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      春を待って


 何ヶ月振りかでデパートへ足を運びました。
売り場は春一色でした。
入学式に着る服を選ぶ親娘の姿を見かけ、心が和みます。
書籍売り場をひと回りして、隣のメガネ売り場によってながめ、いろんな色と形のフレームを手にとり、その中の赤いフレームを合わせてみました。派手かしら? 80すぎたのに…………

 ふと、逝って10年近くなる叔母からの手紙のなかの短歌を思い出しました。
   八十路なれば せめてはなやぐ色欲しと
     眼鏡のフチの朱をあがなへり
 
 聡明で、軍人の妻であったことを忘れず凛としていた叔母でした。

 「これになさいますか、レンズはどうされますか」と問われ、グラデーションでなく、今より濃い色にして、目のふちの皺が目立たないようにしたいの。 出来上がりが楽しみでもあり、不安でもある。

 娘の置いて行った内裏雛を、今年で終わりかもしれないと思いながら飾ってみた。菜の花と桃のひと枝を添えて。



#春   #眼鏡   #内裏雛