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新しい音楽頒布会 Vol.11 グランジゲイズ、Nuメタル、エピックドゥーム、ハードロック

US2枚、スウェーデン1枚、カナダ1枚の計4枚をご紹介。今週はすべて英語のアルバムです。US色がやや強め。

おススメ1:Fleshwater/We're Not Here to Be Loved

US、マサチューセッツ州からのニューカマー、フレッシュウォーターのデビューアルバム。グランジやシューゲイズを合わせたようなサウンドでグランジゲイズとも形容されています。90年代に直結した音。曲構成の先が読めずスリリングな展開、この辺りはオルタナティブロックやグランジのセンスですね。Anthony DiDio (ボーカル、ギター)、Marisa Shirar (ボーカル)、Matt Wood (ドラムス)、Jeremy Martin (ベース) の4人組で男女ツインボーカル。Anthony DiDioとMatt WoodはVein.fmというマスコアバンドで2013年から活動しており、2018年にリリースしたアルバム「Errorzone」は高評価(ピッチフォークで7.8など)でした。フレッシュウォーターはサイドプロジェクトという扱いになるようです。轟音の中に美しいメロディが漂う、美醜、激情と酩酊のコントラストが印象に残るアルバム。名盤の風格あり。リリースはNY州のトロイにある Closed Casket Activitiesから。ゴリゴリのハードコアやエクストリームメタル系のレーベル。


おススメ2:Disturbed/Divisive

「メタルの未来」とオジーオズボーンが評したUSメタルの雄、ディスターブドの新譜。前作「Evolution(2018)」がやや実験的というか拡散した内容で、セールス的にも評判的にもあまり芳しくない結果でしたが、本作はその反省からかめちゃくちゃ筋肉質で「ディスターブドらしさ」を前面に出した内容。2002年の2ndアルバム「Believe」から2015年の5thアルバム「Immortarized」まで5作連続で全米1位を取っていた記録は前作で途絶えましたが、本作はどうでしょう。一時代を築いたバンドだけあり、本作は完成度の高い力作。

このバンドの特徴はヒップホップ的なリズムを取り入れたこと。ドラムパターンやリズムがかなり複雑なんですよね。同じBPMながらドラムがずっと変化し続けています。Limp Bizkitほどヒップホップ色が強くありませんが、リズムだけ見ればかなりヒップホップ的なパターンを取り入れている。そこにグルーヴメタル(Pantera以降)のギターリフ、そしてカントリー的な歌メロが乗る。ヒップホップ+ニューメタル+カントリーというなんというか「USの若者が好きそうな音」を全部ミックスしたような音。だから全米で大ヒットしたし、オジーからは「メタルの未来」と言われるし、(生き残った中では)NuMetalの旗手的な扱いをされつつも下世話すぎて評論家からはあまり評価が高くありません。また、ヒップホップ的なリズムやカントリー的なメロディは日本のメタラーにはそれほど受けないので日本での知名度も今一つ。名前は知られているけれど熱狂的なファンってそんなにいない気がします。2003年以降単独公演がなく、2016年にKnotfestで来日しただけ。日本と欧米での人気に差がありすぎるのでしょう。リズムパターンに意識を向けて聞いてもらうと面白いバンドだと思います。


おススメ3:Candlemass/Sweet Evil Sun

スウェーデンの誇るドゥームメタルの重鎮、キャンドルマスの新譜。本作は中盤から後半にかけてミドルテンポでドゥーミーな曲が続きます。人間椅子のヘヴィな曲みたいなリフ。ボーカルが力強くなった人間椅子みたいな感じですかね。日本での知名度ってキャンドルマスと人間椅子どちらが高いのだろう。キャンドルマスは結成が1984年、レコードデビューは1986年。人間椅子の結成は1987年なのでキャンドルマスにも刺激を受けたと思います。同じくブラックサバス、トニーアイオミをルーツとしながら、一周して似たような境地にたどり着いているのが面白い。2019年に初代ボーカリストであったJohan Längqvist(ヨハン・ランキスト)が復帰し、ランキスト参加作としては3枚目のアルバム。いろいろとメンバーチェンジもあったバンドですが、今のメンバーは全員1986または1987年のアルバムに参加しているメンバー。ほぼ初期からのメンバーが集まっています。ベテランの技と結束を味わえるアルバム。絶妙なバランスがこれぞまさに職人芸。ドゥームメタルの素晴らしいアルバムって魔術的ですよね。


おススメ4:Nickelback/Get Rollin'

カナダのハイオクタンロック野郎たち、ニッケルバックの新譜。ニッケルバックも根強い人気ですよね。一時期は「似たような曲ばっかり」などと批判されていましたが、本作はけっこうバラエティに富んだ作品です。デフレパートっぽさもあったり。80年代のアリーナロックやハードロックを現役感ある音で鳴らしているバンドだと最高峰なんじゃないですかね。新機軸はあまりないですけれど、やっぱり聞いていて楽しい。ニッケルバックはめちゃくちゃ嫌われているバンドで、一時期の出川哲郎みたいな「嫌われ者キャラ」が定着しているバンド。大ヒットしていたときにかなり天狗になり各所に喧嘩を売りまくり炎上したことからのようですが、普通に音だけ聞けば現在最高峰のハードロックバンドの一つだと思います。あと、本作はジャケットの印象どおりちょっとカントリーとかアメリカーナ音楽の色が濃い目。アコースティックもうまく取り入れています。ただ、カナダのバンドなのでゴリゴリのカントリーではありませんし、ボンジョビのようにレイドバックしすぎてもおらずハードロックとしてのエッジと展開の小気味よさがあります。これぞパーティーロック。


以上、今週のおススメでした。それでは良いミュージックライフを。

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