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「法律ではどうなっていますか?」~創造的解決へ

「法律ではどうなっていますか?」

私もよくこんな相談を受けます。

一般の方の思い浮かべる「法律」のイメージからは、
このような問いかけは、
ごくごく当たり前のもののように思われますし、
普通の質問のように思えます。

けれども、
法律というものは、
一般にイメージされているほど、
ガチガチに一つの答えが決まっているというものではありません。

とくに民法は、
関係者の利害を調整するための基準であって、
合意によって変更できることが広く認められている部分もあります。

実務上、
・養育費は月額~~万円が相場
・慰謝料は~~万円が相場
など基準が確立されている分野もありますが、
ここで行われていることは、
「最低限の基準」を表しているのではなく、
「支払う側と支払いを受ける側の利害調整の結果」として、
実務上、だいたいこのような目安でバランスを取る、
ということなのです。

だから、法律や実務上の基準は基準としてあるのですが、
それは一般的な一応の目安にしかすぎず、
個別の事件の中で、個々の事件内容によって、
増えたり、減ったり、違う内容となることは普通にあることです。

大事なことは、
その事件がどのような事案であって、どのような事実があるのか、
ということなのです。

冒頭の「法律ではどうなっていますか?」という問いに対しては、
もちろん、まず一応の法律の説明をしていくことになるのですが、
弁護士としては、逆に依頼者に対して、

「事実はどうなっていますか?」

と問いかけることになります。

より根本的には、

「あなたはこれからどうしていきたいのですか?」

と問いかけていきます。

こうして、
相談者と弁護士の対話が始まっていきます。

事案については、弁護士は最初は何も知りません。

依頼者の話を聞いて、すぐに何もかも理解できるわけではありません。

話を聴きながら、資料を見ながら、様々な調べごとをしながら、
時間をかけて、少しずつ、事件が自分の中に入ってくるものです。

こうして、
弁護士が依頼者とやりとりをしながら、
依頼者の認識している事実や気持ち、思いにたどりつき、
これと法律上の根拠とが一体となったときに、
依頼者が心から納得できる法律上の主張となって現れ出てきます。

納得のいく解決案というものは、
「法律」の中にはありません。
単なる「事実」だけの中にもありません。

「法律」と「事実」の相互循環の中に、
依頼者と弁護士の対話の中に、
見つかっていくものだと思います。

依頼者とともに解決策を生み出していくのは、
私にとってはとても「創造的」なプロセスです。

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