月極銭湯

泣きそうなときは銭湯に行く。

仕事で失敗してしまったとき、恋愛が上手くいかなかったとき。
友人と喧嘩したとき、なぜか無性にむしゃくしゃしたとき。

誰かに話したくなる気持ちの前に、少しだけ1人になりたい気持ちになる。話して発散してしまう前に、今の自分のモヤモヤを、自分の中で整理したいのだ。

そんなときは、いつも銭湯に行くことにしている。スマホも見れない場所で、裸の自分と向き合う時間をつくれる。

体を洗って、湯船に浸かる。銭湯でやることは本当に単純だ。(サウナ好きな人はここにサウナと水風呂も加わると思う)

単純だからこそ、リフレッシュできる。いつもやっていることをただやるだけ。ルーティーン化したリフレッシュは、気分が落ちているときでも、心の負担にならない。

とはいえ、自分はすぐにのぼせてしまうので、内風呂が苦手である。その代わり、露天風呂が好きだ。露天風呂ならたいてい近くに座るところがあるので、湯船から出て一息つける。露天風呂のあるお気に入りの銭湯が好きすぎて、その近くに引っ越したほどである。

露天風呂に浸かりながら、自分の中のモヤモヤに対する「なんで」をぐるぐると考える。解決策なんてそこでは出ないことの方が多い。ただ、何も考えずに忘れたり、気持ちを切り替えたりすることができないから、必要な時間なのだと思う。

なにか具体的な解決方法は、風呂上がりのフルーツ牛乳(たまにコーヒー牛乳)を飲んでから考えればいい。

心の中のモヤモヤを解決するためには、まず「モヤモヤと向き合うぞ」という気持ちをつくるところから始めないといけない。やる気を出すためのやる気をつくる、みたいな感じだと思う。

スピード感がなくて失敗することもあるのだけれど、自分の中で納得して進めた方が長く走っていけるような気がするし、自分にあった走り方だとも思う。

そんなことを考えながら銭湯を出ると、入ったときと景色がほんの少し違って見える。

やる気がとめどなく溢れてくるという訳ではないし、ネガティブがポジティブになる訳ではない。

それでも、一歩が軽やかに感じる。

気持ちの切り替えが下手な自分にとって、銭湯は「ほんの少し景色を変えてくれる、外付けのスイッチ」みたいなものなのだろう。

これからもきっと、泣きそうになるたびに、僕は銭湯に行くのだと思う。

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