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深田萌絵さんの2022年5月8日の動画の答え合わせをしたら、なかなか酷い結果になっちゃったwww


萩生田大臣が訪米した際の、IBMの2ナノ技術提携に関するお話についてなのですが…
2022年5月8日に深田萌絵TVで配信されたのがこちらの内容になります。

深田萌絵TV「萩生田光一経産大臣の訪米空振り!?半導体分野で当てが外れる?」

深田萌絵さんの頭の中の米国政府(つまり妄想)はどうやら・・・
・半導体不足は、間違いなく台湾TSMCが起こしている!
・日本政府はその台湾にせっせと技術を渡しているフトドキモノ!
・台湾が中国に技術を流している!

と認識していることになっているようです。

なので、2022年5月に訪米した萩生田経済産業大臣(当時)の「IBMから2ナノ技術をおしえてくださーい」という狙いは、けんもほろろに撃沈した事になっていました。(※深田萌絵さんの中で)

紹介されていた日経新聞の記事

動画内で紹介されていたのは、こちらの日経新聞の記事。
冒頭のみ無料で読めます。

日米、半導体で技術協力 2ナノなどの最先端開発
2022年5月2日・日経新聞

記事の内容は、

2022年5月の萩生田経産大臣(当時)が米国を訪問し、最先端の半導体サプライチェーン構築で日米両政府が協力する動きに関して、
日米両政府として

・回路線幅が2ナノより進んだ先端分野での協力
・中国を念頭に置いた技術流出防止の枠組みづくりなどで近く合意
・米中対立を背景として経済安全保障上の半導体の重要性
・台湾勢などへの調達依存に対する危機感から日米連携を強化

を確認した。というかんじです。

深田萌絵さんの妄想(?)は、

この一番最後の「台湾勢などへの調達依存に対する危機感から日米連携を強化」というところから深田萌絵さんの妄想は膨らんだことでしょう。

ここに出てくる「危機感」というワードから、
半導体を台湾に異存することは、
・台湾が中国と繋がっていて技術を流しているから危険
・台湾TSMCが半導体不足引き起こしたから危険
・TSMCはとにかく中国とズブズブで危険!
…と、米国が認識していると思ったんでしょうかね。
ご自身の思想を米国政府に投影したのでしょうかね。

というわけで、
TSMCを誘致した日本政府は、台湾TSMC、つまり中国に技術を流し、補助金といって大金を渡すとんでもない政府だ!
・・・と、米国が思っている事になるようです。(※深田萌絵さんの中で)


IBMの2ナノ技術獲得失敗?!


なので、日経新聞の記事に出てきたIBMの2ナノ技術についても、
萩生田大臣が訪米して「台湾異存は危ないから日本独自で作りたいのでIBMさんぜひぜひ技術教えてくださ~い」と懇願しに行ったけど、台湾にこびこびの技術お漏らし日本だから失敗したという認識なのですね。(※深田萌絵さんの中で)

まあ、そんな事実はありません。

政府間どうしのやり取りって、基本的に両国の大臣や首脳が会ったその場で決めるんじゃないんですよ。
見えないところで大抵のことは決まっているんですよ。
両国の事務方が事前に、どのような内容を協議するか、何を約束するか、事前にやり取りをして、一通り決まった上で大臣が訪問するんですよ。
もちろん、大臣同士、首脳同士の間だからこそ決まる事もあるでしょう。

でも、大臣が行ったその場でお願いして断られる…なんて、よほどの事がないと起こりえないでしょうね。

2022年5月の萩生田経済産業大臣の訪米の内容は、経済産業省のウェブサイトに掲載されています。

「萩生田経済産業大臣が米国に出張しました」(2022年5月6日・経済産業省)

萩生田経済産業大臣は、5月2日(火曜日)から5月6日(金曜日)にかけて、米国(アルバニー、ワシントンDC、ニューヨーク)を訪問しました。アルバニーでは、半導体研究施設の視察や関係企業との意見交換を行いました。また、ワシントンDCでは関係閣僚との会合を実施しました。ニューヨークでは現地企業家等との意見交換を実施しました。

経済産業省

萩生田大臣の訪米内容はざっくりとご紹介

1.アルバニー
(1)IBMとの会食・意見交換
(2)日米半導体関連企業との意見交換(車座)
(3)Albany NanoTech Complexの視察

2.ワシントンDC
(1)ディーズ国家経済会議(NEC)委員長との会談
(2)レモンド商務長官との会談
(3)タイ米国通商代表との会談
(4)グランホルムエネルギー長官との会談

3.ニューヨーク
(1)シュタイナー国連開発計画(UNDP)総裁との会談
(2)ERA視察、現地スタートアップ・VCとの車座会談

ワシントンDCでレモンド商務長官と会談する前に、アルバニーのIBMに訪問して意見交換していますね。

アルバニーでのIBMとの意見交換の様子


また萩生田大臣が訪米した5月の後半には、バイデン大統領が来日し、
半導体サプライチェーン構築について首脳どうしで確認がされています。

日米、半導体確保で連携 サプライチェーン再構築、中国封じ込め
毎日新聞 2022/5/24

日米首脳会談では次世代半導体の開発を検討する共同タスクフォースを設立することや供給網(サプライチェーン)の構築などで連携を強化することが確認された。狙いは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で寸断された半導体の供給網の再構築と、覇権主義を強める中国の封じ込めだ。

毎日新聞

もうお分かりかとおもいますが・・・

さて、答え合わせをしましょう

さて、深田萌絵さんは2022年5月に米国政府の意向を代弁するかのように、
「台湾TSMCが半導体不足の原因なのに、そのTSMCに補助金を大量に渡し、中国に技術を渡し続けるフトドキモノの日本政府が、米国から蹴られIBMの2ナノ技術を貰おうと思ってたけど失敗した!」(意訳)と解説していましたね。

ですが、同じ年の12月に、ラピダスがIBMの2ナノ技術の提供を受けるとニュースがありました。

ラピダス、IBMと次世代半導体で提携 「2ナノ」へ一歩
2022年12月13日・日経新聞

次世代半導体の国産化を目指すラピダスは13日、米IBMと提携すると発表した。スーパーコンピューターなどに使う最先端製品の技術提供を受ける。経済安全保障上、半導体は最重要の製品だが、国内では先端品を生産できない。微細な回路の形成など日本にない技術を米欧との連携で補い、国内で量産できるようにする。

電子機器の「頭脳」にあたるロジック半導体の技術の提供を受ける。半導体は回路の幅が細いほど高性能になる。世界でまだ生産技術の確立していない回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの製品の技術のライセンスを購入する。IBMが中心となっている米国の研究機関にも技術者を派遣する。契約料などは明らかにしていない。

日経新聞

というわけで、深田萌絵さんの解説した内容は、
どうやら大ハズレだったようですねw

米国の半導体における台湾異存(主にTSMC)に懸念の声が上がっているのは確かなのですが、それは深田萌絵さんが言っているような「TSMCは中国に技術を流す!」みたいな陰謀論ではなく、様々な理由があります。

例えばこちらの2021年の東洋経済オンラインさんの記事。

台湾TSMCへの高性能半導体依存が益々強まる事情世界は巨大ファウンドリとどう向き合えばいいか(2021/05/31・東洋経済オンライン)


TSMCは株式上場している私企業です。
それはソニーやトヨタも同じです。
地政学的な問題に色々と影響は受けますが、商売をしている企業である事をを忘れないようにしましょう。

深田萌絵さんはTSMCは中国にチップを提供している!とよく言っていますが、ソニーやトヨタは中国と商売していないんですか?という事です。

また、TSMCは米国の規制強化を受けて、2020年5月にファーウェイからの新規受注を停止しています。

TSMC、ファーウェイから新規受注停止 米規制強化受け
2020年5月18日・日経新聞


あと、日本政府がTSMCを誘致したことを、まるで犯罪を犯したかのように言っていますが、米国だってTSMC誘致していますからね。
なんで中国に筒抜けで技術流すと判っている企業を米国が誘致するのよね。そこだけでもおかしいでしょ?


さて、本題に戻りますが・・・
IBMの2ナノ技術については、2022年12月にラピダスとの連携が発表されてから、その裏側を紹介する記事やテレビ番組がありました。

<スクープ!>日米半導体”極秘交渉”の舞台裏
ガイアの夜明け・2022年12月9日放送

2022年5月の萩生田経済産業大臣の訪米の後、10月に極秘裏に本格的な交渉が行われ、12月にラピダスとIBMの提携が発表されたということです。

IBMの2ナノ技術は試作が成功した段階のもので、ラピダスが量産に持ち込むことができるかどうか、私が半導体🦆🍖界隈の皆様のお話を眺めている中では、なかなか厳しいようです。
でもでも、頑張ってほしいですね!

頑張れ!ラピダス!
頑張れ!日本!
頑張れ!半導体技術者のみなさん!


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