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【読書感想】いきの構造𓂃 𓈒𓏸𑁍

この本を読みながら私は、足元が崩れ去る錯覚を見た(また!?)。
私は『粋』を思い浮かべると、どうしても捻り鉢巻をした角刈りの大工の兄さん(腕はポパイ並)が出てきてしまう。カラッとした江戸っ子だな。しかし、こんなモノで『粋』を表現したとはいえない。

一度途中までこの本を読んで放置してたのだが、読み直す前に伴侶にこの話題を振ってみた。『粋』って知ってる? そりゃ一体なんなんだろうね、と。
その際、『粋』と感じた行為を少し教えてくれた。

■まず昔付き合ってた恋人の話。伴侶が雨の日傘を忘れ、途方に暮れていると恋人が近寄ってきた。そして伴侶の自転車に対しアゴをクイッと向け、視点を動かすとそこには傘が刺さった自転車が。

■もうひとつは仕事中。体調が優れない日のようで、しかし仕事なので上司に買い物を頼まれた。現地に着き手渡されていたメモを開くと、『薬でも買っとけ』と書いてあったとか。

以上の二点の共通部分は、『なんか回りくどい』と『他人の気分を上昇させる意図がある』と私は判断した。つまり、『相手を下げる』目的での『粋』は存在しないとみなした。

続けて私は想像上の『粋』を持ち出した。
たとえば幼い私が祖母の家に居て、出されたお饅頭を食べて気にいる。そして帰り際、祖母がそのお饅頭をお土産として渡してくる。
これに対しての両者の意見は『なんか違う……』となった。単に優しいだけ? 

次は『関係性』
赤の他人同士でも発生しうるが、父と子、恋仲、上司と部下みたいに、均衡が危うい状態。これがトリガーになってるのでは? という仮説。つまり前述の祖母と孫は、均衡が崩れにくく、『粋』が発生しづらいが、発生しないこともない――みたいな。

それにしても私もいつか言ってみたい
『ふっ、粋なコトしゃあがるぜ』……と。

以上の雑談の内容を踏まえ、私は読みに浸った――
以後、タイトルに従い『粋』を『いき』と表記する。
読み返すと、ぶつ切りみたいな文章が続いているが了承してほしい。


まず書かれていたのが、『いき』という言葉自体、他国の言語の似た言葉との一致をみせない。私も普段から言葉に関心を寄せているので、この点はよくわかる。営みや風土と密な関係性にあり、エスプリやウィットと『いき』は似たようなモノでしかない。もっと言えば、私が浮かべる『海』と、内陸の県の人の『海』も違うし、なんなら人それぞれ全員違うけども。


次に出てきたのが『いきの原則』
これは色々書いてあるが、私は『見返りと成就を求めないドライな駆け引き』と解釈した。

たとえば『美味しんぼ』の山岡親子だが、確執バリバリでつんけんしてるから見応えがあるワケで、孫を可愛がるジジイに成り下がった人の物語を見たいか? と言われたら答えはNO。海原雄山もたまには山岡を遠回しに助けるが、それに対し山岡は直接お礼の贈答品など返したりは決してしない。するとしたら『いい意味での意趣返し』だろう。少年漫画の主人公とライバルの関係ともいえるかな。

世の中『わかりやすいもの』の需要が高まり、山岡家のやり取りのようなものは減りつつあるかもしれない。当然これは『いき』から遠ざかる。


続いて『遊郭、金銭、諦め』等に触れている。
この辺りは当然現代にも通じており、『モテる男/女はとことんモテる』だ。誰でもピンとくるだろう。
要するに恋愛や異性に対する『執着』がなく、金に拘らずサラッとしている人物像の話。加えて『永遠の愛』などと胸焼けしそうなモノはお断り。そして艱難辛苦溢れる世の中に対する確かな『諦観』を持ち合わせている。これは若造が世の中を嘆くのとはワケが違うぜ。
てなわけで、脂ぎったガツガツした肉食系より、私もスマートな異性を選ぶね。


【渋味と甘味】

『いぶし銀』という文字を見ると私は、暗闇の中にあるどっしりとした、一見地味だが確かな輝きを持つ物体のイメージが浮かぶ。

派手娘江戸の下より京を見せ

まあこれは経験浅い娘がひけらかす下品な派手さの事を言ってる。多分着物の下に派手なインナーでも着てんだろうな。
私は昔から疑問なんだ。
『――勝負下着ってなんだよ❗️』ってな。
その要素いる? なんつーか、野暮というか、誰が編み出した概念なんだろうな。下着業界?

『甘ったれたヤツ』……これが『いき』でない事は理解できるだろう。世の中に対しロクに吟味もせず、不平不満を撒き散らすワガママなガキ。私も前に記事で書いた。思い上がったガキほど不愉快なモンはねぇって。それとなんとなく、潰れたカエルみたいな声を出すオバサンに感じる不愉快さの正体がわかったよ。
でもわかってるんだ。『よく通る声』が必要とされる環境に居ればそうなる事ぐらい。
少し逸れるが、激流沿いに住むカエルが、川の音がうるさすぎて鳴き声でのメスへのアピールを諦め、脚の上げ具合で他のオスと競うようになった例をTVで見たことがある。ホントに環境次第だよな。

さて、世の男性はなぜ『未亡人』に惹かれるのか。答えはもう……でてるよな?

こうして眺めりゃ、最近の世の中『野暮』に溢れてると思わないか? 
各々主張をがなり立て、必死に人に噛みつき炎上騒ぎ。でも、余裕のない社会がそうさせてしまったのかもな。さ、一緒にニヒリストにでもなろうや。


さて、この本は『目に見える形でのいき』――と続いていくが、全てに感想を書くのは野暮(おい)なので、興味を持たれた方は……買って読んでね!
以下、おまけ↓


『いき』の実践

まず、預金含めた全財産を全てドブに捨てるつもりで……いや、実際に捨てます。
次に、持ち合わせた『諦観』を知らしめる為、目に付く異性を殴りつけ、肌(物理)で感じさせます。
そしたらホームセンターに赴き、ロープと脚立を購入。世への執着を捨て去る為に急ぎ足で川沿いの柳にでも向かいます。

あくる日、通りすがりの男たちが言いました。
「おっ、アレかい。モテなさすぎて癇癪おこして自殺したってぇ男の幽霊は」
「哀れだねぇ。さ、夜鳴き蕎麦でも啜りにいこうや」

幽霊『うらめしや……(川を挟んだ反対側=裏に、飯屋=夜鳴き蕎麦の屋台があるよっていうギャグ。面白いよな! 最後まで読んでくれたみんな! しっかりちゃっかり『スキ』を押していってね! その比率のホドはアクセス状況で毎分チェックするからヨロシクぅ❗️)』

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