コロナ禍がもたらしたモノ・コト~その4~

職人と経営者の両立という鎖から自らを解放した時、改めて自分は「職人タイプ」だということを自覚した。同時並行的にいろいろなことを考えるよりも、一つのことを追究しているときのほうが、はるかに充実感を得られる。むろん、これまでも薄々感じていたことではあったが、事業拡大意欲という表面的な欲望に覆い隠されていたのだ。

ひとたび自分が追究型の人間だと自覚すると、「では何を追究すればいいのか」ということは、考えるまでもなく心のうちに描かれた。それは、他者が自分で自分のキャリアを描き、そのキャリアに則って充実した人生を送ることを支援する、ということだった。

私はこれまで3回転職したのち起業して現在に至るが、職場を変えた動機は様々であった。家族の事情もあったし、その職場になじめなかったり不満があったり、そういった理由もないではなかった。しかし常に心の底にあったのは、「自分はどうしたいのか?」「自分はどこへ向かうのか?」という問いであり、その答えに適った職場選びをしていた。

社会に出て30年になるが、その間ずっと私は私のキャリアについて考え続けていた。それは自分の深層心理との対話であった。それゆえに、徐々に自分の望むキャリアに向かってらせん状に近づいて行った。もっとも、以前は「キャリア」という言葉は日本ではほとんど認知されていなかったが…。

つづく。

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