見出し画像

なぜ、ブレインヘルスケアが重要か

仕事やプライベートで出会う人に自分の仕事内容を話す中でブレインヘルスケアがいまだかつてないほどに求められていることを実感します。

今日は「なぜ、ブレインヘルスケアが重要か?」というテーマで書きたいと思います。

人類の直面する問題だから

進行していく少子高齢化
低下していく国民生産性

老化は生物である以上、避けられない問題です。
その中でも脳の健康にとって、最大の影響因子は加齢。

そういう意味でもブレインヘルスケアの中心的な取組みの一つである
認知症は人類の歴史上有数の社会課題です。

日本の人口推移と将来推計

日本では高齢化が進むその一方で、人口は減少の一途を辿ります。このままでは、いずれ2人で1人の高齢者を、その先には1人が1人の高齢者を背負う未来、という世界がやってきます。

我々現役世代の喫緊の課題は、自分たちの両親や祖父母が幸せに老後を迎えてくれることですが、いざ数十年後に我々の番になったときにサポートしてくれる人がいるかどうかは分かりません。

なりたくない病気だから

脳疾患は”なりたくない病気 Top3”として、日本人の40代以降では常連です。この傾向は今後、日本に限らず高齢化率2位のドイツ、また続く中国や北米など多くの国で共通する問題になっていきます。

認知症をはじめとした脳疾患は、超高齢化社会を生きる私たちのとても大きな課題です。そしてこの課題は、数年後には世界各国も確実に対峙せざるを得ない、世界共通のテーマになるでしょう。

課題先進国の日本から、ブレインヘルスケアを世界の当たり前にしたい―。
そのミッションを実現するためには、若いうちから自分の脳の健康状態を知り、来るべくその時に備える必要があります。

脳の健康に早い段階から向き合う、新しい社会の常識を作る

今、30代など若い世代を中心にブレインヘルスケアへの関心が高まっています。
「脳の健康に関する意識の高まり」の調査結果によると、各年代で認知症や脳卒中などの脳疾患が重要な位置を占めています。

特に予防したい疾患について

ただ、関心は強いものの、予防や対策に関しては「何をすればいいか分からない」という声がダントツでトップになっています。「なるのが怖い」「予防したい」という意識は高くなっている一方で、認知症をはじめとした脳疾患の医療はこれまで”発症してしまってからどうしていくか”がメインテーマでした。

脳の健康を意識した生活を送っていない理由

Splinkの掲げるブレインヘルスケアは、まさにこの社会課題に向き合っています。
一度なったら治らないと言われている疾患に対して、発症前の早い段階から向き合い、前向きに脳の健康づくりを進めていく。そのためには、受診者を中心に置いた(patient-centered)体験の実現が欠かせません。

人生100年時代のブレインヘルスケア

私たちの人生は、基本的な生物的活動があれば成り立つものではありません。
考える、感じる、人と関わって行動するなどの“思考や情緒”があってこそ生きる意味があり、そうした人間的活動を1分1秒でも長くすることで、つながりや愛、尊厳、自己表現を実現し続けることができます。

ブレインヘルスケアは、私たち人間がより良く生きるためのキーであり、継続的に自分の脳の状態を見ていくことで、100歳になっても、自分らしく、人や社会とのつながりの中で生き続ける人生を送ることができるのだと考えています。

脳は変えられるから

”認知症は根治薬がない
脳の健康状態が分かっても意味がない”

創薬イノベーションは日進月歩。この数年では、認知症の進行を遅らせる技術の明るい兆しはニュースにいとまがありません。

同様に、科学の進歩により解明されているのが、”脳の可逆性”です。

人間の体の臓器は、日々古くなった細胞が死に、その代わりに新たに細胞が生まれています。また、怪我をしたり、病気をすると、傷ついた臓器を修復するために、平時よりも細胞が活発に生まれてきます。

これに対して、かつては脳細胞は神経が一度損傷すると新たに生まれる(新生する)ことはないと言われていました。しかしながら、1990年代に入ってから脳細胞の神経新生が明らかになりました。

その中でも、記憶の中枢を司る「海馬」という部位(下記参照)では、正常な脳でも神経細胞が毎日新たに生まれ変わっていることがわかってきました。

海馬について

脳は衰えるか

現代社会と海馬

例えば、うつ病やストレス、睡眠不足など、脳内の神経活動を衰えさせるような状況に一定期間置いた場合、神経細胞の新生は低下し、海馬の萎縮は進みます。

脳は変わるのか

脳の可塑性

その一方で、ポジティブな刺激を加え続ける、または良い環境を維持し続けると、神経細胞の新生は活発となります。つまり、萎縮しない、または萎縮しても、それは元に戻っていきます。例えば、一定強度の運動の持続、学習や読書などの脳への刺激を与えることによって、神経細胞の新生が促されます。 

別の言葉でいうと、脳に悪い環境に自分自身を置けば知らぬ間に脳は衰えていき、逆に脳に良い環境に自分自身を置けば、脳の健康は保たれます。あるいは、その機能は向上するということも明らかになっています。

脳の神経系の活動の程度によって、脳内の神経細胞の新生は活発になったりならなかったりするということです。実際に、国内外の多因子介入研究の中では、栄養管理や有酸素運動など、さまざまな活動によって認知機能の改善や維持の研究結果が報告されています。

自分の人生の責任者は自分。自分の脳は自分が守る

最後に私がSplinkを創業したときの話を少ししてみたいと思います。
Splinkが提供する、脳ドック用AIプログラム「Brain Life Imaging®」のMVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)ができて、お客様に持って行ったときの話です。

現在、国内で最も使われているブレインヘルスケアの検査の一つとなっていますが、その当時はお客様(医療機関)からはこんな風に言われました。

”脳の健康状態なんて分かっても意味がない
治療法がないものを診断しても意味がない
こんなの絶対売れないよ、だからうちは使わない”

随分と厳しいことを言われ続けました。涙
創業メンバーたちとMVP開発が完了した2018年当時、製品コンセプトは50人の医師に意見を聞くと、ようやく1人がその意義と必要性に賛同してくれました。

だからこそ、僕はチャンスがあると思いました。

ブレインヘルスケアの思想を言葉にし体験にして、医師と協力して人々に適切に伝えることができる世界が来たときに、人々の脳のヘルスケアに対する考え方がパラダイムシフトを起こしていく。絶対に、その瞬間はこの5年以内にやってくる。当時、その確信がありました。進捗かつ着実に、このモメンタムに対して戦略的にアプローチをしていくことが、いつか必ずブレインヘルスケアの世界につながると信じていました。

この根拠のない自信こそが”起業家である”ということ。そして、これは、経営者がプロダクトやその企業としてのあり方を通じて、世の中のあり方を言葉によって整理することによる「副産物」のように思えますが、実はこれが「起業家の本質」だと思っています。

こういう想いから「ブレインヘルスケアを世界の当たり前に」というSplinkのミッションに、これからの社会における新しいライフスタイルを創っていくきっかけとなり、身の周りの大事な人が最期の瞬間その時まで、自分らしく生きられる世界に貢献できたら嬉しいなと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?