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新しい音楽頒布会 Vol.13 オルタナティブメタル、パワーメタル、メロブラスラッシュ、フレンチポップ

12月になると大型リリースが減ってきますね。あとは年間ベストの季節になり、2022年の振り返りの時期になるようです。当ブログでも今年最後の頒布会。新譜を紹介するのは今回までにして2022年年間ベスト候補を聞き直したいと思います。

さて、年内最後は今週リリースの新譜は少なく「今年リリースされたけれど聞き逃していたもの」を消化しつつそこから3枚チョイスしました。

おススメ1:Alter Bridge/Pawn & Kings

オルタナティブメタルには「USで大人気だけれど日本では知名度がほどんとないアーティスト」がけっこういて、その代表格とも言えるのがCreedだと思います。そのCreedのボーカル以外のメンバーが組んだのがアルターブリッジ。Creedのメインソングライターであったギタリストのマーク・トレモンティが作曲を担当しているので実質的に「ボーカルが変わったCreed」ともいえる。ボーカルはVelvet Revolver以降、ガンズのSlashのソロ活動のパートナーとも言えるマイク・ケネディ。Creedで全米制覇(2ndアルバムは1000万枚以上売れた)しただけあり、フックのある作曲能力は健在。90年代後半以降、USで大人気のバンドがなぜか日本ではあまり話題にならなくなりましたが今フラットに聞くと「最新型のUSハードロックの王道」です。ちょっとオルタナやグランジっぽさはありますが、今聞けばもはや普通の「ロックの音」だし、どの曲も印象的なメロディがちりばめられています。僕はあまりオルタナティブメタルやニューメタルを聞いてこなかったんですが、フラットに今聞くとかっこいいですね。


おススメ2: Fellowship/The Saberlight Chronicles

UKから現れたパワーメタルの新星、Fellowship。王道のパワーメタルなんですが、とにかく音像が明るい。ポジティブなエネルギーに溢れています。同じUKのDragonforceのような「超絶技巧でメタ化されたパワーメタル」でもなく、むしろそれぞれのテクニックは控えめ(下手なわけではなく、前面に技巧を押し出さない)。ボーカルも下手ではないものの超人的ではありません。それゆえにか曲がいい。バンドサウンドとしてうまくまとまっていて聞きやすい。一つ一つの目新しさはほとんどないけれど、説教臭さやテクニックを見せつける感じがなく自然体。「肩の力が抜けた自然体のパワーメタル」って音楽ジャンル的にけっこうレアです。それでいて退屈な感じ、のっぺりした感じはなく、自然体なのにドラマティック。ボーカルラインの低音の使い方がうまいんですね。高音だけでなく低音部分も多くダイナミックレンジがある。あと、ギターソロとキーボードソロも派手ではないもののネオクラシカルをきちんと押さえた構築美があります。プロダクションもそこまで迫力がないのですが(どちらかといえばB級感)、決して音が悪いわけではなく心地よい音作りになっている。MVもさまざまなお約束を踏まえながら「本人たちが楽しんでいる」感じが最高です。あと、けっこうメジャーコードが多く明るいメロディなのも特徴です。このジャンルは根強く何気に新譜も新人も出続けているのですが、2022年に現れた期待の新星ですね。個人的にはアイスランドから現れたPower Paladin以来の衝撃。


おススメ3:Autonoesis/Moon of Foul Magics

カナダ、トロント出身のAutonoesisは謎の多いバンドです。あまり情報がなく、Metallumにもメンバー情報なし。Facebookはあるもののこちらも情報はなく、ライブもまだ行っていないのかな。誰かの覆面プロジェクトなのか、あるいはDIY的な宅録アーティストなのかもしれません。ボーカルがほぼ聞こえないというか音に埋もれていて、ギターの音が前面に出てきます。メロディックブラック的な音の塊の上にスラッシーなギターが乗る構造。ただ、そのギターリフがカッコいいんですよ。スラッシュメタルとしては曲の骨格がかっこよくてなんだかんだ胸が熱くなる。ギターリフ好き、メタル音楽をギターに注目して聞く人は好きな音なんじゃないかなと思います。ボーカルはほとんど効果音というか、アンビエント的です。主役はギター(とそれを盛り上げるドラムの連打)。バリバリのアンダーグランドメタルですが耳を惹かれるかっこよさがありました。全9曲66分、1曲目は雰囲気重視のイントロで、2曲目はいきなり9分越え。商業性を全く考えず「好き」や「(アーティストの考えた)カッコいいメタル」を突き詰めた作品。ごちゃごちゃしたカオス味はちょっとジャパニーズハードコア感もあったり。


おススメ4:Thomas Dutronc & Jacques Dutronc/Dutronc & Dutronc

60年代のフレンチポップを代表する巨人、ジャック・デュトロン(Jacques Dutronc)。彼と歌姫かつ女優であったフランソワーズ・アルディの間の子供がThomas Dutroncで、本作は親子によるデュエット作品。ミシェルポルナレフも最近ピアノ弾き語りの新譜を出したし、フレンチポップの巨匠たちは元気ですね。ジャックは1973年生まれで現在79歳。ポールマッカートニーとほぼ同世代。息子のトマ・デュトロンも1973年生まれで49歳。いい大人のデュエットですね。音楽も大人の哀愁も感じる洒脱なフレンチポップ。これからのホリデーシーズンにも合いそうな音像です。ただ、洒落ただけでなくきちんと「今の音」として攻めたアレンジの曲もあり、ロック耳で楽しめるアルバム。今年最後の新譜紹介はこのアルバムで締めくくりたいと思います。


以上、今週のおススメ4枚でした。それでは良いミュージックライフを。

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