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Lô Borges / Dínamo

先日、ブラジル音楽についての記事を書きまして

その流れで聴いてみたアーティストです。Lô Borges(ロー・ボルジェス)は1972年デビューで、ミルトン・ナシメントゥとの共作「CLUBE DA ESQUINA(1972)」は名盤の誉れ高い作品だそう。今までノーチェックだったので2020年の新譜を聞いてみました。前半が素晴らしく、後半がちょっと息切れ気味だったもののブラジル音楽、ブラジリアン・ポップスの魅力が詰まったアルバムでさすがの出来栄え。マルコス・ヴァーリにしてもイヴァン・リンスにしても、ブラジリアン・ポップスってどうやったらこんな複雑なコードと流れるようなメロディを書けるんでしょうね。音楽理論的な分析というより、どうしてこういうサウンドに行きついたのかの発展過程が気になります。もともとブラジルにあった楽器の音階を、渡来楽器であるギターで再現しようとしていたらこういう形になっていったのかな。フラメンコやジプシー音楽もポルトガルから伝播して、コード感などが混じっていったのかもしれない。ブラジル音楽は深遠なので改めて掘り下げたいと思います。話を戻して、このアルバムは心地よく生活に溶け込む音楽が楽しめる良盤。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.O Mundo Gira Sobre Si
爽やかなコードカッティングから、差し込む光のような
朝のイメージ
ベースと共にボーカルが入ってくる、ゆったりとしたリズム
言葉のテンポは小気味が良い
自在に泳ぐようなメロディ、テンションをかけながら展開感もある
シーンの展開感がある、なんだろう、寄せては返す波のような
夏の終わりの海のような、穏やかな寂寥と少し幸福な追憶
これから新しい始まりのような
少し湘南も感じるSE、ラテン
美しいメロディ
★★★★☆

2.Dínamo
問いかけるような、口ずさむようなボサノバのメロディ
初めて聞いたが、カエターノヴェローソの緊張感とマルコスヴァーリのクールさを合わせて
そこにセルジオメンデス的なポップ感を加えたような
心地よいけれど単に流れるだけでなくフックと気品がある
ただ、聞き心地、肌触りはなめらか、流麗、流線型
潜水艦のようだ
やはりブラジリアンカラーだろうか、トロピカルな潜水艦
静かに波を切って終曲、軽快でポップ
★★★★

3.Apontando o Norte
少しテンポが落ちるが曲調は明るめ
散歩するような、和音アルペジオのようなハーモニーから
歌が入ってくる、穏やかなバッキング
ところどころシンコペーションが効いている
ボーカルパターンはけっこう言葉数が多い、やや後期ビートルズ的なメロディ
アイアムザウォルラスか、同じボーカルメロディに対してコードが下がっていく
UKサイケロックに通じる空気感がある曲
★★★☆

4.Quantos Janeiros
パーカッションとキーボード、ギター
かがり火のような静かな情熱
ボーカルが入ってくる、景色が夜っぽくなった
ギターの音色がエレキでリバーブが効いている、フュージョン的な音だからか
洗練された大人の夜、摩天楼かバーか
サビは泣きではないが哀愁があるメロディ、ボーカルは淡々と紡いでいくがメロディは哀切
物語性を感じる、出会いと別れか、大人の恋の物語
少し歌い方、語尾の伸ばし方が鼻にかかっている、賛美なのか未練か
間奏はサーフ的なギター音、音数は少ない
そのまま終曲
★★★★

5.Lava do Vesúvio
アコギのアルペジオとピアノ、テンションからメジャーへ
デミニッシュかな、なんとなくギターコードの形は分かるがなんというコードだったか忘れてしまった
少しづつコードが表情を変えてボーカルが続く
穏やかに展開する、途中からコードがけっこう分かりやすい感じに
ルート音が全音で動いていく、半音でテンションをかけない
ヴァースでは半音進行が半分ぐらい出てくる
コーラスでは全音進行で展開感が出る
★★★☆

6.Desvario
弾むようなピアノのコードから
優しい和音、ボーカルが入ってくる
空間音響的な、リバーブの効いたギターカッティングが入る
少し夢見がちなボーカル、音の粒ははっきりしている
ピアノの音がクリスタルのようにきらめく、トライアングルのような金属音も入ってくる
全体的に煌びやか、穏やかな光を感じさせる音像
歌のメロディは穏やかに流れていく
振り返りながら、物思いをしながら町を歩く
散歩に合いそうなな曲
★★★★

7.Altajuda
ギターコード、四つ打ち
UKサイケ、ビートルズ的なリズム、タンタンタンタン
ボーカルは表情を変えていく、歌うというより紡ぐ
かなりサイケなハーモニーが入る
サージェントペパーズのような、かなりサイケな音像
フラワームーブメント、ただ、希望にあふれた、あるいは現実を変えようとする意志は感じない
穏やかな、時代を見つめるような、過去を懐かしむような感触
時代の流れを感じる
歌メロもとらえずらい、ところどころ不協和音的なフックがある
★★★☆

8.Refúgio
ボサノバのリズム、少し秘めたような熱
トーンは穏やか、アルペジオで広がっていくような和音
引っ掛かるメロディ、どこかダンディな哀愁がある
語尾の余韻が消えていく、歌い方がどこか弱弱しさがある
言い切らないというか
音程や声量はしっかりしているので、表現の仕方の話
静かな声なのによく通る、ということだが、静かな歌い方、どこか抑えた歌い方
揺れる心情を感じる
コードもメジャーとマイナーの中間をたゆたう
★★★☆

9.Outra Canção
演劇的な、少し様子をうかがうような
ジャジーな響き、このリズムはなんだったかな、タンゴのリズムか
息をひそめて踊る、ひっそりとした路地裏のステージか
ゆったりとしたスローダンスのリズム
ボーカルメロディは自在に踊る、ゆらめくようなコード
ピアノとギターがメロディをつなぎ続ける
ダンスなのか、千鳥足なのか、そんなリズム
少しもたついているような、あるいは優雅で軽やかなステップなのか
どこか重心が定まらない、メロディもリズムも
★★★☆

10.O Caos da Cidade
バラード調、明るい感触だがメロディは開放感は少ない
音作りは開放的だが、コードはテンション、半音進行が多い
泡のような、タブラのようなパーカッション音
空気を吸い取る渦のような音
これもどこか潜っているような感覚がある
ブラジル音楽のコードは少しづつ表情を変えていく
耽美的というか、潜っていく感覚が生まれやすい気がする
この曲はそこまで緊迫感は強くない、適度に開放感がある
4小節のうち1小節はメジャーコードというか、開放感のある和音が入ってくる
旅立つようなピアノソロで終曲
★★★☆

全体評価
★★★★
心地よいアルバム、コード、作曲はさすがのベテランで自在に操っている感じ
クールながら人懐っこさ、陽気さがあり、気品もある
洗練されているが、ポップなメロディもあり、口ずさめる
ずっとゆったりとした歩くようなリズム、生活に寄り添うようなリズム
日常に溶け込む音楽

リスニング環境
朝・家・イヤホン

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