「お布施できない」のが問題なのだ

例えば600円のコミックスを年一冊出てるマンガ家さんがいて、あるファンがそれを毎年楽しみに一冊買っているとします。

そのファンが作家を直接支援(お布施)できる金額は、本体価格552円、印税を10%としても年あたりたった55円です。

これが500円の同人誌だとしたら、もう少しお布施率は上がります。
一冊あたりの印刷代100円~200円を引いても、300~400円をお布施できる。
年二回発行していると年600円~800円、クリエイターの活動を支援できることになります。

同人ショップで買うと店側の委託手数料30%が加算されますが、売値も700円ほどに上げられるのが通例なので、実質あまり変わりません。なので同人ショップで同人誌を買うのはアリですが、中古はダメですね。一円も支援になりません。

この考え方は、あくまで好きなクリエイターを支援するという世界観から来るものです。

僕たちが手がけるCHIKA☆CHIKA IDOLの支援マガジンや、Enty、Patreon等のクリエイター支援サイトでは、サイト側の手数料を引いても、75~85%は直接お布施できます。

この支援モデル世界観は、これまでの好きなコンテンツをお金と引き替えに手に入れるという、交換モデル世界観と異なります。

これまで支配的だった交換モデルの世界では、ファンが支払った金額が直接クリエイターにまわることは稀で(同人誌はその稀な例外でした)、中抜きメディア企業にお金が吸いとられ、なかなかクリエイター生計を良くすることはできませんでした。それは歴史が証明しています。

一握りの大ヒット作家をのぞいては。

出版社は、クリエイターが自分で同人誌を出すより10倍以上売ってくれる場合は、組むメリットがある、ということになります。
しかしネットでの活動や課金収入がメインになると、その存在意義もまた問われていくことになります。
最近は、作家本人がSNSで宣伝してくれることを、メディア企業が頼む例が多いです。それはメディア企業が宣伝手段をあまり持っていないからです。

出版社なら、きっとたくさん本を売ってくれるという願望。交換モデル世界観とは、たくさん売れれば、全ての問題は解決するという世界観でもあります。
売れてくれれば…と一縷の望みを託して、メディア企業もクリエイターも毎月大量の新作をリリースし続けていたのです。

でも、今はもうたくさんは売れない時代です。少子化・人口減だからね。
だから支援モデルの比重が上がっていくと個人的には予測しています。
(支援モデルがなぜ必要かとその具体例については、この記事に詳しく書きました。)

アイドルの世界ではすでに実現しているし(チェキ券や握手券などで)、声優などにも適用できると考えている。熱烈なファンには、直接支援する手段を提供するのが、新しい業界人の責務なのではないでしょうか。

偉い人は、お布施できない詐欺を解決するべく動くべきだと思う。日本のコンテンツを守りたいと本当に思っているなら、支援するべきなのは「人」ではないかと思うのです。

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