じゆうになりたかったひばりちゃん

しらちゃんが原作の絵本「しあわせになりたかったぶたくん」のサイドストーリーを書いてみました。

動画を見てから読んでいただけるとより楽しめると思います。



【自由になりたかったひばりちゃん】
みんなから歌姫と呼ばれているひばりちゃん。
その綺麗な歌声はみんなをうっとりとさせ、誰からも褒められ、羨ましがられます。「すごーい!」「素敵!」「かっこいい!」「上手!」

今日もコンサート。大勢の拍手をうけて舞台が終わり、家に帰ったあと、ひばりちゃんは大きなため息をつきました。
「はぁ〜あ、今日も無事に終わった」どっとベットに倒れ込むひばりちゃん。
舞台の上とは大違い。
「明日もみんなの前で上手に歌わなきゃ」「でも、疲れたなぁ」
「みんなに心配させちゃいけないし」「明日のために、練習しなきゃ」
疲れた体を無理やり起こして、歌の練習をはじめるひばりちゃん。
声が枯れかけているのにも気づかない様子。
「これで、準備はバッチリ!さあ寝よう」
ひばりちゃんは最近よく眠れていないみたいです。

次の日、ばっちり決めた化粧と衣装で舞台に上がるひばりちゃん。
「みなさん、お集まりいただき、ありがとうございます!」
「今日も楽しんでいってくださいね!」
ひばりちゃんは歌い出しました。最初は綺麗な歌声を響かせていたひばりちゃん。しかし、途中から声がかすれてきてしまいます。
(あれ、おかしいな)
頑張って歌うひばりちゃんですが、とうとう声が出なくなってしまいました。
心配する、動物たち。「どうしたのかな?」「心配だわ」「体調が悪いのかしら?「無理しないで!」そんな声は聞こえない ひばりちゃんはパニック状態。(どうしよう!どうしよう!このままじゃみんなに嫌われてしまう!)そのまま、ひばりちゃんは走って舞台から降りてしまいました。

うちに帰ったひばりちゃん。
「どうしよう…明日も舞台があるのに…」
「きっと明日は歌えるはず!今日は練習もやめてぐっすり寝よう」とベッドにはいったひばりちゃんですが、その日もぐっすりとは眠れないみたいでした。

次の日
舞台にあがったひばりちゃん。周りを見渡すと、いつもキラキラした目でみていたみんながどこか心配そうな顔。とたんにひばりちゃんは不安になってしまいます。「私、みんなからどう見えているんだろう?」
そう思ったひばりちゃんは歌うのが怖くなってしまいます。足がガクガク震えて止まりません。おぼつかない足取りで舞台から逃げるように降りるひばりちゃん。「まだ体調がよくないのかな?」心配そうな、仲間たち。

その日家に帰ったひばりちゃん。とうとう泣き出してしまいました。「もう、みんなに呆れられてしまったわ」「歌えない私なんか、いないのとおんなじ」。実は、ひばりちゃんのお母さんも歌が上手だったのですが、その時、もっと上手なうぐいすちゃんがいたので歌手にはなれなかったのです。それでお母さんから「ひばりちゃんは、1番になるのよ。でないとお母さんみたいに惨めな想いをするわよ」。そう、厳しい練習を小さい頃から続けていたのです。涙が枕をぐっしょりと濡らすころ、涙の沁みから、なみだちゃんが現れました。「ごめんね、辛い想いをさせて」
「なみだちゃん!?なぜ、あなたが謝るの?」
「それはね。あなたが、上手に歌わないとみんなに求められない、そう思っていたから」「その想いが、そういう現実をつくるのよ」
「私が悪いっていうの?ヒックヒック」泣きながら怒るひばりちゃん。「悪いかどうかはあなたが決めることよ。それであなたは本当はどうしたいの?」しばらく考えてひばりちゃんは「もっと自由に楽しく歌いたい…誰の目も気にせず、自由に歌いたい!」「でも、怖いの…上手じゃないと、みんなに認められないんじゃないかって」「その想いどちらもあるよね。どちらも同じくらい大事にするのよ」そういってなみだちゃんはス〜っと消えていきました。「どちらも大事に…」よく分からないまま、眠りにつくひばりちゃん。少し眠りが深くなった様子です

次の日はなんの予定もないひばりちゃん。お空を自由に飛びながら「自由に楽しくと、怖さを両方大事にするってどういうことかしら?」「よくわからないけど、自由に飛び回るって気持ちいいわぁ〜!こんな気持ち久しぶり!」そう思いながら、自由気ままに飛び回るひばりちゃん。「そういえば、わたし、こんなふうに飛び回るの好きだったのよね〜。でもお母さん、お歌の練習が厳しいから、こっそり飛んでたっけ」。ふと、お空の上から下を見ると、ぶたくんが歌っているのが見えました。
「ぶひぶひ、ぶっひ〜!」ひばりちゃんは、大笑い。
「なに、あの歌?おっかし〜!!お母さんが聞いたら怒るだろうなぁ」「でも、ぶたくん、とっても楽しそう!いいなぁ」
その日から、ひばりちゃんはお空を飛びながら、ぶたくんが歌うところを探して、ずっと聞いていました。自分とは違う感性だけど、どんどん上手になるぶたくんを見て、「いつか一緒に歌いたいなぁ。私もあんなふうに自由に歌いたい!」

ぶたくんが木の上に登ったある日のこと。「あっ、あそこなら他の誰にも見られず、一緒に歌えるかも!」ひばりちゃんはぶたくんに近づきました。「ぶたくん、あたし、あなたのこと、ず〜っと見てたのよ」「一緒に歌ってくれない?」ぶたくんと、ひばりちゃんは木の上で自由に歌い出しました。まるで打ち合わせをしたかのように息もぴったり!歌い終わって「やっぱり、最高!いえ〜い!」思わずハイタッチをするひばりちゃん。

その夜、ベッドに座って、昼間のぶたくんとのセッションを思い出すひばりちゃん。「楽しかったなぁ。お空を飛んでいる時と同じくらい気持ちよかった」「それに、あんなに上手に歌えたのも初めて」ほろりと、1粒嬉し涙がこぼれました。「ありがとうね、ひばりちゃん」おどろくひばりちゃん
「なみだちゃん!どうしてなみだちゃんが、ありがとうっていうの?」「それはね。ひばりちゃんが、いろ〜んな感情を味わってくれるから」「怖い、苦しい、嬉しい、楽しい!どれも私にはありがとうなのよ」「そうなの?私は嬉しい、楽しいだけがいいわ」「でも、怖いや苦しいがなかったら、ぶたくんと歌った時のような嬉しい、楽しいもなかったんじゃない?」「そうかもしれないわね」「それに、お母さんのおかげで、ひばりちゃん、こんなにも歌が上手にもなったのよ」「ほんとだわ!苦しいし怖かったけど、歌が上手になるのは嬉しいし楽しかった!」「そう!どちらの想いも大切にするのよ」そういってなみだちゃんは消えていきました。「どちらの想いも大事に…」複雑な想いでしたが、ひばりちゃんは今日のぶたくんとの思い出を胸にぐっすり眠りました

次の日は、久しぶりの舞台。「今日はうまく歌えるかしら、心配だわ」「でも、昨日のぶたくんと歌った楽しさも想い出して!」
もう着飾った衣装や化粧はしていません。高揚した表情がチークのようです。少し震えながらも舞台にあがると、いつもは期待に応えないとと思っていた仲間の顔が「頑張れ!」といっているように見えました。その中に、ぶたくんの顔もみえました。ひばりちゃんはウインクをして歌い出しました。ひばりちゃんは、花のような表情で、いままでで1番きれいな歌声を響かせました。そして、それをはしっこで聞くお母さんもその楽しそうなひばりちゃんを見て、とっても嬉しそうだったとさ。

おしまい

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