記録032

 これはわたしが夜、眠るための。
 長期の派遣で働き始めて1年が過ぎ、もはや会う人すべてに「毎日が虚無です」とふれまわってはいろいろな意見をもらったり自分でいろいろ見てみたりして、なぜわたしはこんなにも仕事に対して(せめて人並みに)熱心になれないのかをずっと考えていた。その中間報告をする。
 原因その一、複雑すぎる手順の作業をしている。わたしは毎日、決められた手順で、決められた作業を行い、決められた結果を出す、という仕事を行うチームに属していて、一日の大半がこの作業で終わる。たくさんの文字、数字を見ながら、あるべきものがあるべき場所に入っていること、宛先が間違っていないことを目視確認して、発送の準備を行う。契約上、この役割を変えることはできない。薄々気づいていたのだが、わたしは文字、そして一番には「数字を読む」ことがかなり苦手なようだ。読み違い、見間違い、聞き違いのミスを指摘される回数が、他の人と比べてかなり多い。それがとても苦痛である。
 かつて工場労働をしていたころ、きわめてシンプルな「決められた手順を繰り返す」ということが大好きであることに気づき、いまの仕事もきっと大丈夫だと楽観視していた。入社後にわかったのは、今の仕事と工場労働の仕事は、まったくもって正反対であるということだ。工場労働は、「ひとつの手順」をそれぞれが与えられて大きなラインを分散してやる、という手法である一方、今の仕事は「複雑な手順」を最初から最後まで1人で行い、大きなラインを複数人で同時進行する、というものなのだ。前者は労働環境のこともあり体力的には非常にキツかった、が、かわりに職務に対して頭を使う必要がない。なのでわたしはほとんどの時間、手を無意識に動かしながら、実に自由に、ほんとうにいろいろな考え事をしていた。それはとても貴重な時間だった。金銭を発生させながら、好きなことを好きなだけ延々考えていられるのだ。一方、後者はまったく逆で、非常に快適な環境の中ではあるものの、作業に対してかなりの集中力が必要(わたしのミスがそのままインシデントになってしまうため)で、すぐに目の前のことと関係のない考え事を始めてしまうわたしにとって、つねに頭のなかがパニックを引き起こしているような状態に陥りやすい。それが精神的に非常にキツい、ということがわかってきた。得意ではない作業のあいだずっと集中しておく、ということがわたしにはできないのだ。
 原因その二、日中眠すぎる。これがほんとうにキツい。精神的にも身体的にも。わたしが飲んでいる薬は、すべてに副作用として「眠気」が発生してしまう。それでいてわたしには睡眠障害の気があり、夜眠るのが下手であることに加え、この日中の眠気である。正直眠気というレベルではなく、ほんとうに我慢できないので、毎日断続的に数分ずつ意識を失っているのが事実だ。なぜこんなにも眠たいのか?昼休み、家に帰って話しているときはぜんぜん大丈夫なのに。チームのメンバーと話しているときも。喋っていないからといって、たとえば学校の授業なんか寝たことがなかったわたしなのに。そしてこれは恐ろしい原因の推測だが、おそらく、「興味がない」から眠いのではないか。これは非常におそろしい。この社会で生きていく上で、致命的な欠陥ではないか。興味のないことができない、というならまだしも、興味がないから眠る、というのは、さすがに、まずいんじゃないか。そんなのは、ゆるされないんじゃないか。この社会において。だからそれが薬のせいであることを、心の底から願っている。
 これらの要素が正であるとして、わたしにできることはなんなのだろうか。夢中になれる仕事を見つけることなのだろうか。興味がないことでもきちんと取り組めるよう訓練していくことなのだろうか。わたしにはなにができるのだろう。職務としてできることはもちろんたくさんあって、でも同じだけできないことがある。それは恐らくひとより多い。それらとどうやって付き合っていけばいいのだろう。27歳にもなって、未だこんなことに悩んでいる。

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