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レコー道の宝の山! HARD-OFFで宝探し

「ほらっ、アレが映っている!」
CMやスタジオセットに、おしゃれインテリアとして、レコードプレーヤーが使われているの見つけては、テレビ画面を指差す夫。
そのニンマリした顔からは、「レコード、今流行っているよね」という心の声が聞こえます。

若い頃に、なけなしのお金で買ったレコードを捨てきれず、ひっそりとレコー道を楽しんでいた夫と私。
レコー道とは、面倒を厭わず、レコードで音楽を聴くことを喜びとする、趣味道です。

近年「レコードの音が好き」「手間暇かけて、音楽を楽しむのがいい」と、世界中でレコー道を楽しむ人々が増加。

今や世界中のレコード市場は、右肩上がりの天井知らず。
中古だけでなく、名盤の再発や、若いアーティストの新盤も、続々発売。
中古レコードショップを何度も廻り、数年かけても見つからなかった、憧れの名盤の、しかも新品が、スマホでポチッとすれば、数日で手元に届くようになりました。

しかし、レコー道は「手間」と「面倒」を楽しむ趣味道。
労せずレコードを入手するのは、道に反します。
お目当てのレコードがあるに違いないと、ショップを廻り、幾千枚ものレコードの中から、お宝を探し当てたときの喜びこそ、レコー道ならではの醍醐味なのです。

ということで、とある休日。「宝探しに行こう!」と、我が家から車で15分、レコー道の宝の山、HARD-OFFに出かけました。

全国津々浦々の幹線道路いに、BOOK・OFFと兄弟のように看板を並べている、リサイクルショップHARD-OFFは、元々オーディオ機器専門店。
オーディオ売り場には、目利きの店員さんに選別された「まだまだ現役」の、レコードプレーヤーやスピーカー、レコードが、所狭しと並んでいます。

レコード売り場は、中古レコードショップ同様、レコード用のディスプレイ棚にキレイに陳列されています。
昭和アイドルや演歌のレコードが多数。洋楽やクラシック音楽も、少数ですが、美品揃い。安くて550円、美品は1,100円以上と価格もショップ並み。

しかし、私たちが目指すお宝の山は、レコード売り場の奥にある、ジャンク品コーナー。
幅約5メートル、高さ約2メートルの巨大な棚に、ジャケットの背表紙を正面に向け、ジャンク品レコードが詰め込まれています。その数約4,000枚(推測)。価格は一律220円也。

「ジャンク」とは、「ガラクタ」「役に立たないもの」のこと。
経年劣化でジャケットがヤケていたり、シミがあるのは当たり前。
落書きがあったり、レコード盤がキズだらけだったり。
ジャケット無しで剥き出しの、哀れなレコードも。
しかし、中には新品同様とまでは行きませんが、「この状態なら、1,100円以上で売ってもいいのでは!」と思う、お宝が紛れ込んでいるのです。

さあ、お宝探しのスタートです。
夫は棚の左から、私は右から攻めていきます。
巨大な棚を前に、背伸びをしたり、中腰になったり、かがんだり。
無理な姿勢で、黙々とジャケットを掻き分けつつ、1枚1枚凝視して、瞬時にお宝候補か判断。
翌日から数日続くであろう、筋肉痛を顧みず、お宝探しに集中します。

昭和アイドルのレコードがたくさん出てきました。
ジャケットに写る、聖子ちゃんやマッチ、チェッカーズ等々。みんな若くてカワイイ。「あ~わたしのこーいは~」と、聖子ちゃんの歌を口ずさみながらのお宝さがしは、楽しいもの。

意外に多いのが、DJプレイ用のレコードです。
趣味でDJプレイを楽しんでいた人が、就職や結婚を機に処分したのかも。
最近はレコード無しでDJプレイができるとか。デジタルの進歩はスゴイ。

1970年代の映画音楽全集は、グラビア雑誌のような豪華解説本付。
執筆陣も有名作家やタレントの面々。誌面構成も美しく、モダンなデザインがおしゃれ。書籍として欲しくなります。 

1番多かったのは、1970年代の若者が聴いた、フォーク・ニューミュージックのレコード。さだまさし、かぐや姫、吉田拓郎、アリス、チューリップ、オフコース……。
心躍らせこのレコードを聴いていた若者も、現在60代~70代。
健康不安のある年齢です。今も、音楽を楽しんでいるのでしょうか。
元気でいて欲しいものです。

あれやこれや想像しつつの、あっという間の1時間。
40枚のお宝候補のレコードを選別しました。
ちょっと休憩した後に、1枚1枚状態を確認します。

ジャケットの汚れは、経年劣化程度ならOK。
目を皿にして、レコード盤をチェック。キズさえなければ、少々汚れていても、台所用洗剤と専用ブラシで洗えば、キレイになります。
ジャケットとレコード盤、双方の状態が良好であれば、お宝認定です。

本日のお宝は、井上陽水初期アルバム×4枚、洋楽×1枚、昭和のこども番組「ママとあそぼうピンポンパン」×1枚、クラシック×4枚、合計10枚で、2420円也。先日、新品6枚を買ったときの値段は22,340円。
1/10の値段で、10枚のお宝をゲット出来ました。
なんてお得なんでしょう! 
レジでお金を払うときの、私の顔は満面の笑顔です。

お宝たちを抱えて、帰宅。
早速、固く絞ったふきんでジャケットを拭き上げます。
レコード盤を洗い、専用クロスで水気を拭きとり、自然乾燥で約1時間。
すっかり乾いた後、2回ほどレコードプレーヤーで再生すれば、レコードの溝がよりキレイになり、ノイズも少なくなります。

いの一番に聴きたかったのが、井上陽水「氷の世界」。
1973年発売、日本初のミリオンセラーアルバムです。
50年前のレコードの音。どんな音か出てくるのか、ワクワクします。

ピカピカツヤツヤになった、レコード盤に針を落とします。

1曲目「あかずの踏切」は、目が覚めるようなドラムセットの音からスタート。ミュージシャンたちが、目の前にいるような迫力のあるサウンドに、伸びやかで張りのある歌声。まるでスタジオライブを聴いているようです。

3曲目は、以前からレコードで聴いてみたかった「帰れない二人」。今は亡き、忌野清志郎との共作。
LINEやインスタのDM、携帯電話でさえ無かった時代の恋の歌は、切なく、心に沁みます。星を仰ぎつつ、肩を寄せあっている二人の姿が、リアルに思い浮かぶのは、生音に近いレコードの音のせいかもしれません。

最後の曲「おやすみ」まで、クリアな音で聴くことができました。
元の持ち主が大事に保管してくれたおかげです。

持ち主さんに感謝しつつ、「いい買物したねぇ」と、幸せを反芻する私。この幸せは、新品のレコードでは味わえません。
幾千枚もの中から、お宝レコードを探した者だけが味わえる幸せなのです。

恋をしたとき、恋人と一緒に、失恋して落ち込んだとき、人生に挫折したときに、大切な人をなくしたとき……知らない誰かの人生をサポートしたであろう、中古レコードたち。
持ち主さんのように大切に保管し、引き継ぐのも、レコー道を楽しむ者の役割かもしれない、と思うのでした。

12月は大掃除の季節。宝の山HARD-OFFにも、大量のレコードやオーディオ機器が、持ちこまれることでしょう。
レコー道に興味のあるあなた。最寄りのHARD-OFFに出かけてみてはいかがでしょうか。お宝たちが、あなたを待っています。

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