いはず。LINEではそれを回避するためにノート機能を提供しているのだが、使ってもらうのが難しい。
それと同じことが仕事で利用するツール群でも起こるので、うまく運用する難易度は高いけど、みんなが漠然とストレスを溜めていることが顕在化すれば、いずれ決定的なツールが出てくるのではないかと思っている。
LINEと組み合わせて利用するようなものが良いのかなぁ。他人任せに近いけど、もっと普及してほしいコミュニケーション手段ではある。
Photo by Juliette Leufkeon Unsplash
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