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明確な目標より、嬉しい景色を目指して。中村さんと小さなキャンプ場の挑戦。

新宿から電車で約1時間。そこからさらにバスで30分ほど行ったところに、隠れ家のようなキャンプ場がある。看板には「TINY CAMP VILLAGE」の文字。TINYの意味通り、まさに小さなキャンプ場だ。

昨年オープンしたこの場所を運営しているのが、中村達哉さんである。

「おかげさまで、GWも満室になったりと、お客様にも喜んでもらえてます。都内から車で1時間ぐらいで来れるキャンプ場って意外とないので、ひいきにしてもらってる部分もありますね」

お客様の口コミなどをきっかけに徐々に利用者は増えているそうだ。限られたスペースだからこそ、貸し切りで予約が入ることも多く、大きなキャンプ場にはない魅力が随所に散りばめられている。

その中でも特徴的なのは、設備の多くが手作りであることだ。コンテナのあるウッドデッキや、トイレやお風呂などがある小屋も、中村さん自身が中心となってリノベーションしたものである。

「この小屋なんて最初はジャングルみたいになってて、とても使える状態じゃなくて。色んな人に手伝ってもらいながら、壁を塗り直したり、机とか作ったり。全部で1年半ぐらいかかりましたね」

最近これをつくったんです、と言って出てきたのは、完成度の高い折りたたみ式のローテーブル。最初はビスを打つことすらできなかったが中村さんだが、今ではたいていのものなら自分でつくれてしまうそう。

「手作り感があるから居心地がいいって言ってくれる人もいるので、それはすごく嬉しいですね」

中村さんは、備品だけでなく、料金設定から貸し切りなどシステムの面まで、経営者として全て自らの手でつくっている。経験もノウハウもない中、なぜキャンプ場をやろうと思ったのだろうか。

「もともとキャンプは大学時代から好きで、身近な存在ではあったんです。でもどちらかというと、具体的に何をするかはっきり決めてから始めた訳じゃなかったですね」

「なんか良いなって思ってピザ釜を作ってみたら、ピザパーティやろうってなって人が集まったり。たき火囲んで、話し合えたらいいなって思ってやってみたり。人と人が関わり合う場所をつくろうっていう意識で整地をしていったら、とりあえずキャンプ場っていう名前がついたっていう感じです」

やっていく内に少しずつかたちになっていき、充実感をどんどん感じられるようになっていったという中村さん。

その一方で、助けてくれる人がいるとはいえ、責任をとれるのは自分しかいないという孤独さや重圧もあるそうだ。

「不安になる場面ももちろんあります。その場で誰かが評価してくれる訳じゃないですし。壁の色ひとつとっても、これでいいのかなっていうのもあるし、自分の性格が全部出るので、言い訳なんてできないので」

「でも、その先にあるお客さんの顔とかを想像して頑張るしかないなって思うんです。『ここ、こうなったんだ!』『気づきました?』みたいなお客さんとのやり取りとか、受け手の表情はすごく意識してます。少しでもワクワクできるとか、機能面で使いやすいとか。お客さんの期待とかニーズに応えたいと思ってます」

誰かの表情が変わる瞬間。

それは、全てが手探りの状況で、彼がこのキャンプ場を通してつくりたいものであり、仕事をする上でのモチベーションの源でもある。

「去年、かき氷屋をやってみたんですけど、何杯売れるかっていうのを意識して営業してたら、めちゃくちゃつまんなくて。そこから、お客さんの反応を重視するようにしてみたんです。数じゃなくて、美味しかったとか、声を拾ってメモしたりして」

「そうしたら、子どもが大事そうにお金を握りしめて買いに来てくれたり、友だちをわざわざ連れてきてくれる常連さんがいたり、全種類食べてくれるお客さんがいたり。そのとき見えた”嬉しい景色”みたいなものをつくれるものをやろうって思ったんです」

実際に、キャンプ場を利用した家族同士で交流があったり、このキャンプ場で何か一緒にやりたいと言ってくれるお客さんもいるそうだ。

「キャンプ場に来てくれたミュージシャンの人と、ここで小さなフェスみたいなものができたらいいねっていう話になったりもして。カフェもずっとやりたかったので、夜はバーにできれば、イベントとも相性良いかなって考えてます」

閑散期はどうするのか、平日はどうするのか。実績もまだ少ない小さなキャンプ場には、まだまだ課題は山積みだ。それでも、この場所で生まれた表情の変化や景色が、彼を次の行動に駆り立てている。

「明確な10年後のビジョンとかはないんです。まずは始めて反応を見て、どんどん自分色に染められるところは染めて。お客さんが何を求めるかなんて、やってみないと分からないので」

今は自分の目の前にあることをするだけ。そう語る中村さんは、これからも手探りを繰り返しながら、素敵な景色を生み出していくだろう。


TINY CAMP VILLAGE

〒243-0121
神奈川県厚木市七沢1854
電話:070-3366-7738
メール:tinycampvillage​@gmail.com
公式LINE ID:mrt8645f

https://www.tiny-camp-village.com

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