二千年後の呪詛と祝詞 ――『家畜人ヤプー』にむけて――
すべての無辜なる同胞(はらから)に捧ぐ
『家畜人ヤプー』とは何か。『家畜人ヤプー』は1956年にSMカストリ雑誌『奇譚クラブ』に連載され、1970年に都市出版社から単行本化された。三島由紀夫、澁澤龍彦らに絶賛され、戦後最大の奇書といわれている。作者は覆面作家・沼正三である。沼正三の正体は今日においてもはっきりとはわかっていない。諸説あるが現在公式に沼正三とされているのが天野哲夫である。第二の有力候補とされているのが裁判官・倉田卓次である。この沼正三の正体も『家畜人ヤプー』