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【NPO書評】板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh

昨年冬に行った東京国立近代美術館「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」。
棟方志功の作品はそれまでにいろいろ見てきましたが、その生涯を通じて、時代時代の作品を一気に見ることができるのは、歴史を感じることができ、とてもよかったです。
という流れで、オーディオブックのAudbleで見つけた本がこちらです。

棟方志功をテーマにした、原田マハさんの長編アート小説です。
原田さんの本を読んだのはこれが初めてでした。
(一冊、積読しているものがありますが。)

棟方志功の妻チヤの目線からアーティストの人生を描いたものです。

板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh
2024/3/6
原田 マハ (著)

版画家・棟方志功(1903-1975)。
妻チヤの出会いから太平洋戦争の時くらいまでのエピソードが中心の小説です。
世界のムナカタになる一歩手前までのお話ですね。
芸術家の半生を小説形式で読むのは面白いですね。
さらに、芸術家を主人公にした物語ではなく、そのパートナーの立場からの物語なので、構成もよかったです。
あの作品を生み出している棟方志功がどんな生活をしていたのか、芸術家としてどのように成功していったのかなど、近くで支え、見ていたチヤの視点で描かれているのが、小説としてすごくリアルに感じます。

今回は、オーディオブックだったので朗読というのもとても効果的だったと思います。しかも、朗読は、女優の渡辺えりさんです。
棟方志功もチヤも、どちらも青森出身。
小説の文章も青森の方言が地の文章になっています。
それを、渡辺えりさんがお芝居のように感情いっぱいに朗読していますので、臨場感がすごかったです。

棟方志功の小説ですが、つぶさな伝記というわけではなく、いくつか象徴的なエピソードが中心で構成されています。その中で、棟方志功が尊敬する柳宗悦らに出会って作品を認められ、彼らが棟方志功のサポーターになっていく話がとてもよかったです。

今回は、棟方志功の小説ですが、主人公を妻のチヤにすることで、別の視点からメインテーマを探っていく構成となっています。これは、NPOが取り組む問題を伝える時にも有効な手段ですね。活動の受益者にスポットをあてるだけではなく、その周囲の人にフューチャーすることで物事を複層的に見ていくことができます。さらに理解を深めていくことができると思います。
そんなことを感じながら、ぜひ、棟方志功ワールドに没入してみてください!


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