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コロナ騒動下の株価分析①【2020年3月~7月】

 本稿では期間を短く設定したうえで、その間の株価(日本とアメリカ)を分析している。株価の変動そのものは経済学の対象ではない。しかしコロナ感染が世界に拡大し、その影響で大型不況の到来が予想され始めた2020年3月から同年7月下旬までの期間、株価は極めて特異な動きを示した。前日比の平均株価の騰落幅がニューヨーク市場では2,000$以上、東京市場でも1,000円を超える日が、たびたびあった。そして乱高下を繰り返しながら3月につけた最安値から7末にかけてニューヨークダウは45.1%、日経平均株価は32.7%上昇した。大不況が来るという予想が日を追うごとに現実的になっていく中で日経平均株価は5,000円以上上昇したのである。
 私達はこの短い期間の大きな変動が現代の金融市場の特質を反映していると考え、分析を加える事にした。2008年の金融危機当時、資本市場の大きな変動が実体経済を悪化させたように、資本主義が株式市場に大きく寄りかかって存立している事は事実である。この変動の分析は現代経済の構造を解明する一助になるかもしれない。つまり経済学になるかもしれないのである。
 本稿では期間を短く設定したうえで、その間の株価(日本とアメリカ)を分析している。株価の変動そのものは経済学の対象ではない。しかし、コロナ感染が世界に拡大し、その影響で大型不況の到来が予想され始めた2020年3月から同年7月下旬までの期間、株価は極めて特異な動きを示した。一日の平均株価の値動きがニューヨーク市場では1,000$以上、東京市場でも1,000円を超える日がたびたびあった。そして乱高下を繰り返しながら3月の最安値から30~40%上昇した。大不況が来るという予想が日を追うごとに現実的になっていく中で日経平均株価は6,000円強も上昇したのである。
 私達はこの短い期間の大きな変動が現代の金融市場の特質を反映していると考え、分析を加える事にした。2008年の金融危機当時、資本市場の大きな変動が実体経済を悪化させたように、資本主義が株式市場に大きく寄りかかって存立している事は事実である。この変動の分析は現代経済の構造を解明する一助になるかもしれない。つまり経済学になるかもしれないのである。

実物経済と株価の乖離

 証券市場、その中核である株式市場は経済学の対象である。なぜ株式制度は誕生したのか。資本主義における株式会社の意義。株式の流通市場としての証券市場と、狭い意味での金融市場の関係。利子率の変動と株式市場。株式市場を維持するために必要な法律、規制、会計制度。プライマリー・マーケット(発行市場)の役割、等。これらの諸題はすべて経済学の課題であり、だからこそ大学の経済学部には証券経済論が開設されている。
しかし、株価の動向については学問の対象ではない。株価が理論的にどう形成されているかは課題だが、その変動については対象ではない。なぜか?ひとことで言えば、その要因が多すぎること。偶然の要素や心理的要素が混入しているためである。現実を観察していても、株価が実物経済の動き、すなわち個別の企業の業績や、マクロ的景気指標とは関係なく変動することが見て取れる。
最近では、アメリカの高失業率(14.7%)が発表された翌日のニューヨーク市場が平均価格で400ドル以上値上がりした(5月8日)。また警察官の非人道的行動に抗議するデモが全米で発生し、一部が暴徒化、5,000人以上が逮捕されるなどのニュースが流れる中、やはり300ドル近い上昇を示した(6月上旬)。6月5日の金曜日に5月の失業率が発表された。13%と高水準だが、4月より少しだけ改善したことで(?)株価は800ドルの暴騰。しかし、次々と発表される実物経済についての数字はことごとく悲観的である。市場関係者は織り込み済と常に言うが、織り込むには変動が大きすぎる。
人々が失業に苦しみ、権力の暴力に一部の人が被害を受ける、そういう状況下に、まるで関係ないかのごとく株価が上昇する。アメリカでも失業率は景況を示す主要な指標だが、これに株価は反応しないどころか、逆の動きを示す。
GDP 成長率と株価の上昇率を比較してみると表1のようになる。

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図-1 
2019/12/31~2020/7/24までのNYダウと日経平均株価、ナスダック指数の値動き
2019年末を1として指数化

 期間①と③はGDP成長率と株式上昇率どちらもプラスだが、株価は増幅されている。増幅というのは株価の特徴である。期間②はリーマンショックを含んでいたため、株価はマイナス、しかし期間中のGDPはかなりのプラスだ。このように両者は逆に動くこともある。だから、株価の動きをみて景況を云々してはいけない。ポール・クルーグマン教授が言うように「株価は経済ではない」が、近年の大きな株価の動きが経済に大きな影響を与える事も事実である。
 以上が前置きである。あらためて、大不況が予想されるなかでなぜ株価は上昇したのか。順に考察してみよう。




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