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山師の仕事⑧

2004年に徳島の山奥、祖谷(いや)という村で山師の仕事をはじめた。この頃、金メダルラッシュのアテネ五輪のせいでみんな寝不足だと言われていたが、テレビのない僕には関係なかった。

前回まで伐採、架線の索張り(さくばり)と集材の作業について書いた。

今回は作業道について書こうと思う。作業道には2つの種類がある。

1つはトラックなど、車両が通行できる道のことで、四駆の軽トラを走らせようとすれば、2メートル以上の道幅は欲しい。

2メートルの作業道を作るには3トンのバックフォーが最適である。切り株を抜き取ったり、盛り土をしたり、ユンボ一台あれば大体の道は出来る。

尾根筋を使って上り下りの坂道を作れば、崩れることがほとんどない。傾斜が急な場合はヘアピンカーブをきっていく。

現場が皆伐の山なので、土場から尾根への上りと下りの2本だけ軽トラが通れる道を作った。

もう1つは人が歩いて通る道で、クワ1本で作る。クワで山側を少し掘っただけの道だが、何度も通ることによって日々、強固なものになっていく。

「拓は山を歩くの早くなったなー」

と言われるようになったのは、クワで道をつけたからだと思う。ケモノ道とそのクワで作った作業道では、歩く速度が違ってくる。

2023年最近の話だが、自伐型林業という講習会に行ってきた。こちらは2メートルから2.5メートルの作業道を高密度の林内路網に張りめぐらせるといった新しい施業方法で興味をそそられた。

あと、皆伐は山にとってよくないと謳われており、それは経験した者として納得がいくものである。

ここまで真面目な話で面白くないので、祭のことを少し書きたいと思う。

夏祭りといえば徳島は阿波踊りである。徳島市では100万人が踊り狂うと言われているが、西の地方では池田町で2日に渡って行われる。

商店街にパイプ椅子を並べて地元の観客がちらほらいるが、

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らなそんそん」

と踊った方が絶対に楽しい。踊りの連に所属し、この日のために1か月くらい練習して本番を迎えた。

「おりゃ、こっちが先に並んどんや」

と恒例のヤンキーたちの喧嘩を連長がたしなめて、商店街を踊り歩く。鉦(かね)と三味線と大太鼓が踊りのリズムをリードして、篠笛がメロディを奏でる。

「ドドーンドン」

大太鼓の腹の底に響きわたるダイナミックな音は、躍動感やその激しさでさらに踊りをもりたてる。

「踊る踊りは阿波踊り
  ア、ヤットサー、ア、ヤットヤット」

とお囃子が踊りを浮かせ、かけことばで大いに盛り上がった。


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