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息子くんの初めての病院

初めての精神科のクリニックは初めて降りる駅にありました。子ども病院を卒業し、今後、知的障害に関する公的書類を書いてもらうために、一般病院でフォローをしてもらうのです。この日のために紹介状を持ち、各種手帳、生育歴の資料を準備していました。息子は駅前に本屋を見つけてご機嫌でした。

幸い先生は良い感じの方でした。私が連れて来れなくなった時を見越し、福祉サービスを利用し、介助者が同行しやすいように便利な場所にある病院を選んでいると話しました。

「いやいや女の人は長生きするでしょ」と先生は笑いました。「でも健康じゃないと病院受診も一苦労ですよ。いつまでついて来れるか分かりません。」と真顔で答えました。実際いつも私は、私なきあとを想定して生きている。そんな生き方をしています。

息子と2人で、駅前で見かけた喫茶店に入りました。私はケーキとカフェオレ、息子はバナナジュースを飲み、受診の緊張をほぐしました。

帰り道、駅に向かいながら空を見上げたら、雲がふわふわのかき氷に見えました。


最寄駅に着き家に向かって歩きながら、息子が帽子を被っていないことに気がつきました。

席を立つ時に、あれだけ声をかけたのに…ヘラヘラ笑う息子にブチ切れながら、喫茶店に連絡し帽子の所在を確認しました。

炎天下の昼下がり、再び電車に乗り込み帽子を取りに行きました。私の怒りは凄まじく、息子は私から約3メートルの距離をとります。

私の確認不足なんだよ。ちくしょう、やり場のない怒りと暑さで爆発しそうでした。

私の人生はいつもこんな感じなんだよ。何事においても詰めが甘い。

私の身体の自由が効かなくなるまで、今日みたいな事を繰り返すのだろう。諦め、諦観、悟り・・・無理矢理に自分の中に落とし込むしかない。でも容易に落とし込めないのは、気温が30度を越えている暑さのせいかもしれない。

車窓から空をみた。

さっきまであったかき氷みたいな雲は、内側から黒雲が湧きだし溶けて崩れていました。

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