アイルランドの物乞い
アイルランドはホームレスが多い。
彼らは日本のホームレスのように公園などに住むのではなく、人通りの多い場所で紙コップを片手に路上に座り込んでいる。
その紙コップは小銭を入れてもらうための箱の役割をする。
昨夜の出来事。
バス停でバスを待っていると、物乞いの中年の男性が話しかけてきた。
「こんばんは。どうか1ユーロを私に恵んでくれませんか。」
私が
「ごめんなさい。」
と言うと、その男性は
「ありがとう。おやすみなさい。」
と私に声をかけて去っていった。
断られて「ありがとう」と言うことができる人がどうして物乞いにならなくてはならないのか。
理不尽な社会と1ユーロをあげられなかった自分に腹が立ち始めた。
財布にあった全ての小銭80セントを彼に手渡すと、
「どうもありがとうございます。」
と言い去っていった。
人生うまくいかなくとも、「ありがとう」と言える心だけは失いたくないと彼の後ろ姿を見ながら感じたアイルランドの春の夜の出来事であった。
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