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絶望と希望の間

圧倒的な敵が迫っている。私は敵に怯えている。敵を倒し生き残るというわずかな希望に己を託す。どこかでその希望が叶わないことを感じながら。敵は仲間を次々と殺害してきた。それはまさに掃除のような、害虫駆除のような。作業と呼ぶのにふさわしい。相手は人ではない。上位の生物。宇宙人?吸血鬼?分からない。敵がいつ現れるか?いつ相手に見つかるか。そんなことに怯えている。

相手は漫画の吸血鬼のような鬼のような異形の存在だ。相手の1人を行動不能にしたが不死身だ。ぐちゃぐちゃになりながらも蠢いている。放っておけば復活するだろう。敵は他に何人もいる。我々は本拠地で集まり、生き残りどおしで話し合う。「策はあるか?」と聞くと、なぜかみんなで歌い出す。何をしているんだ?敵は今すぐにでも現れるかもしれない。一体感を演出している場合ではない。私はその場を後にする。

私は自陣の神社のような建造物の周りを隠れられ、相手を先に発見できそうなポイントを探す。私は忍者のように、ひと跳びで屋根に乗り移れるような身体能力を持っている。それでも敵には及ばないことを知っている。屋根の下の死角、軒下の狭いスペースには仲間がすでにいる。屋根裏に登る。雪が積もっている。猫が何匹も座っている。近付いても逃げない。雪を丸めて投げる。猫は喜んで遊んでくれている。見ると、精鋭の仲間とは別の、同族である人間の集団が屋根裏に登ってきていた。彼ら彼女らに雪を投げる。雪を投げ合う。こんなことをして遊んでいる場合ではないのだが。そんなことを訴えながら、いや声に出してはいない。雪に思いを乗せて投げている。

その場を離れ、また潜伏場所を探す。裏の空き地から青い目の二人組と目があう。私は屋根の上、彼らは地面から見上げる。目があったが、どうやら相手は敵ではないようだ。かといって同族でもない。人間ではあるが、同じ種族ではない。彼らは私から目を離し、去っていく。彼らには私はどう映ったのだろうか?

そんな時、スマホの着信が鳴る。迷惑電話だ。バイブの音で目が覚めた。ここは日本の関西にある自宅の寝室。あぁやっと戻ってきた。夢の続きを見たい気持ちもあるが、ほっとしている。似たような夢を形を変えて見ることがある。宇宙人に大虐殺されながら逃げまどう夢。学生生活のようなものを通り過ぎながら、何か遅れそうなものになんとか間に合うように急ぐ夢。目が覚めるのはいつも途中。間に合ったか間に合っていないか、殺されるのか?殺されないのか?結末までは辿り着かない。殺されたくない、間に合わせたい。絶望を感じながら結末のでないもどかしさを感じている。

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