見出し画像

「ソーシャルアクション」という概念がオワコン化する説

ソーシャルアクションは、これまでNPO法人や一般社団法人、任意団体が主導してきた。しかし、今後は「株式会社でソーシャルアクションをする」というトレンドが広がっていくと思う。もっというと「ソーシャルアクション」という概念自体がオワコン化する気がする。

  • そもそも「ソーシャルアクション」とは何か?

  • なぜ「非営利組織」がソーシャルアクションをしてきたのか?

  • なぜ「株式会社」がソーシャルアクションをするトレンドが来るのか?

  • なぜ「ソーシャルアクション」はオワコン化するのか?

あたりを整理していこうと思う。


ソーシャルアクションは非営利組織のもの?

ソーシャルアクションとは?

ソーシャルアクションとは、社会的な問題や不公正に対して、当事者や支援者が共に行動し、社会の変革を目指す活動のこと。以下の3つの機能がある。

  • 代弁(アドボカシー):当事者の声や権利を代表して、政府や行政、企業などに働きかけることで、社会福祉制度や政策、サービスなどの改善や創設を求める

  • 地域組織化:当事者や支援者が地域の仲間と連携し、自らの力で問題を解決するための組織やネットワークを作る

  • 世論形成・啓発:社会的な問題や不公正に対する理解や関心を高めるために、メディアや教育などを通して、情報や意見を発信する

まぁ、なんとなくわかるようで、わからんと思う。

セクター論とソーシャルアクション

セクター論とは、社会を担う組織や活動を以下の3つのセクター(部門)に分けて考える理論。

  1. 行政セクター(第1セクター):国や地方自治体などの公的機関で、税を主な財源とし、公共財や社会福祉サービスなどを提供するセクター

  2. 営利セクター(第2セクター):企業などの民間営利組織で、サービスや商品を供給して利益を追求するセクター

  3. 非営利セクター(第3セクター):NPO法人やボランティア団体などの民間非営利組織で、社会的な問題やニーズに応えるために活動するセクター

ソーシャルアクションは、一般的に「非営利セクター(第3セクター)」の活動とされる。「非営利セクター」の役割は、「行政セクター」と「営利セクター」の「足りない機能を補うこと」にある。

つまり、「国や株式会社から置いてきぼりにされて、困ってる人に光をあてる活動」と捉えるとソーシャルアクションの本質がわかりやすい。ソーシャルアクションの究極の目的は「社会課題を解決し、必要な機能を行政や営利組織に内在化して、解散すること」とも言える。

株式会社がソーシャルアクションできないと思われている背景

株主主権論

株式会社は、株主の利潤最大化を第一目的に意思決定し、行動する。そのためソーシャルアクションはできない、というのが旧来の考え方だと思う。

セクター論と株式会社

そして、そもそもソーシャルアクションが「行政」「民間企業」の「足りない機能」を補うことなので、「民間企業」である株式会社の活動はソーシャルアクションではないという見方をする人もいる。

僕個人としては、営利活動のソーシャルアクション化がこのまま加速した結果、ソーシャルアクションという概念自体があまりカテゴライズする意味のないものになってくると思う。

ソーシャルアクションの株式会社化

ソーシャルアクションは行政や株式会社が置いてきぼりにした人を助ける活動であったはず。しかしながら、「株式会社でソーシャルアクションをやる」という一見すると矛盾するような事象が最近は増えてるように思う。

  • 既存の株式会社(営利法人)がソーシャルアクションをしていく潮流は止まらないこと

  • ソーシャルアクションをやる上で株式会社を使うメリットが増えてきていること

の2つの背景がある。

【1】意義しか勝たん

商品のコモディティー化が進みすぎた結果、意義のない商品は売れない時代になった。そこにSDGs/ESG投資の波が加わって、もはや「社会課題解決」という言葉自体がコモディティー化している。「社会課題解決」という言葉が僕はあんまり得意じゃないのだけど、多くの人はもう聞き飽きてるんじゃないだろうか。

「意義によって差別化できるブランドは強い」とかそういうレベルのお話じゃない。意義がない商品は売れない。もしくはとてつもない薄利多売を余儀なくされて資本力に負け淘汰されてしまう。「意義」を持たない株式会社はもはや経営困難な時代になりつつある。

日々、一生懸命営業しているけど、結局意義しか勝たんのよ。

そのため、セクター論でいう「営利セクター」が、これまで「非営利セクター」が担ってきた領域を良い意味で代替してきているし、この変化はおそらく止まらない。

【2】株主管理がしやすくなった

「多数の個人株主のマネジメント」が現実的なものになったことが、ソーシャルアクションの株式会社化を更に推し進めると思う。つまり、「NPO法人や一般社団法人でやるより、株式会社でやった方が、ソーシャルアクションしやすいよね」という理由で株式会社が選ばれるようになってくる。

株式投資型クラウドファンディング

株式投資型クラウドファンディングでの資金調達が少しずつ増えてきている。1000〜3000万円の調達を100〜300人の個人株主からすることが多い。

スピーディーに資金調達して社会課題解決に向き合う時間と人員を確保したり、社会課題解決に共感する投資家や消費者を株主として巻き込み共に利害を共有しながら活動に挑戦できるメリットがある。

一方で、ソーシャルアクションに活用する文脈で言うと、10万円程度出資できる人しか巻き込むことができず、「貯金のない方を巻き込めない」というデメリットもある。

DAO(分散型自律組織)

株式投資型クラウドファンディングのデメリットを補うのがDAOの仕組みである。DAOとは、分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)の略。ブロックチェーン技術を用いて、「人間」ではなく「プログラム」が経営する組織のこと。

もし「権力者が理事会を牛耳らず、現場で貢献してる人が組織の方向性を議論し、透明度高い意思決定ができるNPO法人」があったらどうだろう。もし「貢献する従業員に1日単位で第三者割当増資ができる株式会社」があったらどうだろうDAOというのはまさにそれが実現できる仕組みである。

所得や資産に関係なく、生活保護や貯金のない方もDAOでの活動に巻き込むことはできる。

オワコン化するソーシャルアクション

ソーシャルアクションのあり方は今後どう変わっていくだろうか。

最も危惧しているのは、「ソーシャルアクション」という言葉が「非営利セクター」の狭い世界の内側の言葉としてガラパゴス化していくこと。会社や学校で、誰も見ていないレポートや資料作成に追われたり、何の意味もない会議をするように「ソーシャルアクション」のための「ソーシャルアクション」が専門家と呼ばれている人の自己満足のために消費され空洞化していくのはなんとも悲しい。

ちゃぶ台を返すようだけど、法人格もセクター論も正直どうでもいい各論であり本質的に社会にどんな価値を残せるかが問われている。株式会社がやってる「なんちゃって社会貢献」へのアンチテーゼがもっと非営利セクター(第3セクター)からも出てくるべきだし、逆も然り。

ソーシャルアクションはNPO法人や一般社団法人や任意団体がやるものではなく、株式会社でやるトレンドが今後起きて、やがて境界線はどんどんなくなっていくと思う。

そんな社会では、「ソーシャルアクション」と呼ばれる活動は何を指しているんだろうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?