気分屋さん

私が大学生の頃。
確か3年の頃。
音楽を良く聞くようになって、ライブにも行くようになりました。
ライブの会場は大阪が多く、事あるごとに大阪に赴きました。
大阪駅では夜になるとストリートミュージシャンを良く見かけます。
私はライブ終わりに道すがらストリートミュージシャンの歌声に耳を傾けていました。
すると、思わず足を止めてしまいました。
一人の女性が歌っていました。
アコースティックギターとアンプ、マイク。
とてもスタンダードなストリートミュージシャンでした。
2月の寒空の中、彼女は力強く歌っていました。
傍のボードには「気分屋」という文字が。
彼女の名前が「気分屋」だと気づくのにしばらくかかりました。
丁寧に自己紹介をして、また一曲。
力強く歌っていました。
私はそんな彼女に心のを惹かれて自作CDを1枚購入しました。
律儀にサインもしてくてました。

私はそれから気分屋さんのファンになりました。
ブログを確認して彼女が今日はどこで歌っているのかいつも気になっていました。
しかし、自分から大阪駅に足を運ぶ事は出来ませんでした。
彼女の告知はいつも直前で、しかも規制が厳しく場所も頻繁に変わったりしているのを知っていたからです。
彼女の歌声は円盤にコンパクトに収まっていますが、彼女の存在感は円盤に収まる事はないのでした。

用事で大阪駅に行くときは、いつも彼女の声を探しました。
何度も大阪駅に行く機会はありましたが、彼女の歌声を再び聴ける日はありませんでした。
ブログは毎日確認していました。
いつもライブの告知でしたが、私は彼女の存在があるのだと知れるだけで安心でした。

しかし、それも次第に少なくなってきました。
彼女のブログの更新があまりされなくなったのです。
本当にたまにある告知で彼女の存在を確認する。
そして、今はもう更新されていません。
ミュージシャンという肩書きは大衆から認められた者の称号なのでしょうか?
多分、その通りだと思います。
自分が作った歌や曲を自分で形にして発信する。
それがミュージシャン。
でも、それだけではないです。
大衆に受け入れられないからといってミュージシャンでない理由はないのです。
私は彼女にとって大衆の一部分でしかないけれど、私は彼女のことをミュージシャンだと思っています。
彼女が今どこでどのような活動をしているか知らないけれど、私の中であの人出会った事や話した事や声、円盤に書いてくれた文字、どれをとっても確かな記憶です。

気分屋さん。
あなたは今どこで何をしていますか?
できたら自分をまだ歌っていて欲しいな。
私は今もあなたの歌声に魅了されています。

2018/12/26 寒空の記憶

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