見出し画像

高橋幸宏さんのこと

不思議なことに高橋幸宏のことは「ユキヒロさん」と呼びたくなってしまう。桑田佳祐や山下達郎にはそんなことを思ったことがないのに。親戚のおじさんのような感覚。

僕にとってユキヒロさんはビートニクスの人だった。YMOはもちろん知っていたけれど、1990年代以前のJ-POPをムーンライダーズ(または鈴木慶一)中心史観で掘っていった僕にとって鈴木慶一とユキヒロさんのThe Beatniksの方が身近なアーティストだ。そこからソロ作品に向かっていった。

僕が好きなシリーズに犬をテーマにした曲がある。ムーンライダーズに何曲かあるのだけれど(黒いシェパード、犬の帰宅、etc…)ユキヒロさんの曲にも数曲ある(し、ジャケットにも犬が出てくる)。「犬になれたら」は直球で好き。

高橋幸宏というアーティストはふと口ずさみたくなるようなメロディやフレーズを作る才能があったと思う。別に好きなわけでもなかったのにふとした時に「きーみーに胸キュン(キュン)」が頭に流れたり、ちょっとツラインダが頭の中に流れたり、口から洩れていたりする。(特に年を重ねてからは)決して派手ではないけれど空気のようにそこにあり、沁み込んでくるような音楽を作る人だった。あなたがいなくなってちょっとツラインダ。

ビートニクスやソロ活動のイメージが強い僕にとってユキヒロさんはボーカル、いわゆる「シンガーソングライター」の印象が強いのだけれど、もちろんドラマーでもある。

細野「僕の曲あるんだよ、ライディンて曲」
高橋「あ、それ僕の曲」
坂本「僕もそう」
細野「はっぴぃえんどの曲だよ」

ドラムをたたきながら歌うユキヒロさん。こんなにアクティブな慶一さんも(近年では)珍しい。

1980年代、時代の先端を切り開いたYMO、YMOとは「違うサウンド」を追及した初期ビートニクス、そしてソロ作品。90年代に入る頃、だんだんと等身大の”うた”に近づいていき、エレクトロニカと歌ものを取り混ぜたような音楽性に変化していく。もともと「喪失感の中の日常生活」を歌うことが多い人で、こうしたときに沁みる曲がたくさんあるのだけれど、最後はこの曲を聴きながらユキヒロさんを偲ぼうと思う。

忘れない 君が消えた月曜の朝
君が好き まだ君が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?