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詩と曲を作るひと。押韻論やってる。

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詩歌論:詩のちからはどこにあるか

 こんばんは。Sagishiです。  唐突ですが、皆さんは詩歌において「やってはいけないこと」がなにか分かりますでしょうか、そうですね、技法の解説ですね。  詩歌のせかいにいると、その界隈では公然と知られているような技法でも、それを表ではだれも話していないということに、どこかでなんとなく気づきます。  だれかが「話してはだめ」と言っているというわけでもなく、なんなら大学などで詩歌の授業をうければ、ふつうに説明もされていると思うのですが、しかしオープンなブログとかでは書い

    • 文化盗用"cultural appropriation"について

       こんばんは。Sagishiです。  今日はあまり気が進みませんが、文化盗用"cultural appropriation"について話していこうと思います。あまりにも軽率な意見をもつひとが多すぎるので、自分自身の考えをまとめるためにも書こうと考えました。 1 文化盗用とは 文化盗用"cultural appropriation"というのは、わたしの理解では、他国・他文化のnation(共同体)あるいはunity(団結)の核心的アイデンティティを無理解・無遠慮に侵害・毀損し

      • 川原繁人『言語学的ラップの世界』にツッコミを入れまくる記事

         こんばんは。Sagishiです。  先月、川原繁人さんの『言語学的ラップの世界』という本が出版されたので読んでみました、という記事です。  結論からいえば、この本には著者の推測・思い込みによる記述が多数含まれており、科学的な根拠がなく、妥当性に疑義があるような内容、また曖昧な表現が散見されます。  今回の記事では、わたし自身の考えの備忘録も兼ねて、色々とツッコミを入れていきます。舌鋒鋭い場面もあるかと思いますが、とはいえラップをまともに研究題材にしたことがある学者は貴

        • 詩型論:「複数音制約」と押韻詩型

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、前回書いた「複数音制約」と絡めて、日本語の押韻詩の詩型論を書いていこうと思います。連載記事的な。 1 前段/モーラリズム 以前書いた詩型論では、日本語の二重韻律構造をもって、韻律定型を構築することの難しさを記述しました。  しかし、結局のところ日本語はモーラリズム言語なんだから、モーラを基礎韻律単位として詩型を構築するしかない、と考えを落ち着けました。よって今後は、どのようにしたらモーラリズムを使って詩型を構築できるのかを考

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        詩歌論:詩のちからはどこにあるか

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          日本語の押韻論:「複数音制約」について

           こんばんは。Sagishiです。  今回は日本語の押韻にとって特徴的な問題である、「複数音制約」について書いていきます。 1 複数音制約 日本語は、複数音で1つのアクセント(トーン)を構成する言語です。最低でも1音節2モーラ存在しないと、日本語は基礎的なアクセントを構成できません。  「複数音で1つのアクセントを構成する言語」というのは、現在わたしが情報として知る限りだと、日本語の他には韓国語・慶尚道方言しかない状態です。  英語やイタリア語やフランス語のストレス音

          日本語の押韻論:「複数音制約」について

          日本語の超重音節と押韻論

           こんばんは。Sagishiです。  今回は新しい押韻論の構築にむけて、現在導入中の理論をまとめていきたいと思います。 1.日本語の超重音節1-1.CCVG/CCGVG  これまでわたしは「日本語には超重音節(3モーラ音節)はない」という前提で押韻理論を組み立ててきましたが、どうもあるという前提で組み立てたほうが良さそうだと分かってきました。  その理論的証拠としては、単語の句音調を確認することで分かります。  「白菜」という単語の句音調は「サ」に起こっています。こ

          日本語の超重音節と押韻論

          対照押韻論:フランス語の導入

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、フランス語のrhymeスタイルを少し勉強したので、それのまとめの記事になります。 1 フランス語のrhymeタイプ フランス語のrhymeタイプを調べて驚きましたが、いわゆる「完全韻」的な価値観を持っていないことが分かりました。  以下が、フランス語のrhymeタイプです。  いわゆる完全韻/不完全韻的なrhymeタイプの区分けではないのが分かります。特に英語のrhymeタイプと異なるのは、エコー(同音韻)を許容しているこ

          対照押韻論:フランス語の導入

          YOASOBI『勇者』英語版がrhymeを意識している件について!

           こんばんは。Sagishiです。  突発で記事を書いていますが、『勇者』の英語versionが出ましたね。  わたしは以前、YOASOBI の楽曲の英語版の歌詞をつよめに批判していたので、今回の英語版の歌詞もあまり期待せずに視聴したら、以前より明らかにrhymeを意識した歌詞になっていて、本当に驚きました。  例えば『アイドル』の英語歌詞はほとんどrhymeが意識されておらず、率直にいって、残念なクオリティです。  しかし『勇者』の英語版は、どうみても以前よりもrh

          YOASOBI『勇者』英語版がrhymeを意識している件について!

          フリーレンOP/YOASOBI『勇者』の歌詞の問題について

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、ざっくりフリーレンOPのYOASOBI『勇者』の歌詞について書いていこうと思います。  少しまえにもYOASOBIの記事を書いたので、「お前どれだけYOASOBI好きなんだよ…」と言われそうですが、まぁお付き合いください。  わたしは『葬送のフリーレン』を連載初期あたりからリアタイしていて、かなり読み込んでいる部類だと思うので、今回は原作と関連したことも比較的書けるかなと思います。 1 リリシズムの問題 大きなところから入

          フリーレンOP/YOASOBI『勇者』の歌詞の問題について

          WF-1000XM5 所感など

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、WF-1000XM5の所感などを書いていこうと思います。M4から切り替えたので、感想を雑多に書いていきます。 1.ハードウェア良い点 ①軽量化・小型化  かなり軽く、耳への負担が少ないです。想像していたよりこの恩恵は大きいと感じます。 ②イヤーピースのフィルター  ひとによっては不評のようですが、筐体内部のメンテナンスが億劫・大変だったので、改善されていると思います。 ③取り出しやすさ  以前よりケースから取り出しやすく

          WF-1000XM5 所感など

          ジャンガリアンハムスターの病気(心不全)について

           この記事は、2歳半以上の高齢のジャンガリアンハムスターにとっては避けられない病気のひとつである、心不全についての記事です。   1 心不全の病態 心不全は、いくつか種別がありますが、主に左心室が弱くなるために起きる病状です。  左心室は、肺から来た血液を体内への送る役割を持っています。左心室が弱くなると、心臓から体内へと送られる血液量が減少します。しかし、肺から心臓に送られてくる血液はそのままなので、時間が経つと肺が血液で溢れて、呼吸困難を引き起こします。  こうな

          ジャンガリアンハムスターの病気(心不全)について

          日本語の完全韻の定義(2023年暫定版)

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、日本語の完全韻(Perfect rhyme)について、その定義をまとめる記事を書きます。2023年の暫定版になります。 1 表記法の説明 日本語の完全韻(Perfect rhyme)の説明をするまえに、日本語音声の表記法について解説をします。  まず子音等の表記は、以下の独自の表記法に従います。既存のIPA(国際音声記号)に複数の課題があるため、独自の表記法を構築しました。  また、音節主音(音節核を持つ)母音には、以下の

          日本語の完全韻の定義(2023年暫定版)

          日本語の詩歌の脚韻はどのようなスタイルにすれば良いのか-翻訳を通して考える-

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、詩の邦訳の脚韻について書いていきます。  日本の詩歌の翻訳をみると、なかなか原詩通りにrhymeをしているものが少ないです。しかし、その希少なrhymeを取り入れている翻訳も、どことなくぎこちなさがあるようなものも多いです。  日本の詩歌文学においては、まだrhymeというものが浸透しておらず、技術的にどのように扱えば良いのか、どのようなrhymeをすれば良くなるのか、自然になるのかが、あまり周知されていないと思います。

          日本語の詩歌の脚韻はどのようなスタイルにすれば良いのか-翻訳を通して考える-

          ちゃお氏の反証記事への応答

           こんばんは。Sagishiです。  先日、YOASOBI『アイドル』について記事を書きましたが、下記のような反証記事があることを教えていただきました。  こういうカウンターが来るというのは、本当に素晴らしいと思います。このような批評はどんどんやるべきという立場なので、とても好意的に受け取っています。  ただ、色々と上記の文章には誤認があるようですので、追加的な記事としてわたしからも反証をさせていただきます。 1 rhyme schemeについて 「smile」「si

          ちゃお氏の反証記事への応答

          補足記事:YOASOBI『アイドル』の英語歌詞の比較検討

           こんばんは。Sagishiです。  先日書いたYOASOBI『アイドル』記事の補足です。 1 英語のストレス音節について 前回の記事で、「media/mysterious」以外に韻踏んでないとわたしは書きました。  もしかしたら「あれ? areaは韻踏んでないの?」と疑問に思ったひとがいるかもしれません。「area」は「media/mysterious」とは韻を踏めてません。これはたぶん知られていないと思いますが、英語のrhymeは、ストレス音節の母音が一致していない

          補足記事:YOASOBI『アイドル』の英語歌詞の比較検討

          YOASOBI『アイドル』の異様さの評価+常識外れの英語歌詞の問題について

           こんばんは。Sagishiです。  今回は、YOASOBI『アイドル』について幾つか論評をしていきたいと思います。  わたしは『アイドル』を幾つかの点で好意的な評価をしていますが、いっぽうで懸念や悪い評価をしている箇所もあります。この破天荒な『アイドル』という楽曲を通して、日本の音楽シーンそのものについても考えたいです。 1 スタイルの追究による異様化1-1 J-POPの進化の歴史『スタイルの追究』  『アイドル』を初聴したさいの印象ですが、「マジでカオスで変な曲」

          YOASOBI『アイドル』の異様さの評価+常識外れの英語歌詞の問題について