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詩歌:すりぬけてゆく

三十代半ばで、独身の派遣労働
同僚からも兄弟からも共感されない、俺は泡沫
富めるものがさらに富む街、贈賄と汚職の左遷報道
安酒と土手煮で、あがる口角
 
林立するビルのあいだ、たよる宛もなく
手にした傘を向ける、顔もしらない英雄に撃つ
ブルーカラーがビルにはりついて汗をかく
作業員は、くらい部屋でそのときを練習しつつ
 
花を抱えてベビーカーを押す女性がいた
いつしか忘れてしまった愛おしさ
俺たちはハード的に与えられた機能しか
 
うまく扱えなくなったのか、価値観も立場も固定化した
スワイプするニュースが俺に叫んでいる、知っとくれ
だって、あの殺人犯は俺の一個上
 
 

・交叉韻 ABAB CDCD EFF EGG
A「派遣労働/左遷報道」ア・エン・オー・オー
B「泡沫/口角」オー・ア・ウ
C「宛もなく/汗をかく」ア・エ・オ・ア・ウ
D「英雄に撃つ/練習しつつ」エイ(エン)・ウー・イ・ウ・ウ
E「女性がいた/固定化した」オ・エー・ア・イ・ア
F「愛おしさ/機能しか」イ・オー・イ・ア
G「知っとくれ/一個上」イッ・オ・ウ・エ

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/