ゲイバーに初めて行ったら朝方おねえになりかけていた話(その弐)

(え、どうゆうこと?俺ゲイじゃない。)

僕は、場違いな店に来てしまったことに恐れ慄いていた。

「アナタたちゲイカップルかしら?カップルは今日10%OFFの日よ。」

マスターが確認のために聞いてきた。

「いやいや、僕はノンケです。」

取りあえず全力否定しておいた。

「わたしはちょっとお、自分が分からなくてぇ、でもおっきいのが好き」

(だれ?!)

隣のツレは僕の知っているツレではなくなっていた。

(こいつ、図ったな。)

「あら、そうなの?じゃ、今日はっきりさせましょう!笑。まあ、ノンケでも大丈夫よ。今日はミックスの日だから」

動転した気持ちのまま、とりあえず席につき、お酒を頼んだ。


20時に店内に入り、0時を回ったころ、既に僕らは出来上がっていた。

ツレは、「おっきいのが好き!」と言う言葉を連呼しており、ゲイバー常連のイケメンと濃厚な接吻を隣の席で交わしている。

僕といえば、マスターにそっち側の世界へ勧誘されていた。

「アナタ、こっちの世界にくれば人気出るわよお」

「えー、そうかしら?女の人はみんな冷たいのよね。」

「フフ、アナタ女言葉になってるわよ。」

「私もソッチなのかもしれないわ。たぶん、ネコね。」

ノンケは、僕一人だけという異様な空間は僕を新しい世界へ誘ってきた。

僕は間違いなく片足を突っ込んでいたろう。

午前3時を回ったころ、僕は尿意を催し、トイレに向かった。

店内には個室のトイレが一つしかなかったため、

僕の前に5.6人並んでいた。

(長いなぁ、漏れそうだよ。)

そんな矢先、僕は背中を何者かに押されて、前に並んでいた人たちとトイレへ閉じ込められた。

外から鍵もかけられた。

「え、?!なになに?」

それは恒例の行事だったのだろう。

トイレ内では濃厚接触の極みだった。

あれやこれやが繰り広げられはじめた。

「出して。助けて!」

僕の声は店内のカラオケの音のため届かず、格好の餌食となっていた。

つづく








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