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ライターが自分の本を出すために会社をつくることは現実的か?

近年一人出版社や夫婦で経営するなどの小規模出版社が話題になっています。
有名どころではミシマ社さんやアタシ社さんがありますね。

ではライターが自分の本を出すためだけに、出版社をつくることはありでしょうか?

超有名な先行事例があります。
「ゴルゴ13」のさいとうたかを先生のリイド社です。
リイド社はさいとう先生が「ゴルゴ」を発表するためだけにつくった会社なのです。

実際問題として「ゴルゴ」の連載を続けるためには雑誌が必要です。そして雑誌はさいとう先生の漫画だけでは枠を埋めきれません。
ですから他の漫画家さんたちの作品も掲載されてはいます。
しかしあくまで主役は「ゴルゴ13」なのです。

自分の漫画を発表し続けるためだけに、出版社と雑誌を立ち上げてしまうという蛮勇……!
さいとう先生、振り切れてますね。

さいとう先生と同じようなことをライターがやってしまうのは、ありでしょうか?

●直取引で書店に配本すれば、取次は不要

近年主に一人出版社で、取り次ぎを通さずに直取引で書店に配本するケースが増えてきている、と聞きました。

出版社を設立する上でネックになるのが取り次ぎに収める供託金です。
この供託金の存在が、個人出版をやりたい人間にとって参入障壁として大きく立ちふさがっているのです。
しかし取次を通さないのであれば、この壁はなくなります。

販売はAmazonと自社サイトからの直販、書店との直取引、文学フリマなど……。

やれちゃうんじゃね……?

●会社を立ち上げる必要もないのでは

そもそも出版社を立ち上げる必要性さえないように思えます。
会社を設立すると法人税が発生しますし、手続きも面倒くさそうです。
目的は自分の本を自分で出すことなのですから、たとえ一人会社であったとしても、会社の経営は時間の無駄でしかありません。
(法人を設立すれば社会的信用が増すので、ライターとしてより大きなクライアントとの仕事に結びつく可能性はあります)
ですから、できれば会社を設立せずに、フリーランスのまま本を自力で出したいものです。

ライターが自分で編集もして、印刷会社ともやり取りし、在庫は自宅やトランクルームで管理すれば、執筆からリリースまですべて一人で完結させられるのではないでしょうか?

つまり、ほとんどKindleでの出版と同じです。
(ただし個別に書店とやり取りしたり、発送したりするのが面倒くさそうではあります)

問題は紙代と印刷代。
仮に元手があったとしても、回収にはかなり時間がかかるでしょう。

個人事業主が会社を創立するのと同じように、日本政策金融公庫に融資をお願いすることは可能でしょうか?

もし資金面の目処さえつけば、紙の本でもKindleのセルフ出版とほとんど同じことができそうです。

●自費出版とはちがいます

勘違いされそうなので、一応説明しますが、これは「自費出版」とはちがいます。
自費出版というのは、自費出版専門の会社にお金を払い、自分の本を出してもらうことを指します。

僕がここで書いているのは、「自費出版会社の業務をライターが全部自分でやってしまう」ということです。
つまり「他人の力を借りずに一人でやり切って」しまうのです。

ネックとなるのはお金。
ここさえクリアできれば、ほとんどKindle感覚で本が出せてしまうのではないでしょうか?

●なぜこう考えるようになったのか?

上記のように考えたのは、近年書籍の企画を通すのが困難になってきているからです。
数年前、ある本の企画が某版元から持ち込まれたのですが、「初版千部」といわれ、全身の力がへなへなと抜けました。
刷り部数・千部であれば、ライターがセルフ出版できる規模感だと思われます。
であれば、版元と組む意味はあるのでしょうか?

僕が商業出版に期待するのは、書評です。
文学フリマなどで売り裁かれる本には書評がつきません。
商業出版する意味は書評にあると、個人的には考えています。
しかし近年は書評に失望することが多く、そうするとわざわざ版元を通す必要があるのか、かなり疑わしいように思えます。

強めに言ってしまえば、現在の書評は批評ではなく、宣伝手段として生き長らえているだけです。
権威性の失墜した書評に存在意義はありますか?
宣伝だったらSNSで十分では?

小さい版元から出す場合は校閲はおろか、校正も穴だらけ。
版元に搾取されるくらいなら、自分で出せないか、と思うのです。

自分で書いた本を出すだけですから、出版点数は少なめです。
管理する手間はそこまで大変でない気がします。

長々と書き連ねました。
ここまで読んでいただいて、いかがでしょうか?
参考になりそうなご意見を頂戴できれば幸いです。

追記(2023.07.03)

よく似たケースを他にも発見しました。
弘園社は旅行作家・小林正観さんの本を出すためだけに設立された出版社です。
出版物は本屋では売らずに直販に限定。こうすることで、取次に卸す煩わしさを回避しています。
弘園社小林正観 |小林正観限定本
https://ananda.ocnk.net/product-list/6

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