予想もしなかった旅の結末
昨年のM1グランプリ決勝戦。カベポスターが大声大会
というネタで、ゆふいんと叫ぶのを聞いた。博多に来て
もうすぐ2年。ゆふいんは日帰りも可能な距離だが、
訪れずにいた。なんとなく敷居が高いと感じていた。
でも大阪に住んでいた頃からなんとなく憧れていた。
そして今回初めてゆふいんを旅した。山並みを眺め、
町を肌で感じ、町の印象は親しみやすいものとなった。
思えばその日を暗示するかのような空模様でも
予定外もありながらも楽しいゆふいんの旅
そして、ゆふいん文学の森を後にして
金鱗湖には美しい風景が広がっていた
バーテンダーに挨拶をし、店の外に出る。もうすっかり
辺りは暗くなっている。19時26分のゆふ6号。久しぶり
に特急を予約し、最後まで旅を楽しむつもりでいた。
金鱗湖からゆふいん駅まで、自転車を押しながらでも
歩ける距離。のんびりと歩いて帰ろうと思っていた。
山猫を出て自転車へ戻ろうとした時、辺りに予想以上
の暗闇が広がっていた。自転車は少し離れた所にある。
「あれ、自転車どこやろ」停めた場所は覚えているの
だが、目印になるものが何も見えない。少し進めば、
わかるだろうと思ったが、思いに反して、暗がりは深く
なっていく。特急は予約しているし、駅まで時間通り
につかねばならない。少しあせる。金鱗湖の畔。足元
はあまりよく見えてない。道は蛇行していたようだ。
踏み出した足が地につかない。その瞬間、自分の体は
回転し、地についていた。どうやら浅い水路に落ちた
ようだ。右腕と口元を強く打つ。頭が真っ白になるが、
とてもまずい状況だということはわかる。右腕は少し
も動かせない。口も切ったようだ。ふしぶしは痛いが
幸いにも歩くことはできる。とにかく駅へ向かおう。
ほど近くに自転車はあった。そこから自転車を押して
歩く。リュックからタオルを取り出し、口元にあてる。
今日使えなかったタオルがここで役にたった。駅まで、
とても遠く、長く感じながらも、自転車を押して歩く。
ゆふいん駅につく。朝、降り立った時、まさかこんな
状態でゆふいん駅に戻ってくると予想もしなかった。
不安げな空の下で始まった旅。予定外のことも楽しみ、
ゆふいんを満喫した最後で、暗転することになった。
こんな予想外の結果になるとは思ってもいなかった。
あの一瞬まで、本当にゆふいんの旅を楽しんでいた。
バーテンダーのお気をつけてお帰り下さいと言う声は
私の耳に届かなかったのだろうか。ほんの一瞬の気の
緩みとあせりが、その一日を一転させた。小学生の頃、
家に帰るまでが遠足と、言われたことを思い出した。
ゆふいんの旅もこれでおわり。それはとても楽しい旅
であった。最後のあの一瞬から自宅までの苦痛の時間
を除いては。右腕が痛くて背もたれも使えず、特急に
2時間も揺られ、口にタオルをあてつつ痛みに耐えた。
この年になり成長しているようで、そうではなかった
ようだ。ただこれからも人生は続くし、成長もしたい。
この経験を糧に、今度は暗がりには十分気をつけよう。
旅をすればいろんなことが起きる。しっかり反省して、
これからも旅を続けよう。終わりよければ全てよしと
言うが、終わりが悪ければ全てが悪いわけでもない。
と今では言える。あの傷も癒えた。ゆふいんの出来事も
いつか笑い話に。そうすれば結局は全てがよしとなる。
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