※この蔵出しシリーズは、1996年～2002年までアメリカに留学していた野菜さらだが後半の1999年～約三年間、週２回発行していたメールマガジンの記事をそのままそっくりお送りするものです。今回は、毎日更新していきますので、お楽しみいただければ幸いです！

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　　野菜さらだの
　　　『アメリカは、住んでみなくちゃわからない！』（愛称アメすん）
　 　　　　　　　(1999/9/24発行）　第34号 （火・金曜発行＋日曜版）
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　今日は前回に引き続き、先週ダラスを旅したときの体験をお送りします。

◆本日のテーマ「テキサス州ダラスで見たこと、聞いたこと（その２）」

・エピソードその２「ダラス中心部を走る黒い帯、それは、、、」

　何人かの大学の先生に会ったり、施設を見学したり、そしてもちろんロデオ　を見に行ったり、お土産を見て回ったり、と慌ただしく過ぎたダラスでの一週間でした。今回はアメリカ人の友人がダラスでのスケジュールをほとんど立ててくれた上、ずっと彼女のお宅に居候していたのですが、その彼女が「今日はダラスでの最後の夜だから」とダンナの妹と私を連れていってくれたのが、ダウンタウンの中心にあるホテルに併設されたタワーでした。

　夕食を済ませた後、そのタワーへ向かう途中、「これがあのJFケネディーを暗殺した人が潜んでいたというビル（1963年）」というのも見ました。夜も10時を回ろうかというのに、ダウンタウンはバーなどで楽しむ人々で結構賑やかな雰囲気でした。また、お客さんを乗せ、花で飾られた馬車を引く馬が、既に車通りの少なくなった中心街の道路を悠々と濶歩する姿も見かけました。

　目的地のタワー最上階は360度座席が回転するタイプのラウンジで、ゆっくりお酒を飲んでいる間にダラスの町の全景を見ることができるようになっていました。こういう大都市の夜景を見ると、つい日本で見た新宿高層ビルからの夜景を思い出し、ちょっとセンチになる私ですが、この時も同じように東京で見た地平線まで続く夜景とダラスの夜景が頭の中で重なり、久しぶりに「随分遠くまできたもんだなあ」などと思っていました。

　私の友人は窓の外に広がる夜景を指しながら、「あそこは～～、そこは～～」とこの１週間で私たちが訪ねた場所を示してくれました。そして「ほら、そこに大きな真っ暗な部分があるでしょう？あれは川なのよ。真っ黒だから、どういう風に川が走っているかすぐにわかるでしょう？」と言いました。彼女の指差す先は、確かに大きな黒い闇、夜景の中では言われるまで「川」だとはわかりません。実はこれがダラス中心地を南北に分ける「Trinity River」でした。

　聞いた話では、この川を隔てて町の北部と南部は完全に住み分けがなされており、南部には黒人、ヒスパニック系の人たちが、北部には白人がそれぞれ住居を構えており、相互の行き来はほとんどない、そういうことでした。

　そう言えば、と今回廻った様々な場所を思い出しました。確かに町の北部はきれいな大学街、特に北のはずれには広い庭のある大邸宅が整然と軒を連ねていたのに対し、川の南側は古いコンクリート作りの建物が、使われているともわからない雑草の生えた空き地と交互に立ち並んでいました。例えば道路一つ取っても、北側の道路がきれいに整備されているのに対し、南側の道路は舗装もあちこちガタがきている、そんな感じでした。また、北側で公園、その他の公共の場所にいるのはほとんど白人、たまに黒人、ヒスパニック系の人という感じでしたが、それが川の南側ではほとんどが黒人、しかもなすこともなく道路脇に数人で固まってたむろしている、そんな光景ばかりが目につきました。

　「川の南側は昼間は大丈夫だけれど、夜は危険、立ち入ってはいけない」これが私が現地で受けた忠告でした。ダラスの南北を隔てるように走る黒い帯、吸い込まれそうな深い暗闇は、それが隔てる、目には見えない今なお残る大きな壁が今このときだけくっきりと描き出されているかのように、私たちの前にはっきりとその姿を現わしている、そんな風にさえ見えました。

　テキサス州ダラス、到着するまで、してからも、特に大きな期待を持っていなかっただけに、逆に実際そこで見聞きした様々なことは大変印象深く、機会があれば是非また行ってみたいと思っています。　　　　（つづく）

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝◆お断り：この『アメすん』は、かつてアメリカのオレゴンに住んでいた野菜さらだが個人的に体験した、おもしろい話を友だちや家族に話すようなつもりで書いたものです。アメリカの他の場所とは違う、というエピソードも中にはあるかと思いますが、まあ、気楽に読んで楽しんでください。
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