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Zoomを使った4会場開催のハイブリッドイベントの配信機器構成について

先日社内で行ったカンファレンスのようなハイブリッドイベントで組んだ機器構成を紹介します。

自身のタスク

今回のイベントでは以下のようなタスクを担当しています。ビジュアル面のタスクを一手に引き受けたという感じです。

  • 動画制作(オープニング、幕間、エンディング)

  • ポスターデザイン

  • Webサイト制作

  • 一部の講演スライドデザイン

  • 配信機器設計・構築

  • OBSのシーンコレクションや各種プラグインなどの設定

  • Zoomウェビナーの設定

  • 配信オペレータへのレクチャー

イベント概要

まず今回のイベントの会場の様子はこちらです。部屋の前方に講演者が立つ標準的なセミナー形式です。

イベント会場の様子

オンライン配信用の機材は常設ではありません。会場に備え付けの音響機材やプロジェクターを除き、イベント前にすべて持ち込んで配線しています。

今回のイベントの配信構成において重要な点がありまして、それは会場が4つあるということです。会場とZoomウェビナーのペアが4つ必要になります。それだけではなく機材、ソフトウェアの準備も4倍になります。
技術的な人員が1人の状態で4会場を構築・運用するのは負荷が結構高く、いろいろな確認作業、特に音響面の確認が疎かになるので個人的にはあまりお勧めできません。今回、私からイベントの代案を意見具申はしつつも、企画側からどうしても4会場でということで最後までやらせていただきました。

演台付近の構成

講演者の方が立つ演台付近はこのようになっています。


演台付近の様子

ノートPCの映像・音声はHDMIキャプチャで取り込んでいます。HDMIキャプチャデバイスは以前購入したElgato HD60sを使いました。
ただ、HD60sはHDMIケーブルを抜き差しした時の再認識が弱く、映像が映らないトラブルがたびたび起きています。今回のイベントではノートPCを抜き差しする機会が多いため、なるべく使いたくはなかったデバイスです。ただ、購入済みのデバイスで4会場分の数量を確保できているものがHD60sだったため、今回はこちらを使用しました。
もし1会場のイベントなら、より高機能で動作が安定しているRolandのVR-4HDを使いました。
Elgato HD60sについて一応フォローしておきますが、そもそも映像キャプチャデバイスはケーブルの抜き差しを頻繁に行うことはなく、基本的には差しっぱなしで使います。そのため、映像が映らないなどのトラブルは準備中を除けばほとんど起きません。普通の使い方をしていればElgato HD60sは素晴らしい製品です。

演台上のノートPCには資料やデモプログラムが入っていますが、講演者自身がノートPCを持ち込まれる場合があります。持ち込まれたPCをつなぐ際、映像が映らないなどのトラブルが起きやすいため、なるべくイベント開始前に確認するようにはしています。ただ、イベントの直前で確認しなければならないケースも起きており、MacbookがElgato HD60s経由で上手く映らないトラブルが起きたときは、別のHDMIキャプチャデバイスに変える対処も行いました。

講演者を撮影するカメラは、HDMI出力のものではなく、なるべくUSBカメラ(c920)を使うようにしています。これはHDMIキャプチャの接続トラブルを嫌ったためです。
ただ、一部のカメラについては配信機材とカメラの距離が約10mほど離れた位置に設置する必要がありました。途中まではUSBカメラ+USBリピーターケーブル(KB-USB-R212N)を使っていて、机での実験中は(私の予想に反して)上手くいっていたのですが、会場に設置して動かしてみると案の定不安定になったため、HDMI出力できるカメラに切り替えました。
USBエクステンダーやHDMIエクステンダー、NDI等を使えばより離れた距離にも延長することはできますが、それらを使うほど広い会場ではないのでなるべくシンプルな構成にしています。

マイクは、会場に常設されているマイクと会場に持ち込んだオーディオテクニカのワイヤレスマイク(ATW-1322)の両方を使用しています。理由や詳細は省きますが、会場やイベントの区間ごとにマイクを使い分けています。
マイクに関してはピンマイク方式のものやUSBヘッドセットを使う選択肢もありましたが、講演者が複数名で来られる可能性もあるという話が上がっていたため、どんな講演スタイルでも対応しやすいワイヤレスかつハンドマイク型にしました。イベントのタイムスケジュールがタイトであり、ピンマイクやヘッドセットのような装着型のマイクですと、講演者の入れ替えのたびに準備時間がかかってしまうのが理由です。
なお、ワイヤレスマイクシステム ATW-1322 にはUSB出力インタフェースがありません。PCに直接接続するためにエレコムのXLR-USBケーブルDH-XLRU50BK)を使用しています。オーディオインタフェースを挟む必要が無くなるため、結構便利なケーブルです。

とにかく複数会場あると会場数の分だけ障害発生率が上がりますので、とにかく機材構成や配線はシンプルにしないと不安でした。

機材構成

機材構成はこちらです。会場によって多少の差はありますが、これが4会場分あります。

機材構成

オンサイトとオンラインの映像音響の多くは配信PCで制御します。制御用のソフトウェアとしてはOBSを使っています。

上記の構成のように1台の配信PCに映像・音声を集約するスタイルの場合、PCに求められる必要なスペックとしては以下の点が挙げられます。

  • USB機器を多く繋げられるようにUSBポートは多めに

    • USBハブでもいいですがトラブル要因に

    • HDMIキャプチャはUSB3.0が基本なので数量は注意

  • モニタはなるべく多く接続できるように

    • OBSやZoomの操作を行うための画面は広いに越したことはないので

    • HDMI or Displayポートが計4ポートあるのがおすすめ

  • グラフィックボードは GeForce RTX 20 シリーズ以降を

USBポートの関係上、余裕のある構成にするなら大抵はデスクトップPCになると思います。AVミキサーやスイッチャーを併用できるのであればノートPCでも十分です。

機材のまとめということで、主な機材一覧を貼っておきます。(ここは後日追記するかもしれません。)

配信オペレーターが初心者でも大丈夫なように

ハイブリッドイベントを行う際は、オンサイトとオンラインの両方の映像・音響を確認する人が必要になります。私の体は一つなので、各会場にイベントの進行担当配信オペレーター担当をお願いしています。
配信オペレーターの方は映像音響のほとんどの制御を担いますが未経験者の方ばかりです。レクチャーにかけられる時間は1時間から半日程度と短いため、初心者でもシンプルな制御のみで進められるようにする必要がありました。
制御用のソフトウェアとしてはOBSを使用しています。オペレーターの方には主に以下の操作をお願いしました。

  • 台本に沿ってOBSのシーンを順番に切り替えていく

  • 講演の開始に合わせてOBSのカウントダウンタイマーを開始する

  • OBSでオンサイトおよびオンライン配信の音量調整

  • 映像音響のトラブルがでたら技術担当呼び出し

OBS周りの配線

OBS周りはこのように配線しています。

OBS周りの配線

OBSに対して、イベントの流れに合わせたシーンをあらかじめ作成しています。
各シーンには、どのソースを、どの位置に、どのように表示するかを設定しています。例えば司会を移すシーンではカメラ1を全面に表示、講演のシーンではPC1の映像を全面に表示し、カメラ1を背景除去して右下にオーバレイ表示する、などといった具合です。
配信オペレーターの負荷を下げるために、あらかじめ台本を厳密に決めておき、その順に沿って上から下へ順番にシーンを変えていく段取りにしています。基本的にシーンを行ったり来たりすることはありません。このような構成にしていることもありシーン数が膨らんでいます。今回のシーン数は1会場あたり40程度になっています。準備は面倒ですが、オペレーターへの負担をなるべく減らすための配慮になっています。

音声の系統については会場のスピーカー側とZoom側で別々に制御するためにOBSのAudio Monitorプラグインを使用しています。またOBSからZoomマイクへ音声を流すためにVB-Audioを使用しています。オンサイトの音量とオンラインの音量を一人のオペレータがバランスを見ないといけないため、あちらこちらに視点が移動しなくてもいいようにOBSに集約しています。

なおOBSのプラグインとして他にシーンごとにノートを残すためのプラグインやカウントダウンタイマーのスクリプトを使用しています。
ノートには各シーンの注意事項やシーンの切り替えタイミングを記載していましたが、オペレーターの方が使う機会は少なかったかなぁと思います。

Stream DeckのようなデバイスがあればOBSを楽にコントロールできるのですが、これまた4会場による機材購入コストと設定コストを鑑みて今回は見送りました。

NodeCGやウィジェット等を駆使してよりリッチな画面もやってみたかったのですが、実装と検証の時間が取れず断念しています。ここはとても残念です。

モニタのレイアウト

配信オペレータのミスをなるべく減らすために、モニタを複数台使用して作業領域を広げています。モニタ内のレイアウトはこのようになっています。

モニタのレイアウト

左側のモニタはプロジェクタとミラーリングしています。これは手元のモニタを見ればプロジェクタに何が映っているかすぐに分かるようにするためです。基本的にはOBSのプレビューウィンドウを配置します。OBSプレビューウィンドウには講演者PCやカメラの映像、タイマーなどを合成した映像が表示されます。
中央のモニタにはOBSのメインウィンドウを移します。基本的にはメインウィンドウ内のオーディオパネルを見つつ、周辺視野で状況を把握するイメージです。
右側のモニタにはZoomやOBSの小物ウィンドウを置いています。講演者が会場ではなくリモートにいる場合は、まずZoomの画面共有を始めてもらい、会場ではZoomのメインウィンドウを左側のモニタへ持っていくことで対処しています。映像スイッチャーを使えばウィンドウをドラッグアンドドロップする様子を見せなくても済むのですが、なるべく機材を減らしたかったため、ちょっとアナログな対応をしています。

まとめ

一応イベントは完走したものの、HDMIキャプチャが上手くいかないケースが起きたり、OBSの音声設定を直前に触って音質問題を起こすなどトラブルはゼロではありませんでした。確認のための人員と時間がもう少しあれば良かったなぁとは思いますが、人手不足の悩みはどこでもある問題かと思いますので、なんとか知恵を絞って効率アップしないといけないなぁと思った次第です。

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